とうもろこし (唐もろこし) 

学名  Zea mays
日本名  トウモロコシ
科名(日本名)  イネ科
  日本語別名  トウキビ、ナンバン・ナンバンキビ、トウムギ、コウライキビ、サツマキビ
漢名  玉蜀黍(ギョクショクショ, yùshŭshŭ)
科名(漢名)  禾本(カホン,héběn)科
  漢語別名  玉米(ギョクベイ,yùmĭ)、包穀(ホウコク,baogu)、包蘆(ホウロ,baolu)
英名  Maize, Corn, Indian corn
2008/06/28 入間市宮寺
2005/08/12  清瀬市下宿 (飼料用か)

 茎・葉はモロコシによく似るが、モロコシは傷つくと濃紅褐色の斑ができるのにたいして、トウモロコシではできない。
 トウモロコシ属 Zea(玉蜀黍 yùshŭshŭ 屬)には、新大陸に2-7種がある。

  Z. diploperennis
1977メキシコで発見 多年生
  A. mays 
    トウモロコシ subsp. mays(玉蜀黍)
    テオシント
(ブタモロコシ) subsp. mexicana(Z.mexicana, Euchlaena mexicana;
         類蜀黍)
    
 トウモロコシには、多くの変種乃至品種がある。
   ソフトコーン amylacea
   ワキシーコーン
(モチトウモロコシ) ceretina 澱粉がアミロペクチンのみからなる
       (他の亜種はアミロースとアミロペクチンからなる)
   ポップコーン 'Everta'(var.everta)
小さい穀粒は、加熱すると蒸気爆発する
   デントコーン var. indentata
   フリントコーン indurata
澱粉質の胚乳を持つ。普通のトウモロコシ。未熟なものを蔬菜とする
   フイリトウモロコシ 'Japonica'
   スイートコーン var. saccharata
未熟な胚乳に甘みがある
   ポッドコーン trunicata
 
 現在見られるものは全て栽培型。
 考古学的に発掘されたものには、穂の小さい野生型のものがある。
 麦については、むぎを見よ。
 イネ科 Poaceae(Gramineae;禾本 héběn 科)については、イネ科を見よ。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』19(1806)に、「玉蜀黍 ナンバン ナンバンキビ ナンバキビ播州 クハシンキビ同上 トウモロコシ東国 サツマキビ備前 タカキビ因州 コウライキビ讃州 トウキビ筑前加州 ナンバントウノキビ遠州 クハシキビ越後 トウキミ奥州 キミ南部 ハチボク勢州 マメキビ越後 タマキビ」と。
 英名及び種小名は、アメリカ原住民タイノー族の mahiz, mayz から。
 コムギイネとともに世界三大穀物の一。  
 中央アメリカ(メキシコ南西部~グワテマラ)で、7000B.C.-5000B.C.ころテオシントから生みだされた栽培種。
 古くから現地の主食であり、5000B.C.頃には中央アメリカで栽培されていたという。
 ヨーロッパには15世紀末コロンブスが持ち込んだ。
 南・東南・東アジアには、ポルトガル人によって15-16世紀にもたらされた。
 中国には1516年に伝えられ、『本草綱目』
(1578)に「種は西土に出づるも、種(ウ)うるものまた罕(マレ)」と記載されている。田藝衡『留青日札』(1563)には、西番からもたらされたので番麦といい、またかつて進御を経たので御麦というとある。
 日本に伝来したのは天正7年(1579)、トウモロコシの名は『本朝食鑑』(1695)に見える。
 本格的に栽培されだしたのは明治初、北海道にアメリカ種を導入してから。
 中国では、乾燥した花柱・柱頭を玉米鬚(ギョクベイシュ,yùmĭxū)と呼び薬用にする。『(修訂) 中葯志』V/198-201 『全国中草葯匯編』下/171-172
 宮崎安貞『農業全書』(1696)に、「又一種玉蜀黍(なんばんきび)と云ふあり。種ゆる法 前(モロコシ)に同じ。其粒玉のごとし。菓子にすべし。・・・」(岩波文庫本)と。

   玉蜀黍
(もろこし)の穂は思ふことなきやうに夕日の風に揺り眠るかな
     
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)

 函館の友人からトウモロコシが届いた。近郊の農家からもぎたてを手に入れてきたという。「そのまま生で」と、電話口の声がはずんでいた。
 初めての体験なので、おそるおそるかじったら、草の香りのあと口の中に甘みが広がった。それからは、ざくざくほおばった。トウモロコシ畑に入り込み、好物をむさぼっている馬の気分になった。
 馬で思い出した。その1週間前、中国東北部のハルビンを旅行した時に、路上で焼いていたトウモロコシを食べた。ぱさぱさとした粒をかみしめながら、甘くなるのを待った。「まるで飼料だ」と、思わずつぶやいた。
 ハルビン郊外の農村地帯を回ると、広大なトウモロコシ畑が広がっていた。刈り取ったトウモロコシの茎は干して燃料に使い、葉は家畜の飼料にするという。むだのない作物だと農家のあるじは言っていた。味どころではないのだろう。 ・・・     (高成田享、2006/08/01 朝日新聞夕刊「窓」)
 群芳譜の著者から:トウモロコシは、日本でも「むだのない作物」だったようですよ。
 

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