さといも (里芋) 

学名  Colocasia esculenta (C.antiquorum var.esculenta)
日本名  サトイモ 
科名(日本名)  サトイモ科
  日本語別名  イモ、タイモ(田芋)、ハタケイモ、イエツイモ(家芋)、タロイモ、シロミグサ、ツユトリグサ
漢名  芋(ウ,yù)、芋頭(ウトウ,yùtóu)
科名(漢名)  天南星(テンナンセイ,tiānnánxīng)科
  漢語別名  芋艿(ウジョウ,yùnăi)、毛芋(モウウ,máoyù)、蹲鴟(ソンシ,cúnchī)、莒(キョ,jŭ)
英名  Taro, Old cocoyam
辨  サトイモ科
   サトイモ属

  タロイモ
 

2005/07/11   三芳町竹間沢 2005/08/12  清瀬市下宿



 サトイモ科 Araceae(天南星 tiānnánxīng 科)には、主に世界の熱帯・亜熱帯に約115属 約3000種がある。

   Aglaonema(廣東萬年靑屬)
漢土南部・インドシナ・マレシア・ニューギニアに約25種
     シモフリチク A. brevispathum(A.hospitum;短苞粗肋草)
     シラフイモ A. commutatum(斜紋粗肋草)
     A. costatum(心葉亮絲草・心葉粗肋草・爪哇萬年靑)
       ヒトスジグサ 'Immaculatum'
       セスジグサ 'Maculatum'
     A. modestum(廣東萬年靑・大葉萬年靑)
『全国中草葯匯編』下/14-15
     シラフチク A. pictum(斑葉亮絲草・斑葉粗肋草)
     アサヒリョクチク A. robeleynii
     マルバセスジグサ A. rotundum(圓葉亮絲草)
     リョクチクイモ A. simplex(越南萬年靑)
     ハクチク A. treubii

   クワズイモ属 Alocasia(海芋屬)

   コンニャク属 Amorphophallus(魔芋屬)

   Anadendrum(上樹南星屬・杯被藤屬)
 中南米に800種以上 

   ベニウチワ属 Anthurium(花燭屬)

   テンナンショウ属 Arisaema(天南星屬)

   Arum(疆南星屬)
広く歐亞・北アフリカ・アゾレス諸島に26種

   ニシキイモ属 Caladium(五彩芋屬)
 熱帯アメリカに約12種 
     C. bicolor(五彩芋・花葉芋)
アマゾン流域産 『全国中草葯匯編』下/268 

   ヒメカイウ属 Calla(水芋屬)

   サトイモ属 Colocasia(芋屬)

   Cryptocoryne(隱棒花屬)
 中国(西南)・マレシア・インドに約50種 

   Cyrtosperma(曲籽芋屬)
東南アジア・太平洋諸島に約12種
     キルトスペルマ C. edule
     C. lasioides(曲籽芋)
     C. merkusii(C.chamissonis)

   カスリソウ属 Dieffenbachia(黛粉芋屬・花葉萬年靑屬)
 熱帯アメリカに約30種 

   ハブカズラ属 Epipremnum(麒麟葉屬)
 中国(南部)・マレシア・インドに約20種 
     ハブカズラ E. pinnatum(Rhaphidophora pinnata;麒麟葉)
         
琉球・臺灣・兩廣・雲南・マレシア・インド・フィリピン・太平洋諸島に産 

   Gonatanthus(曲苞芋屬)
 マレシアに2種 

   ハルユキソウ属 Homalomena(千年健屬)
 印度・マレシア・メラネシア・熱帯アメリカに約110種 
     セントンイモ H. kelungensis(臺灣千年健)
臺灣産
     H. occulta(H.tonkinensis;千年健・一包針) 兩廣・雲南産
         『中薬志Ⅰ』pp.64-66 『全国中草葯匯編』下/90-91
     フィリピンセントンイモ H. philippinensis
     アカジクセントンイモ H. rubescens

   ヒメウキクサ属 Landoltia(斑萍屬)

   Lasia(刺芋屬) 熱帯アジアに2種 
     L. spinosa(刺芋・勒芋・刺茨姑)
臺灣・兩廣・雲南・ヒマラヤ・インドシナ産
         
『全国中草葯匯編』下/368-369

   アオウキクサ属 Lemna(浮萍屬)

   ミズバショウ属 Lysichiton(沼芋屬)

   ホウライショウ属 Monstera(龜背竹屬)

   Orontium(水金杖屬) 北米東岸に1種

   ビロードカズラ属 Philodendron(喜林芋屬)

   ハンゲ属 Pinellia(半夏屬)

   ボタンウキクサ属 Pistia(大薸屬)

