さつまいも (薩摩芋) 

学名  Ipomoea batatas
日本名  サツマイモ
科名(日本名)  ヒルガオ科
  日本語別名  カライモ(唐芋)、バンショ(蕃薯)、リュウキュウイモ(琉球芋)、カンショ(甘薯)、アカイモ
漢名  蕃薯(バンショ,fānshŭ)
科名(漢名)  旋花(センカ,xuánhuā)科
  漢語別名  甘藷(カンショ,ganshu)、白藷(ハクショ,baishu)、紅藷(コウショ,hongshu)、紅苕(コウチョウ,hongshao)、地瓜(チカ,digua)、山藥・紅山藥 
英名  Sweet potato
2005/08/12 清瀬市下宿 2008/09/11 入間市宮寺
『中国本草図録』Ⅳ/1815を参照。  

 サツマイモ属 Ipomoea(蕃薯 fānshŭ 屬)には、世界の熱帯・亜熱帯に約500種がある。
      incl. Calonyction, Mina, Pharbitis, Quamoclit

  ヨルガオ I. alba(I.bona-nox, Calonyction aculeatum, C.speciosum;月光花・天茄兒;
         E.Moonflower) 熱帯アメリカ乃至北フロリダ産 『中国本草図録』Ⅷ/3767
  ヨウサイ I. aquatica (I.reptans;蕹菜 wèngcài・空心菜・通菜;E.Water spinach,
         Water convolvulus, Swanp cabbage, Ong tsoi) 熱帯・亜熱帯の水生・半水生植物、
         
漢土でA.D.300頃から蔬菜として用いる。『中国本草図録』Ⅱ/0779
  サツマイモ I. batatas(蕃薯・甘薯・白薯・紅薯・地瓜・紅苕)

  ネコアサガオ I. biflora(I.sinensis;Aniseia sinensis, A.biflora;毛牽牛・心萼薯)
         
臺灣・福建・江西・湖南・兩廣・雲貴産
  モミジヒルガオ I. cairica(五爪金龍) 『中国本草図録』Ⅱ/0780・『中国雑草原色図鑑』168
  I. carnea
    コダチアサガオ subsp. fistulosa(I.fistulosa, I.crassicaulis)
  マルバルコウソウ(ウチワルコウソウ・ルコウアサガオ) I. coccinea(Quamoclit coccinea,
         Q.angulata;圓葉蔦蘿・橙紅蔦蘿)
  イモネノホシアサガオ I. cordatotriloba(I.trichocarpa) USA・メキシコ原産
  コバナミミアサガオ I. eriocarpa(毛果薯)
四川・雲南から旧世界の熱帯・亜熱帯に産
  ヒレガクアサガオ I. fimbriosepala(I.stenanths, Aniseia stenantha;狹葉心萼薯)
         
福建・廣東東産
  アメリカアサガオ I. hederacea(Pharbitis hederacea;牽牛・常春藤牽牛・裂葉牽牛)
         
熱帯アメリカ原産
    マルバアメリカアサガオ var. integriuscula
  ゴヨウアサガオ I. horsfalliae(王妃藤)
ガイアナ産
  ツタノハルコウソウ I. hederifolia
熱帯アメリカ産
  アツバアサガオ I. imperati(I.stolonifera;假厚藤)
         
種子島・琉球・小笠原・臺灣・福建・廣東から世界の熱帯・亜熱帯に産
  ノアサガオ I. indica(Pharbitis indica, P.congesta, I.acuminata;變色牽牛)
  マメアサガオ I. lacunosa(瘤梗蕃薯)

  ソコベニヒルガオ I. littoralis(南沙蕃薯)
         
琉球・臺灣・フィリピン・インドネシア・ニューギニア・濠洲東北部・インド・マダガスカル産 
  ホザキアサガオ I. lobata(Mina lobata, Quamoclit lobata;金魚花)
メキシコ・中南米産
  ヤツデアサガオ I. mauritiana(I.digitata;七爪龍)
世界の熱帯に産
  モミジルコウ
(ハゴロモルコウソウ・チョウセンアサガオ) I.× multifida(Quamoclit×sloteri;
         葵葉蔦蘿・掌葉蔦蘿・槭葉蔦蘿・葵葉蔦蘿)
雑種 I.quamoclit×I.coccinea
  ハリアサガオ I. muricata(I.turbinata, Calonyction muricatum;丁香茄・軟刺月光花)
  アサガオ I. nil(Pharbitis nil;牽牛・裂葉牽牛・大葉牽牛)
『中国雑草原色図鑑』169
  ヒメノアサガオ I. obscura(小心葉薯)
琉球・臺灣・廣東・雲南から旧世界の熱帯に産
  イモネアサガオ I. pandurata 
北米東部産
  グンバイヒルガオ I. pes-caprae(厚藤・二葉紅薯・紅花馬鞍藤・馬蹄草)
         
