やまぐわ (山桑) 

学名  Morus australis (M. bombycis, M.amamiana, M.bombycis var.caudatifolia, M.bombycis f.disseta)
日本名  ヤマグワ
科名(日本名)  クワ科
  日本語別名  クワ、ツミ(柘)、シマグワ
漢名  鷄桑(ケイソウ,jīsāng)
科名(漢名)  桑(ソウ,sāng)科
  漢語別名  小葉桑、桑樹、鹽桑仔、桑材仔、蠶仔葉樹、桑白、桑枝、娘子樹
英名  Japanese mulberry
2009/04/16 入間市宮寺

雄花   2021/03/29 小平市玉川上水緑地
雌花   2021/03/31 同上
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2020/05 小平市玉川上水緑地
2005/05/17 三芳町竹間沢
2005/05/28 新座市中野

 日本人が 伝統的・民俗的に桑を区別した中に、山桑(やまぐわ)と島桑(しまぐわ)がある。
 山桑は、山に自生する桑の意で、中国から入って里に栽培する真桑
(マクワ M. alba)に対して在来の桑を言う。日本・朝鮮・樺太に分布する。
 島桑は、琉球の桑の意で、日本では九州南部・琉球に分布する
 かつて、このふたつをヤマグワ M. bombycis とシマグワ M. australis として植物学上も区別したが、今日では両者をヤマグワ M. australis として一種にまとめる。
 マグワと ヤマグワの違いは、マグワの辨を見よ。
 クワ属 Morus(桑屬)については、クワ属を見よ。
 和名を柘(つみ)というものはヤマグワだが、漢名を柘(シャ,zhè;柘樹・柘桑)というものは クワ科別属のハリグワ
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)柘に「漢語抄云豆美」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32に、柘は「ヅミ和名鈔 ヤマグハ ノグハ大和本草 イヌグハ同名アリ」と。
 種小名 bombycis は「蚕 bombyx の、絹の」。australis は「南の」。
 北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・華東・兩湖・兩廣・西南・チベット・陝甘・河北・遼寧・千島・樺太・インドシナ・ヒマラヤ・インドに分布。
 養蚕とクワについては、マグワを見よ。
 日本古代の神婚説話に、柘枝の仙女(つみのえのやまひめ)の伝説(「柘枝伝」)があったことが知られている。すなわち、吉野にうましね(味稲・美稲・能志祢)という男が居り、吉野川に梁をしかけて鮎を取って生業としていた。ある日、(つみ、ヤマグワ)の枝が流れてきて梁にかかったので、家に持って帰って置いておいたところ、それが美しい女に変った。そこで夫婦となったが、年を取ったり死んだりすること無く、後に常世の国に飛び去った、という。
 『万葉集』には、

   この夕
(ゆふべ) 柘のさ枝の 流れ来ば 梁は打たずて 取らずかもあらむ
       
(3/836,読人知らず)
   古に 梁打つ人の 無かりせば 此間
(ここ)も有らまし 柘の枝はも (3/387,若宮鮎麿)
 『日本書紀』11仁徳天皇30年、天皇は皇后磐之姫(いはのひめ)が紀伊に出かけている留守に八田皇女を宮中に召し入れた。皇后は怒って、そのまま都には帰らず山城に住み着いた。「十一月の甲寅の朔庚申に、天皇(すめらみこと)、浮江(かはふね)より山背(やましろ)に幸(みゆき)す。時に桑の枝(き)、水に沿(したが)ひて流る。天皇、桑の枝を視(みそなは)して歌(うたよみ)して曰(のたま)はく、
   つのさはふ いはのひめが
     おほろかにきこ
(聞)さぬ うわぐは(末桑)のき(木)
   よ
(寄)るましじき かは(河)のくまぐま(隅々)
     よ
(寄)ろほひゆ(行)くかも うらぐはのき
 『万葉集』に、

   たらちねの 母がその
(園)なる 桑すらに 願へば衣に 着すとう物を (7/1357,読人知らず)
   ・・・明け来れば 柘のさ枝に 暮
(ゆふ)去れば 小松の末(うれ)に・・・
        
(10/1937,読人知らず「鳥を詠む」)
   筑波ね
(嶺)の にひぐわ(新桑)まよ(繭)の きぬ(衣)はあれど
     きみ
(君)がみけし(御衣)し あやにき(着)(欲)しも (14/3350,東歌)
 

   さみだれや蚕煩ふ桑の畑 (芭蕉,1644-1694)
   椹
(クハノミ)や花なき蝶の世すて酒 (同)
 

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