   オオキノボリカズラ属 Pothoidium(假石柑屬)
臺灣・フィリピン・東マレシアに1種 

   ユズノハカズラ属 Pothos(石柑屬)
 約80種 
     ユズノハカズラ P. chinensis(P.cathcartii;石柑子・石蒲藤)

         
大東島・臺灣・兩廣・湖北・西南・ベトナム・ラオス・タイ産 『全国中草葯匯編』下/182-183 
         絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)

   タコイモ属 Remusatia(岩芋屬・零餘芋屬)
アフリカ・アジア・太平洋諸島の熱帯に4種

   ヒメハブカズラ属 Rhaphidophora(崖角藤屬)
アフリカ・アジアの熱帯・亜熱帯に約120種 
     R. hongkongensis(獅子尾・巖角藤・水底龍)
『全国中草葯匯編』下/129
         
福建・兩廣・貴州・雲南・インドシナ・アッサム産
     サキシマハブカズラ R. korthalsii(顯脈崖角藤)
 琉球・フィリピン・東南アジア産 
         絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
     ヒメハブカズラ R.liukiuensis(針房藤) 琉球・臺灣・フィリピン産 
         絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)

   ヘビイモ属 Sauromatum(合管蓮屬)
熱帯アフリカ・アラビア・印度・中国南部に2種 
     ヘビイモ S. venosum(Typhonium venosum;斑龍芋)

   コウトウイモ属 Schismatoglottis(落檐屬)
東南アジア・熱帯アメリカに約100種 
     コウトウイモ S. calyptrata(S.kotoensis, Colocasia kotoensis;
         廣西落檐・紅頭芋・蘭嶼芋)
臺灣産

   Scindapsus(藤芋屬)
 熱帯アジア・太平洋諸島に約30種 
     S. officinalis(藥用藤芋・靑竹標)
雲南産 『全国中草葯匯編』下/349

   ササウチワ属 Spathiphyllum(白鶴芋屬)
東マレシア・太平洋諸島・熱帯アメリカに41種 

   ウキクサ属 Spirodela(紫萍屬)

   Steudnera(泉七屬・香芋屬)
雲南・ベトナム・ビルマ・インドに8-9種 

   ザゼンソウ属 Symplocarpus(臭菘屬)

   アオミバカズラ属 Syngonium(合果芋屬)
 中南米に35種

   リュウキュウハンゲ属 Typhonium(犂頭尖屬)
東南アジアを中心に約40-50種
     リュウキュウハンゲ T. blumei(犂頭尖)
        鹿児島・琉球・小笠原・臺灣・福建・廣東・東南アジア・インド産
        
『週刊朝日百科 植物の世界』11-84 『全國中草藥匯編』上/118,230,793
     T. flagelliforme(鞭檐犂頭尖・戟葉犂頭尖・水半夏)
『全国中草葯匯編』下/126-127
        
兩廣・雲南・熱帯&亜熱帯アジア・濠洲東北部産
     T. giganteum(獨角蓮・禹白附・白附子)
河北・山東・山西・陝甘・四川・貴州・チベット産
        
『中薬志Ⅰ』pp.173-177 『全国中草葯匯編』上/628-629
     キンジコ T. roxburgii(金慈姑)
雲南産
     T. trilobatum(馬蹄犂頭尖)
兩廣・雲南・インドシナ・インド・マラヤ産

   ミジンコウキクサ属 Wolffia(無根萍屬)
     ミジンコウキクサ W. globosa(無根萍・微萍) 日本では本州関東以西・九州・琉球に分布 

   センニンイモ属 Xanthosoma(黃肉芋屬) 中南米に約57種
     X. brasiliense
葉を食用
     X. sagittifolium(E.Yautia)
 イモを食用、今はフィリピンでも栽培

   ソテツバカイウ属 Zamioculcas(雪鐵芋屬)
アフリカ中南部に1種 

   オランダカイウ属 Zantedeschia(馬蹄蓮屬)
アフリカに8種 
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 サトイモ属 Colocasia(芋 yù 屬)には、東アジア南部・インドシナ・マレー・ヒマラヤに8種がある。
  ヤマサトイモ C. antiquorum(C.esculenta var.antiquorum;野芋・鐵芋)
        
