辨 |
クチナシ属 Gardenia(梔子 zhīzĭ 屬)には、アジア・アフリカの熱帯・亜熱帯に約100-250種がある。
G. angkorensis(匙葉梔子) 海南島・カンボジア産
G. hainanensis(海南梔子) 海南島産
オガサワラクチナシ G. boninensis(G.jasminoides var.boninensis) 小笠原産
クチナシ(コリンクチナシ) G. jasminoides(梔子・黃梔子)
高2m以上。花は一重ざき、3.5-6cm。『中国本草図録』Ⅰ/0343
フクリンクチナシ 'Albomarginata'
ヤエクチナシ 'Flore-pleno'(var.fortuneana,var ovalifolia)
九州・中国に自生 花は大型・八重ざき
フイリクチナシ 'Variegata'
マルバクチナシ 'Maruba'(var.maruba)
マルミノクチナシ f. globicarpa
クチナシ f. grandiflora(var.longisepala, var.fortuneana)『中国本草図録』Ⅰ/0344
高2m。花は6-7cm(ただしコリンクチナシとの間には中間形があり、区別し得ないという)
コクチナシ var. radicans(G.radicans;水梔子) 漢土原産 高30-40cm 枝は横に這う 花は重瓣
G. sootepensis(大黃梔子) 雲南・インドシナ産 『雲南の植物Ⅲ』236
G. stenophylla(狹葉梔子) 安徽・浙江・兩廣・ベトナム産
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アカネ科 Rubiaceae(茜草 qiàncăo 科)については、アカネ科を見よ。 |
訓 |
漢名の梔・栀(シ,zhī)は、果の形を、卮(シ,zhī,さかずき。水・酒を容れる器)の形に擬えて。 |
漢別名 瞻蔔(センフク,zhānbo)は、サンスクリット語 チャンパカ campaka の音写。
チャンパカとは、正しくは モクレン科のキンコウボク(金厚朴) Michelia champaca を指し、インドから東南アジアに分布し、強い香を持つ花をつける木。仏典に見えて漢土には無いこの瞻蔔を、中国の人は 仮にクチナシに当てた。 |
「和名口無しハ其不開裂卽チ口ヲ開ケザル果實ニ基キシ名、せんぷくハ■{艸冠に詹}蔔ニシテ花ヲ斯ク稱スト佛書ニ出ヅ」(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
『本草和名』及び『倭名類聚抄』梔子に、「和名久知奈之」と。
『延喜式』支子に、「クチナシ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、卮子は「クチナシ和名鈔」と。 |
属名 Gardenia は、北アメリカの自然科学者 A.ガーデン(Alexander Garden,1730-1791)を記念して。 |
英名 Cape jasmin は「ケープタウンのジャスミン」。東アジアのものがケープタウン経由でヨーロッパに入ったことからの命名であり、南アフリカに産することは無い。 |
説 |
本州(静岡以西)・四国・九州・琉球・臺灣・華東・山東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・・インドシナ・東ヒマラヤに分布。 |
誌 |
中国では、七香(梅・百合・菊・桂・茉莉・水仙・梔子)の一。花を飾り或いは食用にし、その香を衣服に移し、また茶に入れる。
果実は、黄色(山梔子色)の染料として布を染め、また食用染料として用いる。
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賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5には「種紅藍花・梔子」が載るが、対応すべき本文が無い。 |
中国では、果実・根を梔子(シシ,zhīzĭ)・山梔子(サンシシ,shānzhīzĭ)と呼び薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.403-405 『全國中草藥匯編』上/740-741 『(修訂) 中葯志』III/578-582
日本では、生薬サンシシ(山梔子)は クチナシの果実で、ときには湯通し又は蒸したものである(第十八改正日本薬局方)。11月下旬ころに果実を収穫し、乾燥して保存する。 |
『日本書紀』天武天皇10年(682)の条に、多禰島(たねのしま,鹿児島県種子島)の産物として「支子」を挙げるのが初見。
『延喜式』(10c.)からは、当時すでに栽培利用していたことが知られる。 |
『古今集』に、
山吹の 花色衣 ぬしやたれ とへどこたへず くちなしにして (素性法師)
耳なしの 山のくちなし えてし哉 おもひの色の したぞめにせん (よみ人しらず)
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近世には生垣にも用いる。いけがきを見よ。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「梔子(くちなし) 木通夏中末。花白ク中りんせんやう」と。 |
碁盤の足はクチナシの実を象ったものといい、「助言無用」を示している、という。 |
夏の日はなつかしきかなこころよく梔子の花の汗もちてちる (北原白秋『桐の花』1913)
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欧米には 19世紀にヤエクチナシが入り、その芳香を愛せられて20世紀前半まで大流行した。 |