まぐわ (真桑) 

学名  Morus alba
日本名  マグワ
科名(日本名)  クワ科
  日本語別名  クワ、トウグワ・カラグワ、シログワ
漢名  桑(ソウ,sang)
科名(漢名)  桑科
  漢語別名  桑樹(ソウジュ,sangshu)、椹・(シン・ジン,shen)
英名  White mulberry
2004/11/04 毛呂山町苦林
2005/05/24  東大農園 (西東京市)
 クワ科 Moraceae(桑科)には、約50-55属1200種がある。
   Allaeanthus(落葉花桑屬)
   ウパス属 Antiaris(見血封喉屬) 東南アジア乃至インドに数種
     ウパス A. toxicaria(見血封喉・加布・剪刀樹・箭毒木)
          
 東南アジア乃至インド東部産、乳液を矢毒に用いる。ウパスはマレーの現地名 
   パンノキ属 Artocarpus(木波羅屬)
   カジノキ属 Broussonetia(構樹屬)
   アサ属 Cannabis(大麻屬)
   Conocephalus(錐頭麻屬)
   ハリグワ属 Cudrania(柘樹屬)
   クワクサ属 Fatoua(水蛇麻屬)
   イチジク属 Ficus(無花果屬)
   カラハナソウ属 Humulus(葎草屬)
   ハリグワ属 Maclura → Cudrania
   Malaisia(牛筋藤屬)
     ネジレギ M. scandens(牛筋藤・包飯果藤)
   クワ属 Morus(桑屬)
   Phyllochlamys(酒餠樹屬)
   Pseudostreblus(假鵲腎樹屬)
     P. indica(假鵲腎樹・滑葉鐵打)『中国本草図録』Ⅰ/0031
   Smithiodendron(梨桑屬)
   Streblus(鵲腎樹屬)
     S. asper(鵲腎樹)
   Taxotrophis(刺桑屬)
   Teonongia(米揚噎屬)
     T. tonkinensis(米揚噎)

 アサ属・カラハナソウ属は、アサ科 Cannabaceae(大麻科)として独立させることがある。アサ科を見よ。 
 クワ属 Morus(桑屬)は、約10種があるとするが、研究者により20種以上を認める。
   マグワ
(トウグワ・シログワ・カラヤマグワ) M. alba(; E. White mulberry) 朝鮮・中国原産、日本には古く蚕と渡来。12c.ヨーロッパに入り、果樹・並木として植栽
   イチベイ M.×argutidens
   シマグワ M. australis(鷄桑・小葉桑・桑樹・鹽桑仔・桑材仔・蠶仔葉樹・桑白・桑枝・娘子樹) 
日本(九州南部・琉球)・中国(東北・華北・中南・西南)・臺灣・インドシナ・インドネシア・インドに分布。中国では、地方により葉・根皮を薬用。『中国本草図録』Ⅲ/1076
   ヤマグワ(クワ・ノグワ) M. bombycis(E. Japanese mulberry) 
日本・朝鮮・樺太に分布、変異が大きい
      ハマグワ var. maritima 
   オガサワラグワ M. boninensis
日本(小笠原)産
   ケグワ M. cathayana(華桑) 
日本(和歌山県・中国地方)・朝鮮・中国(黄河流域・長江流域)・インドシナに分布。河北では、葉を薬用
   ハチジョウグワ M. kagayamae
日本(伊豆半島南部・伊豆七島)産
   M. laevigata(長果桑)
チベットでは葉を薬用。『雲南の植物Ⅲ』169
   ロソウ
(ログワ・マルバグワ) M. latifolia(M.multicaulis; M.alba var.multicaulis) 中国(中・南部)原産
   モウコグワ
(チョウセングワ) M. mongolica(蒙桑・崖桑・刺葉桑) 朝鮮・中国(遼寧・内蒙古・河北・山東・山西・河南・兩湖・四川・雲南)に分布。中国では、地方により葉・根皮を薬用
     オニグワ var. diabolica(花葉岩桑)
 『雲南の植物Ⅱ』159
   クロミグワ M. nigra(黑桑;E. Black mulberry) 
カフカス原産、果実生食用に欧米で植栽
   アカミグワ M. rubra(E. Red mulberry) 
北アメリカ原産、果実生食用に欧米で植栽
 
