辨 |
ミカン属 Citrus(柑橘 gānjú 屬)については、ミカン属を見よ。 |
訓 |
「和名ハからたちばな卽チ唐橘ノ略セラレシナリ、又きこくハ枳殻ノ字音ナレドモ元來枳殻ハ別ノ品種ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
ただし、今日カラタチバナと呼ぶものはまったくの別種。 |
『本草和名』枳實に、「和名加良多知」と。
『延喜式』枳實に、「カラタチ」と。
『倭名類聚抄』枳椇に「和名加良太知」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、枸橘は「カラタチ ゲズ筑前豊後 ジヤキチ讃州 ジヤキツ附州 ジヤケツグイ備前」と。 |
漢語では、枳殻(キコク,zhĭqiào)は中草藥の一の名、下欄の誌を見よ。 |
説 |
長江流域原産。日本には古く伝えられ、北は東北にまで分布、九州では一部野生化している。 |
誌 |
棘が硬いので、日中両国で生垣にする。
未熟な果実を薬用にし、熟したものはジュース・マーマレードを作る。 |
中国では、カラタチの果実・葉を枸橘(コウキツ,gŏujú,くきつ)と呼び薬用にする。 『全国中草葯匯編』上/589-590
また、カラタチの果実は、様々な地方で枳実(キジツ,zhĭshí)・枳殻(キコク,zhĭqiào)として、また香櫞(コウエン,xiāngyuán)として用いる。
〔枳実・枳殻についてはダイダイの誌を、香櫞についてはブシュカンの誌を見よ。〕 |
『周官・考工記』に、「橘は、淮よりして北は枳と為る」と。橘は Citrus reticulata(ウンシュウミカンの仲間)。 |
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日本では、イバラ(『万葉集』ではウマラ)とは 棘のある灌木を言い、カラタチ・ノイバラなどを指す。『万葉集』に、
枳(からたち)の棘原(うまら)刈り除け倉立てむ 屎(くそ)遠くまれ 櫛造る刀自
(16/3832,長忌寸意吉麿「数種の物を読む歌」)
とある。わざと下品なものを歌いこんでいるが、ほほえましい。とまれかくまれ、ここでは、カラタチは有害無用の茨として歌われている。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「柑(かう)るひ」に、「枳殻(きこく) からたちの事也。靑キヲきじつと云」と。 |
近世には生垣に用いる。いけがきを見よ。 |
うき人を枳殻籬よりくゞらせん (芭蕉,『猿蓑』1691)
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からたちの花が咲いたよ。
白い、白い、花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
青い、青い、針のとげだよ。
からたちは畑の垣根よ。
いつも、いつも、とおる道だよ。
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(北原白秋(1885-1942)詩(「赤い鳥」1924)、山田耕筰(1886-1965)曲(1925))
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