四国・九州・琉球・臺灣・浙江・福建・兩廣から世界の熱帯・亜熱帯に産 
         『中国本草図録』Ⅰ/0281 『全国中草葯匯編』下/56-57
  キクザアサガオ I. pes-tigridis(虎掌藤)
         
臺灣・兩廣・雲南から旧世界の熱帯・亜熱帯に産 『中国本草図録』Ⅷ/3768
  タマザキアサガオ I. pileata(帽苞薯藤)
兩廣・雲南から旧世界の熱帯・亜熱帯に産
  カワリバアサガオ I. polymorpha(羽葉薯)
琉球・臺灣・海南島・東南アジア・濠洲・熱帯アフリカ産
  ヤラッパ I. purga(Exogonium purga)
メキシコ Jalapa Enriquez市に産
  マルバアサガオ I. purpurea(Pharbitis purpurea;圓葉牽牛・紫牽牛・毛牽牛)
        
 熱帯アメリカ原産 『雲南の植物』181・『中国雑草原色図鑑』170
  ルコウソウ I. quamoclit(Quamoclit pennata;蔦蘿・錦屏封)
熱帯アメリカ産
  I. setosa(Calonyction pavonii;刺毛月光花)
雲南産
  オオフサアサガオ I. sumatrana(海南薯)
兩廣・雲南からインドシナ・マレシア区系区に産
  I. tiliaceae メキシコ~熱帯アメリカ産
  ソライロアサガオ I. tricolor
メキシコ・ユカタン原産
  メキシコアサガオ I. trifida
メキシコ・中米産。サツマイモに最近縁の野生種
  ホシアサガオ I. triloba(三裂葉薯) 
南アメリカ原産 
  キバナハマヒルガオ I. violacea(I.macrantha)
小笠原から世界の熱帯産
  フウリンアサガオ I. wrightii
   
 ヒルガオ科 Convolvulaceae(旋花 xuánhuā 科)については、ヒルガオ科を見よ。
 『大和本草』に、「蕃薯{リウキウイモ,アカイモ}」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』23(1806)甘藷に、「リウキウイモ サツマイモ シマイモ
讃州 トウイモ肥前 カライモ ハチリ倶ニ同上」と。
 種小名は、西インド諸島のタイノ語でサツマイモをバタタ batata と呼んだことから。
 英名の potato は、現地語のバタタ batata がスペイン語に入ってパタタと訛り、更に英語でポテトと変化したもの。英語ではジャガイモも potato と呼ぶようになり、サツマイモを Spanish potato、ジャガイモを Virginia potato と呼んで区別した。
 今日では、サツマイモを sweet potato、ジャガイモを potato, Irish potato, white potato と呼ぶ。
 新大陸のメキシコ附近原産のいも、B.C.3000ころに栽培化されたといわれる。
 1492年コロンブスによってヨーロッパに紹介され、これがスペイン人によってマニラに伝えられ、ポルトガル人によりマレーに伝えられた。
 中国には、一説に1594年福建省にもたらされた。
 中国では、嵆含(263-306)撰と伝える『南方草木状』・漢の楊孚撰『異物志』などに、「甘藷」というイモが載るが、サツマイモではありえず、Dioscorea の一種、就中ダイジョであったであろう、という。
 ただし、華南・西南・ベトナムなどには、
   野甘薯 Ipomoea yunnanensis
   山紅 Ipomoea hungaiensis の一種である山蘿蔔
   野蕃薯 Merremia umbelata
   野甘薯 Ipomoea mammosa
などがあるという
(『中国栽培植物発展史』)
 日本には、慶長2年(1597)宮古島にもたらされ、沖縄全島に普及した。1615年に長崎に、江戸には青木昆陽(1698-1769)が『蕃藷考』(1735)を著して紹介し、そののち救荒作物として関東・西日本に広がった。
 日本では、砂糖がなかった時代、サツマイモは菓子に代る甘味品として愛好された。
 
「蕃薯は其形丸く長し。山芋の形に似たり。味優れてよし。今長崎に多く作るは此蕃薯なり。・・・味山芋よりは甘く、美しき食物なり。菓子にもなり、種々料理して宜し。・・・
  此藷といふ物は本南国の物にて温暖を好みて寒湿を甚だ悪む物なれば、国ごとに作る事はなるまじきと云ふ人あり。尤勝れて寒気をおそるゝ物なれども、夏秋の寒気いまだなき時生長し、根に入りて寒気の来らざる中に取り収るゆへ、おおかた寒き国にても、種子をさへそこねぬさ様におさめおきて、春に至り少しあたゝかになり種ゆる物なれば、他の作り物よりは却つて作りやすき事あるべし」(宮崎安貞『農業全書』1697)。
 簡便な調理法としての焼芋は大いに流行し、幕末の江戸ではどの町にも二、三箇所の焼芋屋があったという。
 川越藩ではサツマイモの栽培が奨励され、多くの芋菓子が工夫された。

   颱風
(たいふう)の遠過ぎゆきしゆふまぐれ甘藷のつるをひでて食ひつも
     
(1945,齋藤茂吉『小園』) 
 



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