せんだん (栴檀) 

学名  Melia azedarach
日本名  センダン
科名(日本名)  センダン科 
  日本語別名  オウチ(アフチ,楝)、アラノキ、アミノギ、クモミソウ(雲見草)
漢名  楝(レン,liàn)
科名(漢名)  楝(レン,liàn)科
  漢語別名  苦楝(クレン,kulian)、楝棗子(レンソウシ,lianzaozi)、森樹、樗(チョ,chū)、紫花樹、金鈴子
英名  Chinaberry, Bead's tree, Persian lilac,China tree,Pride-of-India
2021/04/09 小平市玉川上水緑地 

2007/05/20 神代植物公園

2007/05/18 跡見学園女子大学新座キャンパス
2006/10/16 跡見学園女子大学新座キャンパス
2021/12/02 小平市玉川上水緑地 
2005/12/15 神代植物公園

2006/01/15 薬用植物園

 「センダンには多くの変種が命名されているが、広い分布にともなって形態の変異がいちじるしくて区別できない。多形的な1種である」(『改訂新版 日本の野生植物』)。  
 センダン科 Meliaceae(楝 liàn 科)には、世界に約50-51属 約650-700種がある。

  ジュラン属 Aglaia(米仔蘭屬)
インド・東南アジア・豪州・太平洋に約120種 
    グミトベラ A. elaeagnoidea(A.formosana, A.roxburgiana;山欏・臺灣米仔蘭・紅柴)
         
臺灣・フィリピン・兩廣・東南アジア産 
    コウトウグミトベラ A. lawii
    モラン
(ジュラン) A. odorata(米仔蘭・樹蘭・碎米蘭・山胡椒) 両広・東南亜産 
    オオバジュラン A. rimosa(A.elliptifolia;大葉樹蘭・橢圓葉米仔蘭)
         
臺灣・フィリピン・スラウェシ・ニューギニア産 
  Aphanamixis(山楝屬)
熱帯・亜熱帯アジアに約3種 
    コウトウムクロジセンダン A. polystachya(山楝・鐵羅・紅羅・沙欏)
         
臺灣・兩廣・雲南・東南アジア・インド産 
  インドセンダン属 Azadirachta(印楝屬)
アッサム・東南アジア・ニューギニアに2種 
    インドセンダン A. indica(印楝)
アッサム・インドシナ産 
  セドロ属 Cedrela(洋椿屬)
 中南米に約19種 
  コウトウオオジュラン属 Chisocheton(溪桫屬)
    C. paniculatus(溪桫)
    アカミオオジュラン C. patens(C.kanehirae)
  Chukrasia(麻楝屬)
 1種 
    C. tabularis(麻楝)
兩廣・雲南・チベット・ヒマラヤ・南アジア・東南アジア産
  Cipadessa(漿果楝屬)
 1種 
    C. baccifera(C.cinerascens;漿果楝)
雲南・東南アジア・南アジア産 
  オオジュラン属 Dysoxylum(樫木屬)
漢土・東南&南アジア・濠洲・ニュージーランドに約75-95種 
    コウトウセンダン D. arborescens
    シマセンダン D. cumingianum(蘭嶼樫木)
 臺灣・フィリピン・スラウェシ産 
    D. excelsum(樫木)
廣西・雲南・東南アジア産 
    D. gotadhora(D.binectariferum;紅果樫木・紅羅・山羅) 雲南・東南&南アジア産 
    オオバセンダン D. hongkongense(D.kusukusense;香港樫木・臺灣樫木)
         
臺灣・兩廣・雲南産 
  Heynea(鷓鴣花屬)
  アフリカマホガニー属 Khaya(非洲楝屬) 熱帯アフリカに5種 
  ランサ属 Lansium(龍宮果屬)
タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピンに3種 
    ランサ
(ランサット) L. domesticum(榔色果・蘭撒果) マレーシア原産
  センダン属 Melia(楝屬)
  Munronia(地黃連屬)
 熱帯・亜熱帯アジアに約8種 
    M. pinnata(M.sinica, M.henryi, M.delavayi;
         地黃連・花葉矮沱沱・土黃連)
廣東・四川・雲南産 
    M. unifoliolata(M.hunanensis, M.simplicifolia;單葉地黃連・崖州地黃連)
  Reinwardtiodendron(雷楝屬)
 熱帯アジアに6-7種 
    R. humile(R.dubium;雷楝)
海南島・フィリピン・東南アジア産 
  サントール属 Sandoricum(仙都果屬)
東南アジアに約5種 
    サントール S. koetjape(S.indicum;仙都果・山陀兒 shāntuóér)
         
マレーシア・インドネシア・ニューギニア産 
  マホガニー属 Swietenia(桃花心木屬)
 中南米に3-8種 
    オオバマホガニー S. macrophylla(大葉桃花心木)
    マホガニー S. mahogani(桃花心木)
 フロリダ半島・西インド諸島に分布
  チャンチン属 Toona(香椿屬)
  Trichilia(帚木屬)
  Turraea(杜楝屬) 熱帯アジア・豪州・アフリカに約67-90種
    T. pubescens(杜楝)
廣東・インドシナ・フィリピン・ジャワ・ニューギニア・濠洲東部産
  Walsura(割舌樹屬)
熱帯アジアに約16種 
    W. pinnata(W.cochinchienensis;越南割舌樹)
兩廣・雲南・東南アジア産 
    W. robusta(割舌樹)
廣東・雲南・アッサム・東南アジア産 
  ホウガンヒルギ属 Xylocarpus(木果楝屬) 
    ホウガンヒルギ X. granatum(木果楝)
         
