やまのいも (山芋) 

学名  Dioscorea japonica
日本名  ヤマノイモ
科名(日本名)  ヤマノイモ科
  日本語別名  ジネンジョ(自然薯・自然生)
漢名  日本薯蕷(ニホンショヨ,rìbĕn shŭyù)
科名(漢名)  薯蕷(ショヨ,shŭyù)科
  漢語別名  野山藥(ヤサンヤク,yeshanyao)
英名  Japanese yam
辨  ヤマノイモ
   ヤマノイモ科
   ヤマノイモ属

  ヤムイモ
 

雌株  2005/08/11 薬用植物園

雄株  2006/08/13 神代植物公園

2023/11/08 武蔵村山市 
2009/10/29 神代植物公園
 ヤマノイモという言葉が指す内容について、植物学上の用語と農林水産省が用いる用語との間に差異がある。
学名 植物学用語 農林水産省の用語
Dioscorea japonica ヤマノイモ ジネンジョ
Dioscorea polystachya ナガイモ ヤマノイモ
 ここでは前者に従い、D.japonica をヤマノイモと言い、D. polystachya をナガイモという。
 なお、野生するヤマノイモ D.japonica と、栽培するナガイモ D.polystachya の間には、雑種と思われる中間型があって、両者の区別は困難である(『週刊朝日百科 植物の世界』9-262)
 オニドコロ・ヤマノイモ(ジネンジョ)・ナガイモの見分け方は、

  葉:  オニドコロは互生、円心形・三角状心形。長と幅はほぼ同長。
      ヤマノイモは対生、三角状披針形。長は幅の約二倍。
      ナガイモは対生、心状卵形、下部は耳状に張り出す。
  むかご:オニドコロにはつかない。
      ヤマノイモ・ナガイモにはつく。
  花被片:オニドコロは、黄緑色、平開する。
      ヤマノイモ・ナガイモは、白色、平開しない。
  種子: オニドコロは、片側に翼がある。
      ヤマノイモ・ナガイモは、全周に翼がある。
 新しいAPGにおける被子植物の分類ついては、被子植物を見よ。
 ヤマノイモ科 Dioscoreaceae(薯蕷 shŭyù 科)には、主に熱帯・亜熱帯に9-10属 約940種がある。

   ヤマノイモ属 Dioscorea(薯蕷屬) 

   Oxygyne(水玉環屬)
 西アフリカに1種 

   ホシザキシャクジョウ属 Salonia

   タシロイモ属 Tacca(蒟蒻薯屬)


   タヌキノショクダイ属 Thismia(水玉環屬)

   Trichopus(絲柄花屬)
 インド・マレーシアに1種 
  
  ヤマノイモ属 Dioscorea(薯蕷 shŭyù 屬)には、世界の熱帯・亜熱帯に600種以上がある。

  ダイジョ D. alata(參薯・大薯;E.Greater yam, Water yam)
  D. althaeoidea(蜀葵葉薯蕷・穿地龍・穿山龍・龍骨七)
       
 『雲南の植物Ⅰ』263・『中国本草図録』Ⅱ/0925
  ツクシタチドコロ D. asclepiadea
  D. atropurpurea 東南アジア熱帯に自生
  タイセイイモ D. benthamii(大靑薯)
臺灣・福建・兩廣産
  ニガカシュウ D. bulbifera(D.sativa;黃獨 huángdú・黃藥子・零餘子薯蕷・雷公薯・
       綿萆薢・萆薢;E. Potato yam, Aerial yam)
『中国本草図録』Ⅱ/0926
    カシュウイモ f. domestica
  キイロギニアヤム D. cayenensis(D.rotundata;E.Yellow yam, Guinea yam)
       
アフリカ熱帯多雨林地帯で栽培
  D. chingii(山葛薯)
  ソメモノイモ D. cirrhosa(D.matsudae, D.rhipogonoides;薯莨・紅孩兒・朱砂蓮・山羊頭・
       山猪薯・茹榔・金花果・赭魁)
沖縄産。『倭名類聚抄』に為乃止々木と。
       
