ばら  



 バラ科 Rosaceae(薔薇科) バラ亜科 Rosoideae(薔薇亞科) バラ属 Rosa(薔薇屬)の植物の総称。
  (バラ属以外に、トキンイバラ Rubus commersonii(酴醿)もバラの名で呼ばれる。)
 バラ科 Rosaceae(薔薇科) バラ亜科 Rosoideae(薔薇亞科)については、バラ亜科を見よ。
 バラ属には、中国西南部から西アジアにかけて、100-200種があり、中国には60種以上の野生種がある。
 これを、次の4亜属に分つ。
   フルテミア亜属 1亜属1種。
     R. persica
西アジア・中央アジアに分布
   バラ亜属 
バラ属のほとんどがこれに属す。日本には12種が自生する。
     R. cinnamomea
バラ亜属の基準種
   サンショウバラ亜属 
次の2種
     サンショウバラ R. hirtula
     イザヨイバラ R. roxburghii(繅絲花・刺梨・木梨子・送春歸;
        E.Chestnut rose, Burr rose) 『中国本草図録』Ⅲ/1190
   ヘスペロドス亜種 
北アメリカ西部に2種 
 東アジア原産の、あるいは古来日本・中国で鑑賞されてきたバラには、次のようなものがある。

   オオタカネイバラ R. acicularis(刺薔薇)
        『中国本草図録』Ⅸ/4171・『週刊朝日百科 植物の世界』5-198
     タカネバラ var. nipponensis(R. nipponensis)
     var. taguetii(少刺大葉薔薇・大葉薔薇)
   R. alberti(落萼薔薇) 『中国本草図録』Ⅸ/4172
   R. anemoneflora (E.Three leaf rose) 中国東部原産。
   モッコウバラ R. banksiae(木香;E.Banksia rose, Bank's rose)
        常緑で蔓性。花は白・黄。中国中・西部に自生。19世紀にヨーロッパに入る。
     var. normalis(七里香薔薇・香花刺)
   R. bella(美薔薇・山刺玫)
 『中国本草図録』Ⅹ/4632
   ヤエヤマノイバラ
(カカヤンバラ) R. bracteata(硬苞薔薇・苞薔薇・猴柿・刺柿・七姉妹)
        『週刊朝日百科 植物の世界』5-198
   R. brunnonii(E.Himalayan musk rose)
中国(西南部)・ビルマ・ヒマラヤに分布。
        R. moschata(E.Musk rose)と酷似する。『週刊朝日百科 植物の世界』5-204
   コウシンバラ R. chinensis(月季花・月月紅;E.China rose)
        中国原産。1789年ヨーロッパに入る。コウシンバラの品種は、コウシンバラを見よ。
     ヒメバラ var. minima(矮小月月紅;E.Fairy rose)
        中国原産。19c.初にはヨーロッパで見られた
   R. cymosa(小金櫻・小果薔薇)
 『中国本草図録』Ⅵ/2660
   ヤマハマナス(カラフトイバラ) R. davurica(山刺玫)
   R. gigantea 蔓性。花は剣瓣性、色は白・黄。中国西部に自生。
   R. giraldii
   R. graciliflora(刺栗子・細梗薔薇)
   R. helenae
中国(中部・南西部)に分布
   サンショウバラ R. hirtula
     イザヨイバラ var. glabra
中国産の R.roxburgii と同一種という
   R. hugonis(黄薔薇;E.Golden rose of China)
        
