さくらそう (桜草) 

学名  Primula sieboldii
日本名  サクラソウ
科名(日本名)  サクラソウ科
  日本語別名  
漢名  櫻草(オウソウ,yingcao)
科名(漢名)  報春花(ホウシュンカ,baochunhua)科
  漢語別名  
英名  Siebild's primrose, Peter's key
2007/03/21 田島が原
2006/04/13 田島が原
自然のままでも、花の色や形に変異が見られる。
2008/04/05 田島が原
 六瓣品  紅白のしぼりのもの
 サクラソウ科 Primulaceae(報春花科)には、約23属1000種がある。
   ルリハコベ属 Anagallis(瑠璃繫縷屬)
   トチナイソウ属 Androsace(點地梅屬)
     A. alashanica(阿拉善點地梅)
     A. axillaris(腋花點地梅)
     A. brachystegia(玉門點地梅)
     A. bulleyana
『雲南の植物』158
     トチナイソウ A. chamaejasme ssp. lehmanniana
     A. dissecta(裂葉點地梅)
     A. erecta(直莖點地梅)
     サカコザクラ A. filiformis(東北點地梅)
 ユーラシアに分布、青森県に帰化
     A. gmelinii(高山點地梅)
     A. henryi(蓮葉點地梅)
     A. incana(白花點地梅)
     A. integra(匙葉點地梅)
     A. mariae var. tibetica(西藏點地梅)
     A. mucronifolia
ヒマラヤ・パキスタンなどに産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-14
     A. rigida(硬枝點地梅)『雲南の植物』158
     キタコザクラ A. septentrionali(雪山點地梅)
 ユーラシア・北アメリカに分布
     A. spinulifera(刺葉點地梅) 『雲南の植物』159
     リュウキュウコザクラ A. umbellata(點地梅)
 『週刊朝日百科 植物の世界』6-13
   Bryocarpum
     B. himalaicum
ヒマラヤ東部産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-2
   サクラソウモドキ属 Cortusa(假報春屬)
     C. matthioli
朝鮮・中国乃至ヨーロッパに分布。
       var. pekinensis(假報春)
       サクラソウモドキ var. yezoensis 
北海道・樺太に分布。『週刊朝日百科 植物の世界』6-13
   シクラメン属 Cyclamen(仙客來屬)
   ウミミドリ属 Glaux(海乳草屬)
 1属1種
     G. maritima(海乳草)
 種としては、広く北半球に分布
       var. maritma
ヨーロッパに分布
       ウミミドリ var. obtusifolia
 東アジア・北アメリカに分布
   オカトラノオ属 Lysimachia(排草(珍珠菜)屬)
   Omphalogramma(獨花報春屬)
     O. vinciflora(毛獨花報春)
 『週刊朝日百科 植物の世界』6-2・『雲南の植物』159
   Pomatosace(羽葉點地梅屬)
     P. filicula(羽葉點地梅)
   サクラソウ属 Primula(報春花屬)
   ハイハマボッス属 Samolus(水繫縷屬) 
約9種
     ハイハマボッス
(ヤチハコベ) S. parviflorus(S.valerandii ssp.parviflorus)
     S. valerandi(水繫縷)
   ホザキザクラ属 Stimpsonia(假婆婆納屬) 1属1種
     ホザキザクラ S. chamaedryoides(假婆婆納)
 日本(屋久島・奄美・沖縄)・臺灣・中国(南部)に分布。『週刊朝日百科 植物の世界』6-14
   ツマトリソウ属 Trientalis(七葉蓮屬) 
2種のみ 
 サクラソウ属 Primula(報春花屬)の植物としては、日本に14種、中国に200種以上、世界中では500-600種あるという。
 日本産のものに、次のようなものがある。