『全國中草藥匯編 上』p.375,925
  フッケンドコロ D. collettii(叉蕊薯蕷・九子不離母・黃薑・粉萆薢)
       
臺灣・四川・貴州・雲南・インドシナ産 『全国中草葯匯編』下/12-13 
    var. hypoglauca(D.hypoglauca;粉背薯蕷・粉萆薢)
       
臺灣・華東・河南・兩湖・兩廣産 『中国本草図録』Ⅹ/4943
  ヤツデドコロ D. cumingii
  D. decipiens(多毛葉薯蕷)
  D. delavayi(D.kamoonensis, D.henryi;高山薯蕷・穿山龍・毛芋頭薯蕷)
       
 『中国本草図録』Ⅴ/2425 
  D. deltoidea(三角葉薯蕷)
 チベット・ヒマラヤ産 『中国本草図録』Ⅱ/0927
  タカサゴドコロ D. doryphora
  クラスターヤム D. dumetorum
アフリカ原産
  ツルカメソウ D. elephantipes
  トゲイモ(ハリイモ) D. esculenta(D.fasiculata,Oncus esculenta;甘薯;
       E.Lesser yam, Chinese yam) 
東南アジア原産 臺灣・兩廣で栽培
    タマゴイモ var. esculenta
    トゲイモ var. spinosa(有刺甘薯・刺薯蕷)
  D. flabellifolia 東南アジア熱帯に自生
  D. fordii(山薯・土淮山)
浙江・福建・湖南・兩廣産
  D. futschauensis(福州薯蕷・福建棉萆薢・猴骨草)
浙江・福建・湖南・兩廣産
  D. gibbiflora 東南アジア熱帯に自生
  D. glabra(光葉薯蕷・紅山藥・紅孩兒・野紅薯)
  D. globosa 東南アジア熱帯に自生
  タチドコロ D. gracillima(纖細薯蕷)
本州・四国・九州・華東・兩湖産
  D. grata(異塊莖薯莨)
  D. hamiltonii
東南アジア熱帯に自生
  D. hemsleyi(黏山藥)
  ミツバドコロ(ドクヤム) D. hispida(D.daemona;白薯莨・榜薯・野葛薯・山薯・山仆薯・板薯;
       E.Intoxicating yam)
 『中国本草図録』Ⅱ/0928 『全国中草葯匯編』下/215-216
       福建・兩廣・雲南・チベットから東南アジア熱帯に産 芋は有毒、毒消しして救荒食
  イズドコロ D. izuensis(D.collettii var.izuensis)
  ヤマノイモ (ジネンジョ) D. japonica(日本薯蕷・野山藥)
  D. laurifolia 東南アジア熱帯に自生
  ルゾンヤマノイモ D. luzonensis 南西諸島(北大東島)・フィリピン産
       絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020) 
  D. melanophyma(黑芽珠薯蕷・黑彈子)
  D. myriantha
東南アジア熱帯に自生
  ウチワドコロ (コウモリドコロ) D. nipponica(穿龍薯蕷・穿山龍・穿地龍・地龍骨・
       金剛骨・鷄骨頭・野山藥・山常山)
       
