にわうめ (庭梅)

 学名  Prunus japonica (Microcerasus japonica, Cerasus japonica)
 和名  ニワウメ
 科名(和)  バラ科
  別名(和)  コウメ、リンショウバイ(林生梅)
 漢名  郁李・薁李(イクリ,yùlĭ)
 科名(漢)  薔薇(ショウビ,qiángwēi)科
  別名(漢)  棣(テイ,dì)、棠棣・唐棣(トウテイ,tángdì)、赤棣、棠李、鬱(ウツ,yù)・鬱李、薁(イク,yù)、雀梅・黃梅、金椀
 英名  Japanese bush cherry

    2023/03/16 小石川植物園 

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2010/04/09 薬用植物園

 八重ざきのものをニワザクラ var. multiplex と呼ぶが、別種にニワザクラ(ヒトエノニワザクラの八重ざき品) P. glandulosa があるので注意。
 ユスラウメ P. tomemtosa (山櫻桃)とは別種。
 スモモ属 Prunus(李 lĭ 屬)については、スモモ属を見よ。
   「和名ハ庭梅ノ意、能ク庭ニ栽ヱ花梅ノ如ケレば云フ小梅ハ小樹ナルヲ以テ呼ブ、しなのうめノ一名こうめト同名ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)に「郁■、・・・、和名宇倍」と(なお■の字形は不可解、或は栯のつもりか)。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32に、郁李は「ニハウメ コウメ播州、消梅と同名」と。
 漢名郁李について、「郁、『山海経』は栯に作る。馥郁なり。花實 倶に香る。故に以て之を名づく」と(李時珍『本草綱目』)。
 遼寧・吉林・黑龍江・河北・山東・浙江原産、各地で栽培する。
 日本には江戸時代に渡来。
      果実は赤く熟し、食える。
 中国では、ニワウメ及び P. humilis(C.humilis;歐李)の種子(果実の核)を 郁李仁(いくりにん)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.251-258、歐李は、遼寧・吉林・黑龍江・河北・内蒙古・陝西・山東・河南・江蘇・四川に自生

 また、地方により、同属の次のような植物の種子を、郁李仁として薬用にする。
   P. japonica var. nakaii (長梗郁李)
   ユスラウメ P. tomemtosa (山櫻桃)
   オヒョウモモの変種 P. triloba var. truncata (截形楡葉梅)
   P. consociifolia (鄂李)
   P. dictyoneura (毛葉歐李)
   P. pedunculata (長柄扁桃)
   P. majestica (滇櫻桃)
 『詩経』国風・豳風「七月」に「六月は鬱と薁とを食らふ」と。
 この鬱(ウツ,yù)はニワウメ。薁(イク,yù)は、(一説に オウ,ào と読んで)エビヅルといい、この詩にうたわれる薁はこの意味だという。しかし薁(イク,yù)には、別にニワウメ或はユスラウメの意もある。
 『爾雅』釈木に、「時、英梅。〔雀梅なり。〕〈疏。時、英梅。釈いて曰く、時、一名英梅なりと。郭云く、雀梅と。梅に似て小さき者なり。〉」と。繆啓愉は、雀梅はニワウメだという(『斉民要術校釈』)
 『万葉集』に、

   夏まけて開きたるはねず久方の雨打ちふらば移ろひなむか
      
(8/1485,大伴家持「唐棣花歌一首」)

とあり、唐棣の花を波祢受
(はねず)と訓んでいる。

 はねずは、ニワウメであるという
(ほかに、モクレン・ニワザクラとする説などもある)
 ただし、漢名を唐棣(トウテイ,tangdi)というものは、ザイフリボクの同属異種、Amelanchier sinica である。

 『万葉集』には、ほかに「翼酢
(はねず)色」を詠って、

   山振(やまぶき)のにほへる妹がはねず色の赤裳のすがた夢に見えつつ
      
(11/2786,読人知らず)
   念はじといひてし物をはねず色の変
(うつろ)ひ安き吾が意(こころ)かも
      
(4/657,坂上郎女)
    唐棣花(はねず)色の移ろひ安き情(こころ)なれば年をそき経(ふ)ること(言)は絶えずて
      
(12/3074,読人知らず)
 

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