  エゾコザクラ P. cuneifolia
     ハクサンコザクラ
(ナンキンコザクラ) var. hakusanensis
     ミチノクコザクラ var. heterodonta
  ヒダカイワザクラ P. hidakana
     カムイコザクラ var. kamuiana
  クリンソウ P. japonica (E.Japanese primrose)
  オオサクラソウ P. jesoana
     エゾオオサクラソウ var. pubescens
  カッコソウ P. kisoana
     シコクカッコソウ var. shikokiana
  ヒメコザクラ P. macrocarpa
  ユキワリソウ P. modesta (長白山報春花)
『週刊朝日百科 植物の世界』6-6
     ユキワリコザクラ var. fauriei
     レブンコザクラ var. matsumurae
  ヒナザクラ P. nipponica
  コイワザクラ P. reinii
     クモイコザクラ var. kitadakensis
     ミョウギコザクラ var. myogiensis
     チチブイワザクラ var. rhodotricha
  サクラソウ P. sieboldii (櫻草;E.Siebild's primrose, Peter's key)
  ソラチコザクラ P. sorachiana
  テシオコザクラ P. takedana
  イワザクラ P. tosaensis (巖櫻)
     シナノコザクラ var. brachycarpa
  ユウバリコザクラ P. yuparensis 
 『中国本草図録』『雲南の植物』『全国中草薬匯編』『中薬大辞典』などに掲載する、中国のサクラソウ属の植物に、次のものがある。
   P. amethystina(紫花報春)
     var. brevifolia
『雲南の植物』160
   P. argutidens(尖齒報春) 
『雲南の植物Ⅰ』230
   P. bathangensis(巴塘報春)
 『雲南の植物Ⅱ』225・『中国本草図録』Ⅷ/3724
   P. bulleyana(橘紅報春)
『雲南の植物Ⅰ』231・『雲南の植物』161
   P. calliantha(雪山厚葉報春)
『雲南の植物』162
   ヒマラヤサクラソウ P. capitata シッキム・ブータン・チベット原産
『原色高山植物大図鑑』239
     var. sphaerocephala(俯垂球花報春)
『雲南の植物』163
     ssp. mooreana
   P. chionantha(玉葶報春)
『雲南の植物Ⅰ』231・『雲南の植物』163
   P. cernua(垂花穗状報春・斜倒報春花・米傘花・野洋參)
『雲南の植物』163
   P. cockburniana
   P. concinna
   P. cortusoides
シベリア・中央アジアに分布
   P. crocifolia
四川産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-9
   タマザキサクラソウ P. denticulata
『原色高山植物大図鑑』239・『週刊朝日百科 植物の世界』6-7
   P. efarinosa(無粉報春)
   P. epilosa(鄂西粗葉報春花・川南報春・豆葉參)
 『中国本草図録』Ⅶ/3286
   P. faberi(峨眉報春)
   P. farinosa(粉報春)
 『中国本草図録』Ⅳ/1788
   P. fistulosa(箭報春)
 『中国本草図録』Ⅸ/4289
   P. forbesii(小報春)
『雲南の植物Ⅱ』225・『雲南の植物』164
   P. forrestii(松打七・黄葵報春)
『雲南の植物Ⅰ』232・『雲南の植物』165
   P. gemmifera(苞芽報春)
『雲南の植物』164
   P. incisa(羽葉報春) 
『雲南の植物Ⅰ』232
   P. littoniana
中国原産
   P. macrophylla 
ヒマラヤ産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-8
   P. malvacea(葵葉報春)
『雲南の植物』165
   ケショウザクラ(オトメザクラ) P. malacoides(報春花)
中国(雲南・貴州・四川)原産。『雲南の植物』166