北海道・本州(中部以北)・朝鮮・極東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・内蒙古・
       
・華北・西北・安徽・江蘇・浙江・四川産 『中国雑草原色図鑑』354、
       
『全国中草葯匯編』上/571-572 『中草薬現代研究』Ⅱp.227-
    ケナシウチワドコロ f. jamesii
    var. rosthani(柴黃薑)
河南・陝甘・兩湖・四川・貴州産
  D. nummularia
  D. orbiculata 東南アジア熱帯に自生
  D. owenii
東アジア松葉樹林帯に分布
  D. panthaica(黃山藥・薑黃草・黃薑・知母山藥・老虎薑)
        『雲南の植物Ⅱ』268 『中国本草図録』Ⅰ/0431 『全國中草藥匯編 上』p.296
  D. papuana
  D. parviflora(小花薯芋・小花盾葉薯蕷)
 『雲南の植物Ⅱ』268
  アケビドコロ D. pentaphylla(D.codonopsidifolia;五葉薯蕷)
  ライシャイモ D. persimilis(褐苞薯蕷・山藥・土淮山)
       東南アジア熱帯に自生。『中国本草図録』Ⅰ/0432
  D. piscatorum 東南アジア熱帯に自生
  D. poilanei(吊羅薯蕷)
  D. polyclados 東南アジア熱帯に自生
  ナガイモ
 (ヤマノイモ・ヤマイモ) D. polystachya(D.batatas, D.opposita;
       薯蕷 shŭyù・山藥・普通山藥・家山藥・山藥蛋;E.Chinese yam)
  D. prainiana 東南アジア熱帯に自生
  キールンヤマノイモ D. pseudojaponica(D.japonica var.pseudojaponica,
       D.japonica var.kelungensis)
 琉球・臺灣産 
  D. pyrifolia 東南アジア熱帯に自生
  カエデドコロ D. quinquelobata(D.quinqueloba)
  D. rhipogonoides → D. cirrhosa
  シロギニアヤム D. rotundata
  D. sativa → D. bulbifera
  D. septemloba
    コシジドコロ var. platyphylla
    キクバドコロ
 (モミジドコロ) var. septemloba(綿萆薢)
    シマウチワドコロ var. sititoana
  D. subcalva(毛膠薯蕷・粘山藥・粘狗苕・牛尾參) 『中国本草図録』Ⅹ/4944
  ユワンオニドコロ D. tabatae
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
  ヒメドコロ (エドトコロ) D. tenuipes(細柄薯蕷)
  オニドコロ (トコロ) D. tokoro(山萆薢・粉萆薢・萆薢)
  ミツバドコロ D. trifida(E.Cush-cush, Yampi)
南アメリカ北部原産 
  D. yunnanensis(雲南薯蕷)
  アマミタチドコロ D. zentaroana
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
  D. zingiberensis(盾葉薯蕷・黃薑・火藤根)
『全国中草葯匯編』上/633-634
   
  
 和名は、畑に栽培するサトイモ(里芋)に対して山芋といい、野生するので自然生という。
 『本草和名』署蕷に「和名也末都以毛」と、零餘子に「和名奴加古」と。
 『倭名類聚抄』に、山芋は「和名夜萬都以毛」、零餘子は「和名沼加古」と。 
 北海道・本州・四国・九州・琉球・臺灣・朝鮮・淮河以南に分布。
 ヤマノイモ属 Dioscorea の植物は、全て蔓性で根は芋になる。
 その芋はヤム(ヤムイモ;E.Yam;東南アジアで ubi)と呼ばれ、世界各地で食用に供され、野生品が採集されるほか、多くの種が栽培化されている。

 栽培量が多く 作物として重要なものは、次のものである。

  ダイジョ D. alata(參薯・大薯;E.Greater yam, Water yam)
         
芋の用途、形に多くの(数百・数千の)品種がある
  トゲイモ(ハリイモ) D. esculenta(D.fasiculata,Oncus esculenta;甘薯;
         E.Lesser yam, Chinese yam)
幾つかの品種がある
  ニガカシュウ D. bulbifera(D.sativa;黃獨・黃藥子・零餘子薯蕷・雷公薯・
         綿萆薢・萆薢;E. Potato yam, Aerial yam)
         
球状の芋は苦いが、主に大きなむかごを食用にする
    カシュウイモ f. domestica
  アケビドコロ D. pentaphylla(D.codonopsidifolia;五葉薯蕷)
  ナガイモ (ヤマノイモ・ヤマイモ) D. polystachya(D.batatas, D.opposita;
       薯蕷 shŭyù・山藥・普通山藥・家山藥・山藥蛋;E.Chinese yam)
   