『中国本草図録』Ⅵ/2661・『朝日百科 世界の植物』5/1381
   モリイバラ R. jasminoides 『週刊朝日百科 植物の世界』5-196
   R. koreana(長白薔薇)
 『中国本草図録』Ⅲ/1189
   ナニワイバラ R. laevigata(金櫻子・白玉帶・下山虎・刺藤辣・刺郎子樹・
        蟷螂子樹・三葉■
{艸冠に勒};E.Cherokee rose) 『中国本草図録』Ⅰ/0104
     ハヤトバラ var. rosea
   R. laxa(疏花薔薇)
 『中国本草図録』Ⅶ/3157
   R. longicuspis(常綠薔薇)
 『雲南の植物Ⅱ』117
   オオフジイバラ(ヤマテリハノイバラ・アズマイバラ) R. luciae
     フジイバラ var. fujisanensis(R. fujisanensis)
     ヤブイバラ(ニオイイバラ) var. onoei(R. onoei)
   R. macrophylla(大葉薔薇)
   マイカイ
(ボタンバラ) R.×maikai(R. rugosa var. plena; R. odorata var. thea;
        玫瑰)
   カラフトイバラ R. marretii 『週刊朝日百科 植物の世界』5-197
   R. maximowicziana 東北アジア・シベリアに分布。
   R. moyesii
中国(陝西・四川・雲南)に分布。
        『週刊朝日百科 植物の世界』5-201・『朝日百科 世界の植物』5/1380
   ノイバラ R. multiflora(野薔薇・多花薔薇;E.Baby rose)
     ツクシイバラ var. adenochaeta
     var. albo-plena(白玉堂)
     var. brachacantha(紅刺藤・小和尚頭・細葉紅根)
     var. cathayensis(R. cathayensis;粉團薔薇・野薔薇・白殘花)
        国(江蘇・浙江・安徽・福建・廣東・兩湖・四川・雲南)に分布。『雲南の植物Ⅱ』118
     サクラバラ var. platyphylla(七姉妹・十姉妹;E.Seven sisters rose)
     ショウノスケバラ(キンシイバラ) var. watsoniana
   R. nipponensis → R. acicularis var. nipponensis
   R. odorata(芳香月季・香水月季;E.Tea rose)
        常緑・半常緑で匍匐性。花は一重・八重、色は白・粉紅・黄。
        中国(浙江・江蘇・四川・雲南)に分布。1768-1810にヨーロッパに入る。『雲南の植物Ⅱ』118
     var. gigantea(大花香水月季・香水月季・白薔薇・生胎果・大卡卡果・固公花)
        中国の雲南に分布。
『雲南の植物Ⅱ』119
     var. erubescens(粉紅香水月季) 中国の雲南に分布。
     var. pseudindica(橘黄香水月季) 中国の雲南に分布。
   R. omeiensis(峨眉薔薇・刺石榴)
 中国西部に分布。
          『雲南の植物Ⅰ』134・『中国本草図録』Ⅱ/0603・『週刊朝日百科 植物の世界』5-202

   ミヤコイバラ R. paniculigera
   R. platycantha(寛刺薔薇) 『中国本草図録』Ⅶ/3158
   イザヨイバラ R. roxburghii(繅絲花・刺梨・木梨子・送春歸;
        E.Chestnut rose, Burr rose)
 中国中部・西部に分布。『中国本草図録』Ⅲ/1190

   
R. rubus(荼縻・茶子藨) 『雲南の植物Ⅱ』120・ 『中国本草図録』Ⅶ/3159
   
ハマナス R. rugosa(玫瑰;Japanese rose) ハマナスの品種は、ハマナスを見よ。
        
ベニハマナシ cv. 'Scarlet'
        
スカブローサ cv. 'Scabrosa'
   
ヤマイバラ R. sambucina
   R. sericea(山刺梨・絹毛薔薇)
 ヒマラヤに分布。
        『雲南の植物Ⅰ』136・『雲南の植物』126・『週刊朝日百科 植物の世界』5-203
   R. seritata(鈍葉薔薇・美麗薔薇)
   R. setipoda(黄花薔薇・色淸)
   R. sikangensis(西康薔薇)
『雲南の植物』127・『中国本草図録』Ⅷ/3638
   R. sweginzowii(扁刺薔薇)
 中国西部に分布。
        『雲南の植物Ⅰ』137・『中国本草図録』Ⅸ/4173・『週刊朝日百科 植物の世界』5-202
     var. glandulosa
『雲南の植物』126
   タイワンノイバラ R. taiwanensis(小金櫻・小金英・金英頭)
 臺灣産
   R. taronensis(獨龍薔薇)
 『中国本草図録』Ⅵ/2662
   R. tsinglingensis(秦嶺薔薇) 『中国本草図録』Ⅵ/2663
   R. webbiana
西ネパール乃至パキスタン北部に分布、『週刊朝日百科 植物の世界』5-193
   テリハノイバラ(ハイイバラ・ハマイバラ) R. wichuraiana(光葉薔薇;E.Memorial rose)
   R. willmottiae
中国(西南部)・ヒマラヤ産。『朝日百科 世界の植物』5/1381
   R. xanthina(黄刺苺;E.Manchu rose)
 基準種は八重ざき。
        『中国本草図録』Ⅴ/2145・『朝日百科 世界の植物』5/1381
     f. normalis(單瓣黄刺玫)
 『中国本草図録』Ⅵ/2664
     f. spontanea
『週刊朝日百科 植物の世界』5-202 
 西洋系のバラの原種、或は19c.中葉以前の栽培品種 old rose には、次のようなものがある。
   R. alba
白バラ、R.caninaとR.damascenaの交雑種。古代ギリシア・ローマ時代から栽培
     セミ・プレナ var. suaveolens(E.Semi-prena)
 ばら戦争(1455-1485)時のヨーク家の紋章
     アルバ・マキシマ
(マキシマ) var. maxima 八重の白バラ。15c.或いはそれ以前から栽培
   R. arvensis
広くヨーロッパに分布。『週刊朝日百科 植物の世界』5-207
   R. canina(E.Dog rose) 花は一重、白色又は桃色。西アジア・ヨーロッパに分布。
     var. inerimis 
花は一重、色は薄いピンク。
     cv.'English briar'
   ヒャクベンバラ
(セイヨウバラ) R. centifolia(R.gallica var.centifolia;洋薔薇;
        E.Cabbage rose, Provence rose) R.gallica, R.phoenicia, R.moschata, 
        R.caninaの4種の雑種、17c.にオランダで作られ、19c.前半には広く栽培。
     var. bullata
1815年以前から栽培
     コケバラ var. muscosa(E.Moss rose)
 R.centifoliaの枝変り、1696頃南フランスで発見
       cv.'Chapeau de Napoleon' 
   R. cocanica 一説に、R. xanthina の変種。
   ダマスクローズ R. damascena(E.Damask rose)
        自然雑種起源。ヨーロッパには16世紀に小アジアから入る。芳香性。
     var. trigintipetala
        
