くちなし (口無)

学名  Gardenia jasminoides
日本名  クチナシ
科名(日本名)  アカネ科
  日本語別名  せんぷく
漢名  梔子花(シシカ,zhīzĭhuā)
科名(漢名)  茜草(センソウ,qiàncăo)科
  漢語別名  梔(シ,zhī)・梔子(シシ,zhīzĭ)、黃梔子(コウシシ,huángzhīizĭ)、山黃枝、黃葉下、水横枝、白蟾花(ハクセンカ,bochanhua)、瞻蔔(センブク,zhānbo)
英名  Gardenia, Cape jasmin
2007/06/20 薬用植物園  「クチナシ」Gardenia jasminoides」と標示
2008/06/19 同上
2004/08/10 同上 2006/11/26 同左

 クチナシ属 Gardenia(梔子 zhīzĭ 屬)には、アジア・アフリカの熱帯・亜熱帯に約100-250種がある。

  G. angkorensis(匙葉梔子)
海南島・カンボジア産
  G. hainanensis(海南梔子)
海南島産
  オガサワラクチナシ G. boninensis(G.jasminoides var.boninensis)
小笠原産
  クチナシ(コリンクチナシ) G. jasminoides(梔子・黃梔子)
         
高2m以上。花は一重ざき、3.5-6cm。『中国本草図録』Ⅰ/0343
    フクリンクチナシ 'Albomarginata'
    ヤエクチナシ 'Flore-pleno'(var.fortuneana,var ovalifolia)
         
九州・中国に自生 花は大型・八重ざき
    フイリクチナシ 'Variegata'
    マルバクチナシ 'Maruba'(var.maruba)
    マルミノクチナシ f. globicarpa
    クチナシ f. grandiflora(var.longisepala, var.fortuneana)
『中国本草図録』Ⅰ/0344
         
高2m。花は6-7cm(ただしコリンクチナシとの間には中間形があり、区別し得ないという)
    コクチナシ var. radicans(G.radicans;水梔子)
 漢土原産 高30-40cm 枝は横に這う 花は重瓣
  G. sootepensis(大黃梔子)
 雲南・インドシナ産 『雲南の植物Ⅲ』236
  G. stenophylla(狹葉梔子)
安徽・浙江・兩廣・ベトナム産
   
 アカネ科 Rubiaceae(茜草 qiàncăo 科)については、アカネ科を見よ。
 漢名の梔・栀(シ,zhī)は、果の形を、卮(シ,zhī,さかずき。水・酒を容れる器)の形に擬えて。   
 漢別名 瞻蔔(センフク,zhānbo)は、サンスクリット語 チャンパカ campaka の音写。
 チャンパカとは、正しくは モクレン科のキンコウボク
(金厚朴) Michelia champaca を指し、インドから東南アジアに分布し、強い香を持つ花をつける木。仏典に見えて漢土には無いこの瞻蔔を、中国の人は 仮にクチナシに当てた。    
 「和名口無しハ其不開裂卽チ口ヲ開ケザル果實ニ基キシ名、せんぷくハ■{艸冠に詹}蔔ニシテ花ヲ斯ク稱スト佛書ニ出ヅ」(『牧野日本植物圖鑑』)。   
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)梔子に、及び源順『倭名類聚抄』(ca.934)梔子に、「和名久知奈之」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32に、卮子は「クチナシ和名鈔」と。
 属名 Gardenia は、北アメリカの自然科学者 A.ガーデン(Alexander Garden,1730-1791)を記念して。
 英名 Cape jasmin は「ケープタウンのジャスミン」。東アジアのものがケープタウン経由でヨーロッパに入ったことからの命名であり、南アフリカに産することは無い。
 本州(静岡以西)・四国・九州・琉球・臺灣・華東・山東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・・インドシナ・東ヒマラヤに分布。
 中国では、七香(梅・百合・菊・桂・茉莉・水仙・梔子)の一。花を飾り或いは食用にし、その香を衣服に移し、また茶に入れる。
 (山梔子,サンシシ)は薬用に供するほか、黄色(山梔子色)の染料として布を染め、また食用染料として用いる。『中薬志Ⅱ』pp.403-405、『全國中草藥匯編』上 pp.740-741 
 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5には「種紅藍花・梔子」が載るが、対応すべき本文が無い。
 日本では、生薬サンシシ(山梔子)は クチナシの果実で、ときには湯通し又は蒸したものである(第十八改正日本薬局方)。11月下旬ころに果実を収穫し、乾燥して保存する。
 『日本書紀』天武天皇10年(682)の条に、多禰島(たねのしま,鹿児島県種子島)の産物として「支子」を挙げるのが初見。
 『延喜式』
(10c.)からは、当時すでに栽培利用していたことが知られる。
 『古今集』に、

   山吹の 花色衣 ぬしやたれ とへどこたへず くちなしにして (素性法師)
   耳なしの 山のくちなし えてし哉 おもひの色の したぞめにせん
(よみ人しらず)
 
 近世には生垣にも用いる。いけがきを見よ。
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「冬木之分」に、「梔子(くちなし) 木通夏中末。花白ク中りんせんやう」と。
 碁盤の足はクチナシの実を象ったものといい、「助言無用」を示している、という。

   夏の日はなつかしきかなこころよく梔子の花の汗もちてちる
(北原白秋『桐の花』1913)
 
 欧米には 19世紀にヤエクチナシが入り、その芳香を愛せられて20世紀前半まで大流行した。
ヤエクチナシ
  2007/06/28 神代植物公園
  2008/07/01 小石川植物園
 八重ざき品には、実がならない。

フイリクチナシ 'Variegata'
   2023/06/20 小石川植物園 

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