辨 |
茎・葉はトウモロコシによく似るが、傷つくと濃紅褐色の斑ができる。 |
モロコシ属 Sorghum(高粱 gāoliáng 屬)には、世界の暖地に100種以上がある。
ブラックソルガム S. × almum(雜高粱)
S. arundinaceum 栽培モロコシの原種
モロコシ(広義) S. bicolor(S.vulgare;高粱)
サトウモロコシ(広義) Dochna Group
サトウモロコシ 'Dulciusculum' (S.saccharatum, S.dochna;蘆粟・甜高粱)
ホウキモロコシ 'Hoki'(var. hoki;E.broom corn)
アズキモロコシ Durra Group(S.durra;硬稈高粱)
コウリャン Nervosum Group('Nervosum', S.nervosum;多脈高粱)
スーダングラス nothosubsp. drummondii(S.×drummondi, S.sudanense;蘇丹草)
ヨシモロコシ subsp. arundinaceum(S.arundinaceum)
ナミモロコシ(モロコシキビ・タカキビ) subsp. bicolor(高粱)
セイバンモロコシ S. halepense(S.halepense var.propinquum;石茅)
ヒメモロコシ f. muticum
モロコシガヤ(広義) S. nitidum(光高粱・草蜀黍)
モロコシガヤ var. dichroanthum
コモロコシガヤ var. nitidum 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
シラゲモロコシガヤ f. aristatum
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イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。 |
訓 |
漢土において古来穀物を表してきたさまざまなことば(文字)については、五穀を見よ。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』19(1806)に、「蜀黍 トウキビ京 モロコシキビ東国 タカキビ四国 タチギミ津軽 コキビ肥前 ホキビ加州 キミ中国 キビ越後 セイタカキビ同上」と。 |
説 |
アフリカ原産の雑穀 millet。5000年以上前から作物として栽培、古代エジプトに入り、B.C.7c.頃にはメソポタミアで栽培。ヨーロッパには紀元前に入る。
漢土には、インドを経由して 4世紀以前に伝来、今日では華北・遼寧・吉林・黑龍江が主産地。
日本には平安時代乃至それ以前のころ伝来(一説に室町時代の伝来)。
食用のほか製糖用・飼料用・兼用など、多数のさまざまな品種があるが、箒製造専用の品種(ホウキモロコシ)があるのは面白い。 |
「ミレットのなかで現在世界経済にいちばん大きな地位を占めるのはソルガム Sorghum vulgare で、「コーリャン」や「モロコシ」の名で日本でもよく知られているものである。ソルガムはひじょうに変異に富み、熱帯の乾燥地で最後の作物となる例はアメリカのアリゾナ・テキサス方面で顕著に認められる。アフリカやインドでは、ソルガムはトウジンビエとともに乾燥地帯の主要作物となっている。・・・ソルガムには、湿度の高いところに適応する系統もある。穂型には大きな変異があり、茎を甘味用に用いる品種などもできている。また皮稞の別にあたる、粒の露出したものと穎に包まれたものとの違いもある。このようにソルガムの品種構成の複雑なことは、じつにコムギ・オオムギ・イネなど大穀物に優るとも劣らないものといえよう」(中尾佐助「農耕起源論」)。 |
誌 |
宮崎安貞『農業全書』(1696)に、「五穀の類」の一として「蜀黍(もろこしきび)」をあげ、
「是を唐(もろこし)きびとも、又高くのびぬる故、高黍(たかきび)とも名付くるなり。・・・実を取りて稈(から)をば簾にあみ、筵にうち、又民家の箒にも用ゆべし。或は隣さかいの籬にもたて、其破をふさぎ、米は色々食物に調へ、尤餅にして味よし。殊更性のよき物なり。米も稭(から)も皆すたる物なし。・・・」(岩波文庫本)と。 |
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