サマーダマスク系、ブルガリア・トルコで香料用に栽培。『週刊朝日百科 植物の世界』5-210
     ヨーク&ランカスター var. versicolor(E.York and Lancaster)
         『週刊朝日百科 植物の世界』5-211
   デュポンティ R.×dupontii(E.Dupont rose, Snow bush rose)
        
一重または八重、白バラ。1817年以前から栽培。
   R. eglanteria(E.Sweetbrier)
   R. foetida (R. lutea;E.Austrian briar)
        雑種起源、花色は黄。イラン・イラク・アフガニスタン原産、1542頃ヨーロッパに入る。
     var. persiana
『週刊朝日百科 植物の世界』5-213
     var. bicolor 花は表が紅赤、裏が黄色。ヨーロッパで1590以前から栽培。
        
『朝日百科 世界の植物』5/1380
   R. gallica(E.French rose, Provence rose)
 花は桃色又は赤色。雑種起源か。
        
ヨーロッパには7c.西アジアからイスラム勢力とともに入る。『朝日百科 世界の植物』5/1380
     
var. officinalis 13c.よりプロヴァンスで香料用に栽培。『週刊朝日百科 植物の世界』5-211
   R. glauca (=R. rubrufolia) ヨーロッパ中南部原産、『週刊朝日百科 植物の世界』5-205
   R. horrida
   R. laxa
   R. mollis (R. villosa mollissima)
   R. moschata(E.Musk rose) 蔓性。花は一重、白色。南欧・北アフリカに分布。
     var. abyssinica 
   R. oxyodon (R. pendulina oxyodon)
   R. pendulina ヨーロッパ中南部に分布、『週刊朝日百科 植物の世界』5-206
   R.×penzanceana(E.Lady Penzance)
原種交雑種 
   R. persica
花に赤いブロッチ(目)がある。『週刊朝日百科 植物の世界』5-214
   R. phoenicia 
   R. pimpinellifolia(E.Burnet rose, Scotch rose) 
   R. pomifera (R. villosa pomifera;E.Apple rose) 
   R. rubrifolia → R. glauca
   R. sempervirens
地中海地方産
   R. tomentosa
地中海地方・ヨーロッパ中部・ブリテン諸島に分布 
 19c.中葉のヨーロッパで、在来の品種と中国から入ったコウシンバラ R. chinensis(月季花・月月紅;E.China rose)との交雑により、ティーとハイブリッド・パーペチュアルの2系統が成立した。

  ティー(T.;E.Tea)19c.中頃成立。四季ざきだが、耐寒性に欠け、はやらなかった。
        
英名は紅茶の香りがすることから。
     サクラカガミ
(桜鏡)(E.Duchesse de Brabant) 1857年 フランスで作出。
     レディ・ヒリンドン (E.Lady Hillingdon)
1910年イギリスで作出
  ハイブリッド・パーペチュアル(H.P.;E.Hybrid perpetual)1816年イタリアで成立。
        
