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くり (栗) 

学名  Castanea crenata
日本名  クリ
科名(日本名)  ブナ科
  日本語別名  シバグリ(柴栗)、ヤマグリ(山栗)、ニホングリ
漢名  日本栗(ニホンリツ, rìběn lì)
科名(漢名)  殻斗(カクト,qiàodŏu)科
  漢語別名  
英名  Maron, Japanese chestnut
2024/04/11 植物多様性センター 
2024/04/25 同上 
2024/05/25 武蔵村山市岸

2005/06/08   所沢市坂之下
雄花序と両性花序
雄花  2024/06/01 植物多様性センター 

両性花序  2024/05/29 府中市浅間山     左端は雌花、右方に連なるのは雄花 
雌花   2024/06/08 武蔵村山市岸  2024/06/08 植物多様性センター 
2024/06/15 植物多様性センター 

2004/06/27 日野市百草
2008/09/11 入間市宮寺

2005/09/23 昭和公園

2005/10/01 新座市大和田

 クリ属 Castanea(栗 lì 屬)には、北半球の温帯・暖帯に約10-12種がある。

  クリ C. crenata(日本栗)  
日本産
  アメリカグリ C. dentata(美國栗)
北米東部産 
  C. henryi (錐栗・珍珠栗) 
秦嶺以南・五嶺以北産 『中国本草図録』Ⅵ/2535
  チュウゴクグリ
(シナグリ・イタグリ・アマグリ・シナアマグリ) C. mollissima(C.bungeana; 
         ・板栗; E.Chinese chestnut)
         
『雲南の植物Ⅱ』150・『中国本草図録』Ⅲ/1071
  チンカピン C. pumila(矮栗)
USA東部産 
  ヨーロッパグリ(セイヨウグリ) C. sativa(歐洲栗;E.European chestnut)
         
歐洲南東部・小アジア・コーカサス・イラン原産。マロングラッセの原料
  C. seguinii
(茅栗・錐栗・野栗子・毛栗) 漢土(大別山以南・五嶺以北)産 
    
 ブナ科 Fagaceae(殻斗 qiàodŏu 科)については、ブナ科を見よ。
 『本草和名』栗皮、及び『倭名類聚抄』栗に、「和名久利」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』25 栗に、「クリ
和名鈔。皮色黑シ、故ニ名ク」と。
 クリの語源については諸説がある。『日本国語大辞典 第二版』を参照。  
 原種のシバグリは、北海道・本州・四国・九州・朝鮮に分布。栽培されるクリより実が小さい。日本では縄文時代から利用されている。
 
小野蘭山『本草綱目啓蒙』25(1806)栗の条に、「又シバグリアリ、一名サゝグリ和名鈔 ヌカグリ モミヂグリ。木高サ五六尺ニ過ズシテ叢生ス。房彙(イガ)モ小ナリ。ソノ中ニ一顆或ハ二三顆アリ。形小ナレトモ味優レリ。是茅栗ナリ」と。
 奈良・平安時代から実の大きい品種が作られてきた。
 
小野蘭山『本草綱目啓蒙』25(1806)栗の条に、「栗ノ形至テ大ナルヲ丹波グリト云、一名料理グリ オホグリ テゝウチグリ」と。 
 中国では、栗(リツ,lì,チュウゴクグリ)は古くから利用され、栽培された。
 『詩経』国風・鄘風
(ようふう)定之方中には、「定の方(まさ)に中(ちゆう)するとき、楚宮を作る。之を揆(はか)るに日を以てし、楚室を作る。之に榛(しん)(りつ)と、椅(い)(とう)(し)(しつ)を樹(う)え、爰(ここ)に伐(き)りて琴瑟(きんしつ)とす」とあり、栽培されていたことが明らかである。
 『大戴礼』「夏小正」八月に、「栗 零(お)つ。〔零つるとは、降るなり。零ちて後 之を取る。故に剥ぐと言はざるなり。〕」と。
 『礼記』「内則」に、周代の君主の日常の食物の一として栗を記す。
 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻4に「種栗」が載る。
 日本では、縄文時代の遺跡から出土し、食料・建材として用いられていた。
 文献では『古事記』『万葉集』などに出る。『延喜式』には、栗の産地として丹波・但馬などがあげられている。
 『万葉集』に、

   ・・・うり
(瓜)はめば こどもおも(思)ほゆ くり(栗)は食めば ましてしの(偲)ばゆ・・・
      
(4/802,山上憶良)
 「三つ栗の」は、いがの中に実が三つ入っているものの中央の意から、「中」にかかる枕詞。

   いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに 我が行く道の
   香ぐはし 花橘は 上枝
(ほつえ)は 鳥居枯らし 下枝(しずえ)は 人取り枯らし
   三栗の 中つ枝の ほつもり 赤らをとめを 誘
(いざ)ささば 良らしな
       
(『古事記』『日本書紀』、応神天皇の歌)
   三栗のなか(那賀)に向へる曝井(さらしゐ)の絶えず通はむそこに妻もが
      
(9/1745,読人知らず「那賀郡曝井の歌」)
   松反り しひて有れやは 三栗の 中上り来ぬ 麿と云ふやつこ
(奴)
      
(9/1783,柿本人麻呂の妻)
 
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   やまかぜに みねのさゝぐり はらはらと 庭にお
(落)ちし(敷)く 大原の里 (寂然)
 
 戦国時代以来、かちぐり(搗栗・勝栗)を 縁起物として好む。
 
「又かち栗はわらの灰のあくに一夜漬け置きて、明る日日出でて取出し、さらし乾し、肉よくかはきて堅く成りたる時皮をうち去るべし。臼につきて去りたるもよし」(宮崎安貞『農業全書』1697)。
 「かちぐり 搗栗 栗の実を乾燥して臼で搗き、皮と渋皮とを除いたもの。秋に収穫した栗を一週間から二〇日くらい日光で乾燥した上、さらに竹簀底の木箱に入れてホイロにかけ、約二昼夜加熱して臼に取り、軽い杵で殻を搗き割り、フルイにかけて子実を分ける。カチ・カツは搗くの古語で『徴古歳時記』に「搗と勝と訓の同じなれば、勝といふ義にとりてこれを祝節に用ふ」とある通り、古来縁起物として新年その他の祝儀に用いられる」(本山荻舟『飲食事典』)。  

   世の人の見付ぬ花や軒の栗 
(芭蕉,1644-1694)
   秋風のふけども青し栗のいが 
(同)
   行
(ゆく)あきや手をひろげたる栗のいが (同)
 

   栗の花四十路過ぎたる結髪の日暮はいかにさびしかるらむ
      
 (北原白秋『桐の花』1913)

   いがながら栗くれる人の誠かな 
(正岡子規)

   大根も秋菜も漬けぬ村の女
(め)は庭べの土に栗をうづめぬ (島木赤彦『馬鈴薯の花』1913)

   秋晴のひかりとなりて楽しくも実りに入
(い)らむ栗も胡桃(くるみ)
     (1945,齋藤茂吉『小園』) 
   やうやくに病
(やまひ)癒えたるわれは来て栗のいがを焚く寒土(さむつち)のうへ
   あたらしき時代
(ときよ)に老いて生きむとす山に落ちたる栗の如くに
     (1946,齋藤茂吉『白き山』) 
 
 天津甘栗の材料はチュウゴクグリ、マロングラッセの材料はヨーロッパグリ。



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