 日本には、熱帯性の各種のヤムは伝わらず、温帯性のヤマノイモ(ジネンジョ) Dioscorea japonica の地下の多肉根を晩秋に掘出し、とろろ汁などにして食用にする。
 また、品種ナガイモ(ヤマノイモ) Dioscorea polystachya(D.batatas)を栽培し、食用に供する。
 中国では、多くのヤマノイモ属 Dioscorea(薯蕷 shŭyù 屬)の植物を薬用にする(〇印は正品)。

 山藥(サンヤク,shānyào):『全國中草藥匯編 上』p.109-110,『中薬志Ⅰ』pp.57-59 
  〇ナガイモ(ヤマノイモ) Dioscorea polystachya(D.batatas, D.opposita;普通山藥・薯蕷)
   ヤマノイモ(ジネンジョ) Dioscorea japonica(野山藥・日本薯蕷)

 穿山龍(ガサンリョウ,chuānshānlóng): 『全國中草藥匯編 上』pp.571-572 『(修訂)中葯志 』I/289-293
  〇ウチワドコロ (コウモリドコロ) D. nipponica(穿龍薯蕷・穿山龍・野山藥)
    〇var. rosthornii(柴黃薑)

 萆薢(ヒカイ,bixie):
『全国中草葯匯編』上/753-754
  〇D. collettii var. hypoglauca(粉背薯蕷・粉萆薢)
   D. futschauensis(福州薯蕷・福建綿萆薢・猴骨草)
   タチドコロ D. gracillima(纖細薯蕷)
  〇D. officinalis(綿萆薢) 
         
この学名は確認できなかったが、D. septemloba の異名であろうか
   オニドコロ D. tokoro(山萆薢・粉萆薢・萆薢)
   Smilax ferox(長托菝葜・大菝葜・刺萆薢)
   Smilax mairei(無刺菝葜・滇紅菝葜・小萆薢・紅萆薢)
   Smilax siderophylla(鐡葉菝葜・白萆薢)

 粉萆薢(フンヒカイ,fenbixie):
『(修訂)中葯志 』I/294-300
  〇D. collettii var. hypoglauca(粉背薯蕷・黃萆薢・粉萆薢・萆薢)
   タチドコロ D. gracillima(纖細薯蕷)
   オニドコロ (トコロ) D. tokoro(山萆薢・粉萆薢)
   ヒメドコロ (エドトコロ) D. tenuipes(細柄薯蕷)
   ウチワドコロ (コウモリドコロ) D. nipponica(穿龍薯蕷・野山藥)

 綿萆薢(メンヒカイ,mianbixie):
 『(修訂)中葯志 』I/301-304
  〇キクバドコロ (モミジドコロ) D.septemloba var. septemloba(綿萆薢)
  〇D. futschauensis(福州薯蕷・福建棉草薢・猴骨草)

 黃藥子(コウヤクシ,huángyàozĭ):
 『中薬志』I/475-477 『全国中草葯匯編』上/771-772
  〇ニガカシュウ D. bulbifera(D.sativa;黃獨・黃藥子・零餘子薯蕷・綿萆薢・萆薢)
   チョウセンツルドクダミ Falloppia ciliinervis(Reynoutria ciliinerve,
         Polygonum ciliinerve;毛脈首烏・朱砂七・紅藥子・毛脈蓼)
   Rodgersia aesculifolia(七葉鬼燈檠・老蛇盤)
   

 日本では、生薬サンヤク(山薬)は ヤマノイモ又はナガイモの周皮を除いた根茎(担根体)である(第十八改正日本薬局方)。

   梅若菜まりこの宿のとろゝ汁 
(芭蕉,1644-1694,「餞乙州東武行」。『猿蓑』1691)
   きくの露落て拾へばぬかごかな 
(同)
 

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