海南島・フィリピン・東南&南アジア・東アフリカ・マダガスカル産 
   
 センダン属 Melia(楝 liàn 屬)には、熱帯アフリカ・東アジア・豪州に3種がある。

  センダン M. azedarach(M.toosendan;楝樹・苦楝・楝棗子・楝果子・森樹)
         『中薬志Ⅱ』pp.246-250、『雲南の植物Ⅱ』173・『中国本草図録』Ⅵ/2700 
  M. dubia(南嶺楝樹)
東南アジア・インド・スリランカ産 
  M. volkensii アフリカ東部産 
   
 和名は古くはオウチ(あふち)、『万葉集』にすでに見え、字は漢名の楝(レン,liàn)をあてていた。
 センダン
(栴檀)の呼称は江戸時代に始まる。センダンの木には材に少し香りがあるので、和の栴檀と呼んだことから、やがてこの木の名になったものという。
 なお 一説に、センダンの名は、その実のようすから 千珠
(せんだま)の転訛、ともいう。
 本来、漢語の栴檀(センタン,zhāntán)は、サンスクリット語チャンダナ candana の音写、「栴檀那(センタンナ,zhāntánnà)」の省略形。インドネシア原産のビャクダン科の常緑高木ビャクダン Santalum album(白檀)を指す。ビャクダンは、中国名は檀香(タンコウ,tánxiāng)、英名は sandalwood、たいへん有名な香木である。
 漢名を樗(チョ,chū)というものは、ニワウルシ、またはセンダン。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)楝実に、「和名阿布知乃美」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)に、楝は「本草云、阿布智」と、樗は「和名本草云、沼天」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)31に、楝は「アフチ古名 クモミグサ古歌 センダンノキ」と。
 種小名は、アラビア名から。
 一説にヒマラヤ山麓原産、一説に原産地不明。
 広くアジアの各地で栽培され、日本では関東以西、漢土では黄河以南の暖地に植栽される。
 しばしば野生化しており、日本では四国・九州・小笠原・琉球で野生化。
 材は建築などに用い、花からは芳香油をとり、種子から採る油はペンキ・潤滑油などに用いる。
 種子を苦楝子(金鈴子)・樹皮を苦楝皮と呼び、薬用にする。
『中薬志』Ⅱpp.246-250・Ⅲpp.438-441
 『詩経』国風・豳風「七月」に、「九月は苴(しょ。アサの実)を叔(ひろ)ひ、荼(と。ニガナ)を采(と)り樗(ちょ)を薪にし、我が農夫を食(やしな)ふ」と。
 日本では、毀誉褒貶のある木。プラス面では、センダンは邪気を払う霊能を持つ木と考えられていて、平安時代から 端午の節句(旧暦5月5日)に軒に葺いたり身に帯びたりした。マイナス面では、中世以来不浄の木とされ、京都の三条河原のセンダンの木に木曾義仲ら謀反人の首をかけて晒したといわれ、江戸では鈴が森の処刑場の周りに植えられたという。
 (なお、中国ではマイナスイメージは無く、春の終り、夏の到来を告げる木。)
 諺に「栴檀は双葉より芳し」(西行「撰集抄」)という栴檀は、香木ビャクダン(白檀)であり、本種ではない。
 『万葉集』に、

   いも
(妹)がみ(見)しあふち(楝)のはな(花)はち(散)りぬべし
      わがな
(泣)くなみた(涙)いまだひ(干)なくに (5/798,山上憶良)
   吾妹子にあふち
(楝)の花は落(ち)り過ぎず今咲ける如ありこせぬかも (10/1973,読人知らず)
   珠にぬ
(貫)くあふちを宅にう(植)ゑたらば
     やま
(山)霍公鳥(ほととぎす)(離)れずこ(来)むかも (17/3910,大伴書持)
   ほととぎすあふちの枝にゆきて居ば花はちらむな珠と見るまで
(17/3913,大伴家持)

 清少納言『枕草子』第37段「木の花は」に、「木のさまにくげなれど、あふち
(楝)の花いとをかし。かれがれにさまことに咲きて、かならず五月五日にあふもをかし」と。

 『新古今集』に、

   あふちさく外面の木陰露落ちて五月雨はるる風渡るなり
(藤原忠良)

 平治2年(1160)正月3日、源義朝(1123-1160)、尾張国野間において長田忠致(ただむね)により殺さる。「七日、尾張国住人長田四郎忠致、子息先生(せんじょう)景致(かげむね)上洛し、前左馬頭(さきのさまのかみ)義朝、幷に鎌田兵衛政家が首を持参して、不次(ふじ)の賞をかうぶるべき由、望申けり。・・・同九日、・・・検非違使(けびいし)八人ゆきむかて、首をうけとり、西洞院(にしのとういん)を上りにわたし、左の獄門の樗(おうち)の木にぞかけたりける」(『平治物語』下、岩波文庫本) 
 あふち咲(さく)くもゐをちりのふもとかな (宗長,1448-1532,『宗長手記』1526) 

   どむみりとあふちや雨の花曇 
(芭蕉,1644-1694)
 
 
 三木露風
(1889-1964)に、「栴檀」の詩がある(1913,『白き手の猟人』所収)


  風のおと川わたり来るみやしろに栴檀の実のおつるひととき
    (1930.08.12「丹生の川上」,斎藤茂吉『たかはら』) 
 

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