のいばら (野茨)
学名 |
Rosa multiflora var. multiflora |
日本名 |
ノイバラ |
科名(日本名) |
バラ科 |
日本語別名 |
ノバラ、ウバラ、ハナウバラ、シロイバラ、コモチイバラ、シロバラ、グイ |
漢名 |
野薔薇(ヤショウビ,yĕqiángwēi) |
科名(漢名) |
薔薇(ショウビ,qiángwēi)科 |
漢語別名 |
薔薇・蘠蘼(ショウビ,qiángwēi)、墻麻、多花薔薇(タカショウビ,duōhuā qiángwēi)、
營實(エイジツ,yíngshí)、山棗、山棘、牛棘、刺乆■{艸冠に縻}、刺紅、牛勒、
倒鉤刺、和尚頭、七姉妹 |
英名 |
Baby rose |
2006/02/19 薬用植物園 |
2006/02/23 さいたま市 秋が瀬 |
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2009/03/15 秋ヶ瀬 |
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2006/03/23 清瀬市 中里 |
2006/03/27 秋が瀬 |
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2005/05/18 清瀬市中里 |
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2005/05/23 さいたま市 田島が原 |
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2004/07/31 清瀬市中里 |
2005/10/16 同左 |
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2020/10/21 小平市玉川上水緑地 |
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2007/12/25 薬用植物園 |
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辨 |
Rosa multiflora には、次のような種内分類群がある。
ツクシイバラ var. adenochaeta
(R.multiflora var.carnea f.cathayensis excl. basion.,
R.adenochaeta) 九州産
var. albo-plena(白玉堂) 白色重瓣 一説にノイバラの内
サクライバラ var. carnea(R.multiflora var.platyphylla, R.lebrunei,
R.blinii, R.multiflora var.carnea f.platyphylla;
七姉妹・十姉妹;E.Seven sisters rose) 粉紅色、重瓣
ゴヤバラ f. platyphylla
var. cathayensis(R. cathayensis, R.multiflora var.gentiliana, R.gentiliana,
R.kwangsiensis, R.adenoclada;粉團薔薇・紅刺玫) 粉紅色、単瓣
河北・河南・陝甘・山東・華東・両湖・廣東・四川・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』118
タイワンノイバラ var. formosana 一説にノイバラの内
ノイバラ var. multiflora(R.blinii, R.lebrunei, R.polyantha,
R.quelpaertensis, R.thunbergii, R.watsoniana, R.wichurae;
野薔薇・多花薔薇;E.Baby rose)
ウスアカノイバラ f. rosipetala
コバノイバラ var. quelpaertensis 一説にノイバラの内
ショウノスケバラ(キンシイバラ) var. watsoniana 一説にノイバラの内
「サクライバラとゴヤバラは.ツクシイバラ(Rosa multiflora var. carnea f. cathayensis)から栽培化されたとされるが(北村
1979),後者は日本だけでなく中国にも分布するため,どちらで栽培化されたかは不明である.ゴヤバラは,インターネット検索でも苗木の販売例が見つからないので,現在では殆どないし全く栽培されていないと思われる」(池谷祐幸「植木生産業者と植物園への調査によるバラ科希少樹種の生産・栽培の状況」2024)。
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ノイバラに似た植物としてテリハノイバラがあり、ツクシイバラに似た植物としてカイドウバラがある。 |
バラ属 Rosa(薔薇 qiángwēi 屬)の植物については、バラ属を見よ。 |
訓 |
『本草和名』営実に、「和名宇波良乃美」と。
『延喜式』墻薇根に、「ムハラノネ」と。
『倭名類聚抄』薔薇に、営実は「和名無波良乃美」と。
『大和本草』に、「野薔薇(ノイバラ)」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』14営実に、「ムバラノミ和名鈔 ノイバラ以下、苗ノ名 シロイバラ サカヤニンドウ ニンドウイバラ コモチイバラ泉州 シロイゲ長崎。イゲハイバラノコトナリ ヲンナイバラ サクライバラ マガリグイ備前 アヲグイ伯州 カタラ雲州 ヨメグイ濃州 グイ讃州 野薔薇」と。 |
漢名では、バラのうち、ノイバラなど小形の花を多数群れるようにつけるものを薔薇(ショウビ,qiángwēi)と呼び、コウシンバラなど大形の花をつけるものを月季(ゲッキ,yuèjì)と呼んで区別する。
和名には月季にあたる名はなく、両者を混同して、一般にバラを薔薇と書き、ソウビ・ショウビと読む。 |
漢名薔薇(ショウビ,qiángwēi)は、「此の草は蔓 柔らかく、靡いて墻の援けに依りて生ず。故に蘠蘼(ショウビ,qiángmí)と名づく」と(本草綱目)。
なお、薔の字は、ショク・ソク,sè と読めばヤナギタデ。 |
説 |
北海道(西南部)・本州・四国・九州・朝鮮・河南・山東・江蘇に分布。 |
1784年 Thunberg が学界に紹介、1840年中国産の園芸品種がイギリスに入り、1862年日本産のノイバラがフランスに入る。
爾後、蔓性や房ざき性の品種の育成に一役買った。 |
誌 |
中国では、根・葉・花・果実を薬用にする。『全國中草藥匯編 上』pp.371-372
その実を營實(エイジツ,yíngshí)と、偽果を玉營實(ギョクエイジツ,yùyíngshí)と、堅果を營實仁(エイジツジン,yíngshírén,えいじつにん)と呼ぶ。
日本では、生薬エイジツは ノイバラの偽果又は真果である(第十八改正日本薬局方)。 |
今日では、株を園芸品の台木にする。
『大和本草』に、「野薔薇(ノイバラ) ・・・俗ニ金銀花ニ加ヘテ忍冬酒ニツクル、蠻醫ムシテ露ヲトリ金瘡外治ノ藥トス、香氣久シテウセズ」と。
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『万葉集』に、
みち(道)のへ(邊)の うまら(荊)のうれ(末)に は(這)ほまめ(豆)の
からまるきみ(君)を はか(別)れかゆ(行)かむ (20/4352,丈部鳥)
とあるのは、ノイバラであろうという。
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花いばら古郷の路に似たる哉 (蕪村,1716-1783)
路たえて香にせまり咲(さく)いばらかな (同)
愁ひつゝ岡にのぼれば花いばら (同)
しら露や茨の刺(はり)にひとつづゝ (蕪村,1716-1783)
茨老(おい)すゝき痩(やせ)萩おぼつかな (同)
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いばらの実赤くならむとするころを金瓶(かなかめ)村にいまだ起き臥す
(1945,齋藤茂吉『小園』)
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欧米の文藝に登場するノバラは、ロサ・カニナか。 |
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