   P. maximowiczii (段報春・臙脂花) 中国(河北・山西・陝西・甘肅・靑海・内蒙古)に分布。『中国本草図録』Ⅸ/4290
   P. muscarioides(圓錐穗花報春) 
『雲南の植物Ⅰ』233
   P. nutans(垂花報春)
 『中国本草図録』Ⅵ/2774
   トキワザクラ(シキザキサクラソウ) P. obconica(四季櫻草・四季報春・鄂報春・仙鶴蓮;E.Top primrose) 中国(湖北・四川・西藏南部・雲南・貴州)・ヒマラヤに分布。1882ヨーロッパに入る。
   P. obliqua
 『週刊朝日百科 植物の世界』6-8
   P. ovalifolia(卵葉報春) 『中国本草図録』Ⅶ/3287
   P. poissonii(海仙報春)
『雲南の植物Ⅰ』232・『雲南の植物』167・『中国本草図録』Ⅷ/3725
   P. polyneura(多脈報春)
『雲南の植物Ⅰ』233・『雲南の植物』168
   P. prolifera
   P. pseudodenticulata(海仙花)
『雲南の植物Ⅱ』225
     var. polyphylla(大報春花・水白菜)
     var. monticola(中甸海水仙) 
『雲南の植物Ⅰ』233
   P. pulchella(麗花報春)
『雲南の植物』169
   P. pulverulenta
中国産
   P. rupiocola(黄粉缺裂報春)
『雲南の植物』168
   P. saxatilis 
朝鮮・中国(東北)に分布
   P. secundiflora(偏花報春)
『雲南の植物Ⅰ』234・『雲南の植物』170・『中国本草図録』Ⅷ/3726
   P. sibirica(天山報春) 『中国本草図録』Ⅸ/4291
   サクラソウ P. sieboldii(P.patens;櫻草・翠藍草・翠藍報春・翠南報春)
 『中国本草図録』Ⅳ/1789
   P. sikkimensis(錫金報春・黄花報春花)
『雲南の植物Ⅰ』234・『雲南の植物』171・『中国本草図録』Ⅷ/3727・『原色高山植物大図鑑』245
   チュウカザクラ(カンザクラ) P. sinensis (藏報春;E.Chinese primrose)中国(湖北・四川・甘肅・陝西)に分布。古くから報春花として栽培してきたもの。
   P. sinodenticulata(滇北球花報春)
『雲南の植物』172
   P. sinopurpurea(紫花雪山報春・華紫報春花・三月花)
『雲南の植物Ⅰ』234・『雲南の植物』173・『中国本草図録』Ⅷ/3728
   P. sonchifolia(苣葉報春・苦苣葉報春)
『雲南の植物Ⅰ』236・『雲南の植物』173・『中国本草図録』Ⅶ/3288
     var. albiflora(白花苣葉報春) 
『雲南の植物Ⅰ』237
   P. stuartii
『週刊朝日百科 植物の世界』6-7
   P. szechuanica(四川報春花)
   P. vialii(高穗花報春) 四川・雲南産。『中国本草図録』Ⅷ/3729
   P. vittata(帶葉報春・藏報春花)
   P. wollastonii
ヒマラヤ産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-7
   P. zambalensis
『雲南の植物』173 
 そのほか、日本・中国で栽培しているものに 次のようなもの或はその改良品・交雑品がある。
  アツバサクラソウ P. auricula
 ヨーロッパ産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-10
  カサザキサクラソウ P. denticulata(E.Himalayan primrose)
 ヒマラヤ原産
    var. cachemiriana
  P. elatior
東ヨーロッパに多い
  ユキワリザクラ P. farinosa
イギリス北部・ピレネー・アルプス・西アジア産
  P. frondosa
バルカン半島産
  P. hirsuta
ピレネー・アルプス産
  ジュリアン P. juliae  
コーカサス原産
  ミヤマサクラソウ P. juliana
P.juliaeとP.vulgarisの交配種か
  P. marginata
  P. minima
