こうしんばら (庚申茨) 

学名  Rosa chinensis (R. sinica)
日本名  コウシンバラ
科名(日本名)  バラ科
  日本語別名  チョウシュン(長春)、シキザキイバラ
漢名  月季(ゲツキ,yuèjì)
科名(漢名)  薔薇(ショウビ,qiángwēi)科
  漢語別名  月月紅(ゲツゲツコウ,yuèyuèhóng)・月月花、長春(チョウシュン,chángchūn)、鬪雪紅(トウセツコウ,dŏuxuĕhóng)、四季花(シキカ,sìjìhuā)、勝春・勝花・勝紅、玫瑰(バイカイ, méiguī,まいかい)、瘦客(ソウカク,shòukè)
英名  China rose, Bengal rose

2023/06/21 神代植物公園 

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2009/10/29 神代植物公園
2008/11/13 同上

2006/02/11 同上

   野生する原種は var. spontanea(單瓣月季花)。『週刊朝日百科 植物の世界』5-200 湖北・四川・貴州産。半蔓性。花は五月に開き、一季ざきで 四季ざき性はない。花弁は一重、直径5-6cm、色は蕾の時は淡桃色乃至白色、開花するに従い紅色に変化する。しかし花色が桃色で変化しないもの、淡黄色から橙黄色に変化するもの、などがあるという。
 参照:『中尾佐助著作集』IV巻頭図版
 古くから漢土にある栽培品は、四季咲き性で二重乃至八重。
 多くの観賞用品種が作り出され、いずれも花期が長く、江南では 旧暦4月から9月にかけて絶え間なくさく。

和名(通称) 漢名 英名 学名
  紫花月月紅(紫月季花) Slater's Crimson China  'Semperflorens'
グリーンローズ 綠花月月紅 Green rose 'Viridiflora'
      'Major'
白長春     'Major alba'
ヒメバラ 矮小月月紅 Fairy rose 'Minima'
ムタビリス    Butterfly rose  'Mutabilis' 
オールドブラッシュ  月月粉  Parson's Pink China, Old blush  'Old Blush'
      'Pallida'
シングルピンク   Single Pink China 'Single Pink'
 
 バラ属 Rosa(薔薇 qiángwēi 屬)の植物については、バラ属を見よ。
 和名は、庚申の日(60日に一度)ごとに返りざきする(つまり花期が永い、四季ざきである)ことから。
 「和名庚申ばらハ元來かうしんばなナリシナリ、此品四時ニ開花ス故ニ斯ク云フ、然シ庚申ハ隔月ニ在レド此處ハ四季ノ意トス。ちゃうしゅんは長春花ノ漢名ヨリ出デシ名ニシテ年中月ヲ逐テ花サクトテ斯ク云フ」(『牧野日本植物図鑑』)。
 『大和本草』に、「金沙羅 イハラノ花、紅ニシテ單ナリ、美ナリ、又白花アリ、サゝン花イハラト云、紅ナルハ四時花サク」と、また「月季花 イハラノ類ナリ、毎月花開ク、俗ニ長春ト云、春花尤ヨシ、八重ノ紅花ナリ、又月月紅ト云」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』14(1806)月季花に、「長春
通名 チヤウセン長春ノ音ヲ訛ナリ 四季サキノイバラ カウシンバナ イバラボタン播州 クイボタン同上 ボタングイ讃州」と。
 漢名月月紅・月季は、月ごとに花を開く(つまり花期が永い、四季ざきである)ことから。長春は文字通り「長い春」、つまりいつも春のように花開いている意。
 18c.にヨーロッパに入る。英国博物館には1733年に作られた標本があり、1768年 Rosa chinensis の学名がつけられた。

 18c.末の英国には、1792に'Semperflorens'が Slater's Crimson China の名で、1793に'Old Blush'が Parson's Pink China の名で導入され、その後育成された新品種に四季咲き性をもたらした。

 18c.末から19c.初に、次の4系統がイギリスに入った。
   1792 スレーター・クリムソン・チャイナ Slater's Crimson China
         ('Semperflorens')
   1793 パーソンズ・ピンク・チャイナ Parson's Pink China
         ('Old Blush')
   1809 ヒュームス・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ
          Hume's Blush Tea-scented China(R.odorata;
         香水月季・彩暈香水月季)
   1824 パークス・イェロー・ティー・センティッド・チャイナ
         Park's Yellow Tea-scented China(R.odorata 'Ochroleuca')

 そのうち、後の3種は R.chinensis と R. gigantea の雑種。その後の栽培バラ・現代バラにおいて、コウシンバラから四季ざき性が、R.giganteaの系統から剣瓣性が受け継がれた。
 中国では、花期が長く、(寒さが強くなければ)冬にも開花することを愛でられて、北宋時代から広く栽培・観賞された。
 蕾・花・根・葉を薬用にする。
『中薬志Ⅲ』pp.309-311 『全國中草藥匯編 上』p.215 『(修訂) 中葯志』V/195-197  
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「荊棘(いばら)のるひ」に、「長春 こいむらさき、中りん、八重。赤キやうニ見ゆ。四季ともに花さく」と。

   ゆくりなく庚申薔薇
(かうしんばら)の花咲きぬ君を忘れて幾年か経し
     
(北原白秋『桐の花』1913)

  寒き日に濃きくれなゐの薔薇(ばら)を愛(め)でしばらくにして昼寝(い)ぬわれは
     
(1938「寒の華」,齋藤茂吉『寒雲』。これは、コウシンバラか)
 

栽培品   2017/05/04 神代植物公園

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2005/05/29  神代植物公園

2007/06/02 同上

2005/12/15 同上

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