七月流火
九月授衣
一之日觱発
二之日栗烈
無衣無褐
何以卒歳
三之日于耜
四之日挙趾
同我婦子
饁彼南畝
田畯至喜 |
七月は流るる火(なかご星。アンタレス Antares)
九月は衣を授く
一の日は觱発(ひつはつ。風が強い)たり
二の日は栗烈(りつれつ。寒さが厳しい)たり
衣無く 褐(かつ。毛織のどてら)無くば
何を以て歳を卒(お)へん
三の日は耜(し。鍬)を于(をさ)め
四の日は趾(し。田を耕す道具)を挙(もち)ふ
我が婦子と同(とも)に
彼の南畝に饁(えふ。食事)すれば
田畯(でんしゅん。田の神)至りて喜(き)す |
七月流火
九月授衣
春日載陽
有鳴倉庚
女執懿筐
遵彼微行
爰求柔桑
春日遅遅
采蘩祁祁
女心傷悲
殆及公子同帰 |
七月は流るる火
九月は衣を授く
春日 載(すなは)ち陽(あたたか)く
有(ここ)に鳴く 倉庚(さうかう。コウライウグイス)
女は懿(ふか)き筐(かご)を執り
彼の微行(小道)に遵(そ)ひて
爰(ここ)に柔桑(クワの若葉)を求む
春日 遅遅たり
蘩(はん。ハイイロヨモギ)を采(と)ること 祁祁(きき)たり
女心 傷悲す
殆(ねが)はくは公子と同(とも)に帰(ゆ)かん |
七月流火
八月萑葦
蚕月條桑
取彼斧■{爿偏に斤}
以伐遠揚
猗彼女桑
七月鳴鵙
八月載績
載玄載黄
我朱孔陽
為公子裳 |
七月は流るる火
八月は葦を萑(か)る
蚕月は條たる桑
彼の斧■{爿偏に斤}(ふしゃう。斧)を取りて
以て遠揚を伐れば
猗(い)たる彼の女桑
七月は鳴く鵙(げき。モズ)
八月は載ち績(せき)す
載ち玄(黒)にし 載ち黄にし
我が朱 孔(はなは)だ陽(あき)らかなり
公子の裳を為らん |
四月秀葽
五月鳴蜩
八月其穫
十月隕■{草冠に擇}
一之日于貉
取彼狐狸
為公子裘
二之日其同
載纘武功
言私其豵
献豣于公 |
四月は秀(しげ)れる葽(えう。イトヒメハギ)
五月は鳴く蜩(てう、ひぐらし。セミ)
八月は其れ穫(か)り
十月は隕■{草冠に擇}(いんたく)す
一の日は于(ここ)に貉(かく)し
彼の狐狸(こり。キツネとタヌキ)を取りて
公子の裘を為らん
二の日は其(ここ)に同(あつ)まりて
載ち武功を纘(つ)ぎ
言(ここ)に其の豵(そう。1歳のイノシシ)を私とし
豣(けん。3歳のイノシシ)を公に献ぜん |
五月斯螽動股
六月莎鶏振羽
七月在野
八月在宇
九月在戸
十月蟋蟀入我牀下
穹窒熏鼠
塞向墐戸
嗟我婦子
曰為改歳
入此室処 |
五月は斯(ここ)に螽(しう。キリギリス)股を動かし
六月は莎鶏(さけい。ハタオリ) 羽を振ふ
七月は野に在り
八月は宇に在り
九月は戸に在り
十月は蟋蟀(しつしゅつ。キリギリスまたはコオロギ) 我が牀下に入る
窒を穹(むな)しくして鼠を熏じ
向(まど)を塞(おほ)ひ 戸を墐(つちぬ)る
嗟(ああ) 我が婦子よ
曰(ここ)に改歳を為さんとし
此の室に入りて処(を)れ |
六月食鬱及薁
七月亨葵及菽
八月剥棗
十月穫稲
為此春酒
以介繭眉
七月食瓜
八月断壺
九月叔苴
采荼薪樗
食我農夫 |
六月は鬱(うつ。ニワウメ)と薁(*おう。エビヅル)とを食らひ
七月は葵(き。フユアオイ)と菽(しゅく。マメ)とを亨(に)る
八月は棗(さう。ナツメ)を剥(う)ち
十月は稲を穫る
此の春酒を為り
以て眉壽を介(いの)る
七月は瓜を食らひ
八月は壺(こ。ヒサゴ)を断(き)る
九月は苴(しょ。アサの実)を叔(ひろ)ひ
荼(と。ノゲシ)を采(と)り樗(ちょ。オウチあるいはニワウルシ)を薪にし
我が農夫を食(やしな)ふ |
九月築場圃
十月納禾稼
黍稷重■{禾偏に翏}
禾麻菽麦
嗟我農夫
我稼既同
上入執宮功
昼爾于茅
宵爾索綯
亟其乗屋
其始播百穀 |
九月は場を圃に築き
十月は禾稼(かか。穀物)を納る
黍稷(しょしょく。キビ類) 重■{禾偏に翏}(ちょうりく。おくてとわせ)
禾麻(くわま。イネとアサ) 菽麦(しゅくばく。マメとムギ)
嗟(ああ) 我が農夫よ
我が稼(穀物) 既に同(あつ)まれり
上入して宮功を執(な)し
昼は爾(すなは)ち茅(ぼう。チガヤ)を于(と)り
宵は爾ち綯(たう。縄)を索(な)ふ
亟(すみ)やかに其れ屋を乗(おほ)ひ
其(まさ)に始めて百穀を播(ま)かんとす |
二之日鑿氷沖沖
三之日納于凌陰
四之日其蚤
献羔祭韭
九月粛霜
十月滌場
朋酒斯饗
曰殺羔羊
躋彼公堂
稱彼兕觥
万寿無疆 |
二の日は氷を鑿つこと沖沖たり
三の日は凌陰に入る
四の日は其に蚤(と)るに
羔(かう。子羊)を献じて 韭(きう。ニラ)を祭る
九月は粛(さむ)き霜
十月は場を滌(きよ)む
朋酒 斯(ここ)に饗し
曰(ここ)に羔羊を殺す
彼の公堂に躋(のぼ)りて
彼の兕觥(じくわう。杯)を称(あ)げ
万寿(ばんじゅ) 疆(かぎり)無けん |