耐寒性があり強健、19c.ヨーロッパで広く栽培。『週刊朝日百科 植物の世界』5-212
     フジ
(不二)(E.Frau Karl Druschki) 1901年ドイツで作出
 
 フランスのギヨーは、1860年 R.multiflora を導入してポリアンサ(Pol.;房ざき)系の品種を作った。
   アンヌマリー・ド・モンラベル (E.Anne-Marie de Montravel)
1879年フランスで作出
   ミニョネット(E.Mignonette)
 1880年フランスで作出
   オルレアン・ローズ(E.Orlean rose)
 1909年フランスで作出
   グローリア・ムンディ (E.Gloria Mundi)
 1929年オランダで作出

 ギヨーは引き続き1867年には、ティーとハイブリッド・パーペチュアルを交雑してハイブリッド・ティー(H.T.)を、作り出した。
   ラ・フランス(F.La France) 1867に作られた最初のH.T.。『週刊朝日百科 植物の世界』2-513
   ピース(E.Peace)
1945年第二次世界大戦の終戦とともに発表されたH.T.。
   マリア・カラス(E.Maria Callas)
1965年フランスで作出。カラス(1923-1977)はオペラ歌手。

 1924年デンマークのポールセンはポリアンサとハイブリッド・ティーを交雑して、フロリバンダ(Fl.)を作った。後に、フロリバンダとハイブリッド・ティーを更に交雑して、グランディフローラ(Gr.)が作られた。
 なお、現代バラのうちには、蔓性を持つクライミングがあり、その成立には一部テリハノイバラ R. wichuraiana(光葉薔薇;E.Memorial rose)が関っている。またミニチュア(Min.)のものは、ヒメバラ R.chinensis var.minima(矮小月月紅;E.Fairy rose)が関っている。 
 以上のように、現代の栽培バラ

   現代バラ(現代月季;E.Modern rose)

は、ヨーロッパにおいて次の7つの野生種を複雑に交雑させながら作り出されたものである。
   R. gallica(E.French rose)
   R. moschata(E.Musk rose)
   R. foetida (R. lutea;E.Austrian briar)
   コウシンバラ R. chinensis(月季花・月月紅;E.China rose)
   R. gigantea 
   ノイバラ R. multiflora(野薔薇・多花薔薇;E.Baby rose)
   テリハノイバラ R. wichuraiana(光葉薔薇;E.Memorial rose) 


 和名のバラは、イバラ(ウバラ・ウマラとも)の転訛。もともとは植物のとげの称謂、転じてとげのある灌木(ヒイラギノイバラカラタチハリギリなど)の総称。
 今日では、ここにいうバラを指す。
 漢語では、とげのある灌木は荊棘と総称する。ただし、その中身は、ニンジンボクナツメなどであり、日本とは異なる。
 「ユーラシア大陸内陸部のさまざまな植生のひとつに、メギ科のメギ属やマメ科のムレスズメ属などからなる刺状低木林があるが、バラ属の野生種もその一員となっている」(『週刊朝日百科 植物の世界』5-194)
 漢名では、バラのうち ノイバラなど小形の花を多数群れるようにつけるものを薔薇(ショウビ,qiangwei)と呼び、コウシンバラなど大形の花をつけるものを月季(ゲッキ,yueji)と呼んで区別する。
 (和名には月季の名はなく、一般にバラを薔薇と書き、ソウビ・ショウビと読む。)
 
 『古今集』巻10物名「さうび」に、

   我はけさ うひにぞみつる 花の色を あだなる物と いふべかりけり
(紀貫之)
 
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「荊棘(いばら)のるひ」に、「らうざ 花さくらいろニ見ゆ。八重ひとへ、大りん。らうざ・はまなすハ薬種に用」と。らうざは rose,rosa か。 
 
  寒き日に濃きくれなゐの薔薇
(ばら)を愛(め)でしばらくにして昼寝(い)ぬわれは
     
(1938「寒の華」,齋藤茂吉『寒雲』。これは、コウシンバラか現代バラか)
 
 西洋では、クレタ島のca.1500B.C.の壁画に、バラが描かれている。これは R.foetida であろうという。
 ギリシア・ローマ時代には 西アジア・ヨーロッパ原産の野生バラや変種を、観賞用に栽培した。この時代に鑑賞したものは、 R.gallica、R.centifolia、R.damascena、R.alba など。
 中世には、バラはむしろイスラム文化圏で愛好された。
 11-13世紀には、十字軍が近東・小アジアのバラを持ち帰り、バラの花の愛好が進んだ。



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