江南・インド・マレシア・メラネシア産 『中国本草図録』Ⅹ/4919
    トウノイモ var. toonoimo(C.toonoimo;紫芋)
 中国各地で栽培。『中国本草図録』Ⅶ/3406
  サトイモ C. esculenta(;E.Taro)
    'Black Magic'
観葉用の品種
    エグイモ 'Eguimo'
    ズイキ 'Rosea'
    ミズイモ var. aquatilis(C.konishii, C.formosana, C.antiquorum var.aquatilis;
        臺灣靑芋・紅芋)
 臺灣産
  C. fallax(假芋)
 雲南~ヒマラヤ東部産 
  ハスイモ C. gigantea(Leucocasia gigantea;大野芋) 福建・江西・兩廣・雲南・ビルマ・マレシア産
        『中国本草図録』Ⅱ/0903・『週刊朝日百科 植物の世界』11-90
   


 サトイモ(里芋)・タイモ(田芋)は、ヤマイモ(山芋)の対。
 漢名の芋(ウ,yù)は、大きなサトイモを見て、人々が「おおっ、ううっ」と驚いたことから、という。
 莒(キョ,jŭ)は、イモが連なっている様子を表す。
 蹲鴟(ソンシ,cúnchī)とは うずくまったフクロウ、芋の形が似ていることから。
 『本草和名』芋に、「和名以倍都以毛」と。
 『倭名類聚抄』芋に、「和名以毛」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』芋に、「イヱツイモ
和名鈔 シロミグサ古歌 ツユトリグサ同上 イモ」と。
 サトイモの葉の柄(俗に茎と考え「芋茎」と書く)をズイキと言うが、〔ズイキということは無窓国師(疎石)の歌に「いもの葉に置く白露のたまらぬは、これや随喜の涙なるらん」とあるのから始まったという〕(本山荻舟『飲食事典』)。 
 タロイモのタロ taro は、マオリ語などから英語に入ったもの。

 東南アジアでは、サトイモ科の次のような植物の根茎をタロイモ taro と呼び、古くから食用にする。(〇印は農耕上重要なもの)。

  〇ヤマサトイモ Colocasia antiquorum(C.esculenta var.antiquorum;野芋・鐵芋)
   ハスイモ Colocasia gigantea(Leucocasia gigantea;大野芋)
  〇キルトスペルマ Cyrtosperma edule
  〇Cyrtosperma merkusii(C.chamissonis)
   Cyrtosperma lasioides
  〇
インドクワズイモ Alocasia macrorrhizos(熱亞海芋)
   シマクワズイモ Alocasia cucullata(尖尾草・尖尾芋)
   Alocasia denudata
   Alocasia indica
   Lasia spinosa(刺芋・勒芋・刺茨姑) 
   キンジコ Typhonium roxburgii(金慈姑)
   Typhonium trilobatum(馬蹄犂頭尖)
   コウトウイモ Schismatoglottis calyptrata(Colocasia kotoensis;廣西落檐・蘭嶼芋)
   Schismatoglottis wallichii
   Homalomena spp.

 なお、タロイモ類の中で最も低温に耐え、温帯にまで北上したものはサトイモのみ。   
 サトイモ Colocasia esculenta は、インド東部~マレシア原産。
 非常に古く中国・日本・太平洋諸島などに伝えられた。西方に向かっては、A.D.500年ころインドネシア人によりマダガスカル島に入り、やがて西アフリカに達した。ローマ時代には南ヨーロッパへ入る。コロンブス以後、西インド諸島に入る。
 今日では、広く世界の熱帯・亜熱帯で栽培している。
 日本には、南方民族の移住とともに(稲作以前に)もたらされた最も古いいも

 中国では、賈思勰『斉民要術』(530-550)巻2に、「種芋」の章がある。
 日本では、サツマイモジャガイモが渡来する以前には、芋といえばサトイモを指し、主要な食料であった。また葉柄をずいき・いもがらと呼び、生や乾燥したものを蔬菜として食用にする。
 
 『万葉集』に、

     蓮葉
(はちすは)は是くこそ在るもの意吉麿が家にある物はうも(芋)の葉に有るらし
      
(16/3826,長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)「荷葉を詠む歌」)
   

   種芋や花のさかりに売ありく 
(芭蕉,1644-1694)
   いも植て門
(かど)は葎(むぐら)のわか葉哉 (同)
   いものはや月待
(まつ)さとの焼(やき)ばたけ (同)
   月に名を包みかねてやいもの神 
(同)

  芋洗ふ女西行ならば歌よまむ
    
(伊勢の「西行谷の麓に流あり。をんなどもの芋あらふを見るに」、芭蕉『野ざらし紀行』1684)

   庵の月主をとへば芋掘に 
(蕪村,1716-1783)
   五六升芋煮る坊の月見かな 
(同)
 
 諺に「芋の煮えたもご存じ無い」とは、そんな簡単なことも知らない世間知らず、の意(平野雅章『食物ことわざ事典』1978)。

黒葉サトイモ 'Black Magic'   2008/07/21 神代植物公園

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