 異説として、次のようなものがある。
  一説に、ヤマグワ M. bombycis を、広義のヤマグワ
(シマグワ) M. australis(鷄桑)にまとめる。
  一説に、ノグワ
(ケグワ) M. tiliaefolia を、カラケグワ M. cathayana から分ける。
 ヤマグワの雌花の花柱は、中ほどまで2裂する。
 マグワ・ケグワ・オガサワラグワの雌花の花柱は、深く2裂する。
 栽培するクワの品種は 100を超えるが、多くは次の3系列に属するという。
   ヤマグワ系: 北陸・東北地方に多い。赤木・島の内・遠州高助・剣持など。
   ハクソウ
(白桑)(カラグワ系): マグワに由来。改良鼠返(ねずみがえし)・一ノ瀬など。
   ロソウ
(魯桑)系: 西日本に多い。ロソウに由来。改良魯桑・赤目魯桑など。
 一名シログワというのは、果実の色から。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)に、桑根白皮は「和名久波乃加波」、桑菌は「久波乃多介」、赤鶏桑は「和名久波乃美」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)桑に「和名久波」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32に、桑は「クハ和名鈔」と。
 漢名の椹・葚は、クワの実。
 属名は、ラテン語の「クワ」。語源は ケルト語の mor(黒)に由来、熟した果実の色から、という。
 種小名は「白い」。果実の色から。
 雌雄異株。
 果実は未熟時には白く、赤色を経て紫黒色に熟する
(ただし 色づかない品種がある)
 中国・朝鮮原産、中国では、全国に分布。日本には古く蚕とともに渡来した。
 多くの園芸品種がある。
 中国では、葉をカイコ(蚕)の飼料とするために栽培し、その歴史は 養蚕とともに古い。
 殷墟(河南省安陽)出土の甲骨文字に 養蚕関係の文字が多出している。また『詩経』『楚辞』などから 近世に至るまで、桑はつねに文学作品に取り上げられてきた。
 湖南省長沙馬王堆漢墓からは 絹織物が出土しており、四川省出土の画像磚には柴桑の場面が浮彫された例がある。
 ほかに果実(桑椹・桑葚・桑黮,ソウジン,sangshen)を食用としたり酒(桑実酒)を作る原料とする。また、葉から桑茶を作り、樹皮から繊維を採って布(タパ布)や紙(桑皮紙)を作り、材は建築に用いたり器具を作る材とする。
 漢方では、果序(桑椹,ソウジン,sangshen)・葉(桑葉,ソウヨウ,sangye)・若い枝(桑枝,ソウシ,sangzhi)・根皮(桑白皮,ソウハクヒ,sangbaipi)などを薬用に供する。『中薬志』Ⅱpp.380-382・Ⅲpp.290-292,446-447 
 中国の伝説上の植物である扶桑(フソウ,fusang)については、ブッソウゲを見よ。
 『詩経』には、国風・衛風・氓(ぼう)に、「桑の未だ落ちざるとき、其の葉 沃若(よくじやく)たり。于嗟(ああ)鳩や、桑葚を食ふこと無かれ」と。鳩がクワの実を食うと酔うという。
 桑畑は、国風・鄘風
(ようふう)桑中に、「我を桑中に期し、我を上宮に要し、我を淇(き)の上(ほとり)に送る」と。鄘風定之方中に、衛人が楚宮を作るのに「降りて桑を観(み)る、卜するに云ふ其れ吉なりと」と。
 『礼記』「月令」三月に、「野虞(野守)に命じて桑柘(さうしゃ)を伐る毋(な)からしむ。鳴鳩 其の羽を払(う)ち、戴勝(たいしょう。鳥の名) 桑に降る。曲植(きょくち。蚕の籠や棚)籧筐(きょきょう。桑を摘む籠)を具ふ。后妃 斉戒して、親ら東郷して躬ら桑つみ、婦女をして禁じて観(かたち)づくること毋からしめ、婦使を省きて以て蚕事を勧む。蚕事既に登(な)り、繭を分ち糸を称(はか)り功を效(いた)し、以て郊廟の服に共し、敢て惰る有る毋からしむ」と。柘は ハリグワ。
 『大戴礼』「夏小正」三月に、「桑を摂る。
〔摂りて之を記すは、桑を急とするなり。〕」と。
 『詩経』国風・豳風「七月」に「春日 載
(すなは)ち陽(あたたか)く、有(ここ)に鳴く 倉庚(さうかう。コウライウグイス)、女は懿(ふか)き筐(かご)を執り、彼の微行(小道)に遵(そ)ひて、爰(ここ)に柔桑(クワの若葉)を求む」と、また「蚕月(三月か)は條たる桑、彼の斧■{爿偏に斤}(ふしゃう。斧)を取りて、以て遠揚(秀つ枝)を伐れば、猗(い)たる彼の女桑」と。
 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5に「種桑柘」が載る。柘は ハリグワ
 日本における桑の文化史は、ヤマグワも見よ。
 日本におけるクワ栽培の起源は不明な点が多い。しかし、奈良時代には盛んに栽培されていたという。江戸時代中期には養蚕が奨励されて栽培法が改良された。
 明治時代以降、開国により絹織物の輸出が盛んになり、養蚕業は飛躍的に発展したが、これに伴って 桑畑は全国に広がった。
 第二次世界大戦後、ナイロンの普及により絹織物業が衰退するとともに、桑畑も姿を消しつつある。

   きさらぎにならば鶫
(つぐみ)も来(こ)むといふ桑の木はらに雪はつもりぬ
     
(1946,齋藤茂吉『白き山』)
 

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