きび (黍) 

学名  Panicum miliaceum
日本名  キビ
科名(日本名)  イネ科
  日本語別名  コキビ、キミ(黄実)
漢名  黍(ショ,shŭ)
科名(漢名)  禾本(カホン,hébĕn)科
  漢語別名  稷(ショク,jì)、糜子(ビシ,méizi)
英名  Common millet,Proso millet, Hog millet
2007/07/21 薬用植物園

2005/08/05 東大農園
コキビ    市原在来

 漢語では、実が粘り 茎に毛があるものを(ショ,shŭ)と呼び、実が粘らず 茎に毛がないものを(ショク,jì)と呼び、区別する。
 キビ属 Panicum( shŭ 屬)には、世界の熱帯乃至暖帯に約500種がある。

  ニコゲヌカキビ P. acuminatum(Dichanthelium acuminatum)
  P. austro-asiaticum (南亞稷)
  ヌカキビ P. bisulcatum (糠稷・糠黍)『中国雑草原色図鑑』312
  クサキビ P. brevifolium (短葉黍)
東南アジア・熱帯アフリカ産
  ハナクサキビ
(キヌイトヌカキビ) P. capillare(繊枝稷) 北アメリカ原産
  P. cruciabile (剛脈稷)
  P. curviflorum(彎花黍)
  オオクサキビ P. dichotomiflorum(洋野黍) 北アメリカ原産
  スイシャセトガヤ P. elegantissimum(P.trypheron var.suishaense,
         P.curviflorum var.suishaense;旱黍草)
  サウイ P. hirticaule(P.sonorum)
中米(USA南西部~ペルー)原産、栽培種
  ヒメヌカキビ P. humile(P.walense, P.austroasiaticum;南亞黍)
  イヌヤマキビ P. incomtum (藤竹草)
東南アジア・インド産
  ニコゲヌカキビ P. lanugiosum (P.acuminatum;綿毛稷)
北アメリカ原産
  ルソンキビ P. luzonense(大羅灣草)
  ギネアキビ P. maximum (大黍)
熱帯アフリカ原産
  キビ P. miliaceum (・糜子)
 『中国本草図録』Ⅵ/2922
    イヌキビ var. ruderale(P.ruderale)
  ヤマキビ P. notatum(P.cordatum;心葉稷)
  オオヌカキビ P. paludosum(水生黍)
 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
  ハイキビ P. repens (鋪地黍・硬骨草・田基薑・風臺草・竹蒿草頭・馬鞭節)
         『中国本草図録』Ⅸ/4395・『中国雑草原色図鑑』313
  サルメンキビ P. sarmentosum(卵花黍)
  ホウキヌカキビ
(ケヌカキビ) P. scoparium 北アメリカ原産
  コキビ P. sumatrense(P.psilopodium, P.attenuatum;細柄黍;Tamil.Samai)
        
インドで栽培される雑穀
  P. taiwanense(臺灣黍)
  P. trichoides (發枝稷)
  P. trypheron (旱黍草)
  P. turgidum
  スイッチグラス P. virgatum (柳枝稷)
  P. walense(南亞稷)

 なお日本語では、Panicum ではないが後来の Sorghum bicolor もタカキビ・モロコシキビ(略してモロコシ)と呼び、キビの内と認識した。
   
 イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。
 和名は、黄実の転訛、実が黄色いことから。
 漢土において古来穀物を表してきたさまざまなことば(文字)については、五穀を見よ。
 種子がモチ性のものを(ショ,shŭ)、ウルチ性のものを(セイ,jì)・(セイ,jì)と区別したほか、秬(キョ,jù)・秫(ジュツ,shú)・秠(ヒ,pī)などの方言があった。
 『本草和名』に、丹黍は「和名阿加岐々美」、黍は「和名岐美」、稷は「和名岐美乃毛知」と。
 『倭名類聚抄』に、丹黍は「阿賀木々美」、秬黍は「和名久呂木々美」、秫は「和名木美乃毛智」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』19 に、「稷 キビ コキビ
大和本草 イネキビ ウルシキビ」、「黍 コキビ モチキビ」と。
 広く中央アジア~・東アジア温帯の乾燥地帯で栽培される雑穀。栽培化されたのはインドであろうという。
 漢土では、新石器時代から栽培する。
 漢代まで、華北における重要な穀物であり、主食とするほか、酒を醸した。五穀を見よ。
 また、黍の根を黍根と呼び、茎を黍莖と呼び、種子を黍米と呼び、稷の茎を糜穰と呼び、種子を稷米と呼び、それぞれ薬用にする。
 『詩経』国風・王風・黍離(しょり)に、「はよく実り、稷は苗がのびる」と。
 『礼記』「月令」五月に、「農乃ち黍を登(すす)む。天子乃ち雛を以て黍を嘗む」と。
 『大戴礼』「夏小正」二月に、「往きて黍を耰(ゆう)す。襌(たん)なり。襌は単なり」と。
 日本には弥生時代に渡来。
 明治時代まで広く栽培されていたが、今日ではほとんど見られない。
 『万葉集』に、

   なし
(梨)(なつめ)きみ(黍)に粟(あは)嗣ぎ延(は)ふ田葛(くず)
      後もあはむと葵
(あふひ)花咲く (16/2834,読人知らず)

 昔話「桃太郎」に出てくる黍団子が有名だが、今日岡山県の名物になっている「吉備団子」は嘉永・安政(1848-1859)以降に現れたもので、菓子としては白玉粉から作る求肥(ギュウヒ)であるという(本山荻舟『飲食事典』)。
モチキビ   2009/08/23 岐阜県大野郡白川村

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