アルプス東部・バルカン産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-10
  セイヨウサクラソウ P. officinalis 
  クリンザクラ P. polyantha  (E.Polyanthus primrose)
 園芸的に育成した交雑種
  P. pubescens
 ヨーロッパアルプスに自生する自然交雑種
  P. rosea
北西ヒラヤ原産
  P. veris 地中海沿岸地方・南西アジア産。『週刊朝日百科 植物の世界』6-11
  イチゲザクラ P. vulgaris(P. acaulis;E.Primrose)
ヨーロッパの山野に自生。『週刊朝日百科 植物の世界』6-10 
 和名は、花の形と色が サクラに似ることから、一説に春に花さくことから。
 学名の属名 Primula は、「最初の primus」の縮小形、春に他の花に先んじてさくことから。英名 primrose も、primerole「最初にさく花」の転訛。
 日本(四国を除く)・朝鮮・中国(東北地方)・シベリア東部の湿地に自生。
 日本全国では絶滅危惧Ⅱ類(VU)、東京では絶滅、埼玉県では絶滅危惧ⅠA類(CR)。
 日本では園芸化している。
 『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 春之部」に、「桜草 中末。花形桜ニ毛頭もたかはす。色むらさきと雪白の二種有」と。
 「河川敷の群落では、春にヨシオギが成長する前に、短い生活期間をもつヤブエンゴサクヒキノカサ・エキサイゼリ・チョウジタデなどが成長し、ヨシと季節的にすみ分けている。荒川沿岸の田島が原のサクラソウも、かつてはこのような環境にあった。」(沼田真・岩瀬徹『図説 日本の植生』1975)
 「荒川沿岸に於けるサクラサウの大群落は、武藏野が天下に誇るべき植物美觀の最優なものであらう。但しその多くは昔の語り草であつて、濫獲と物質文明の壓迫によつて漸次その影を潛め、その跡を絶つに至つたのは誠に歎かはしい次第である。荒川のサクラサウの歴史は遠く徳川初期に始まり、江戸時代には栽培に見物に非常な流行を來したことが種々の文献に現はれてゐるが、戸田の原、尾久、千住、染井などの地名が遊覽地の中に舉げてあるのを見れば全く隔世の感がある。尤も戸田の原や、其の下に續く浮間ケ原などは明治の中頃まで盛んに都の士女の郊外散策の好適地として、一家團欒の行樂地として利用され、大正の中期まで其の名殘を留めて居たが、現在は戸田も浮間も兩方とも大東京市の工場地として全く其の面目を一新し、・・・現在では、もつと上流の地に三四ケ所サクラサウの昔の面影を殘して居る所がある。其の一つは浦和から志木に通ずる道路の南側にある田島ケ原で、年々サクラサウの自生地が破壞されて行くので其の保存の爲大正九年七月、内務省から天然記念物に指定されて嚴密にコンクリートの柵で取り廻らしてある。その上流にある福岡近くの錦ケ原、又その少し上流に當る芝地などがそれで、これらの地方は荒川の氾濫區域に當り、年々春秋の候に泥水を蒙むる爲、地味が肥え、植物の發生に適して固有の原野が發達し、特にこの原野を好んでサクラサウが一面に發生して四月下旬から五月上旬にかけてはまるで紅毛氈を敷いた樣な花盛り、これと混じてノウルシが多い。ノウルシは白い汁の出る毒草であるが、この草の小さい花部を取り卷く數枚の葉は鮮かな黄色を呈し、これ亦大きな群落を作つて萌黄色の毛氈を廣げた樣で、紅色のサクラサウの花と相對して、自然の花園の美觀は全く筆舌に盡し難い。その外にサクラサウ原野の固有の植物には藍紫色の花を開くチャウジサウ、黄色の花のヒキノカサ、淡紅色の花のジロバウエンゴサク、白地に淡紫の絞りのあるシロバナスミレ、赤褐色の花のスイバ、それから前に述べたアマナなど、又未だ花には早いがアマドコロ、レンリサウ、コバギバウシ、ムサシノギバウシ、ノカラマツなど其の他數々の草が生ひ茂り、夏から秋にかけてはヲギヨシの樣な背の高い草が伸び出して、春の美觀とは全く別の趣を呈するが、季節の移り變りと共に植物景觀の變化を觀察するには實に適當な場所である。サクラサウは又内間木、新倉あたりのクロチクの藪の中にもひよろ長くなつて二株三株宛散見することもある。
 荒川流域の地を離れると、サクラサウ並にその原野特有の植物はもう武藏野では絶對に見られぬ。」
(本田正次「武蔵野の野草」。田村剛・本田正次編『武蔵野』所収。1941,科学主義工業社) 
 「・・・現在では、浮間ケ原一帯には一株のサクラソウも野生していない。戦後の開発で失われた一面もあるが、大正の大震災後、急速に失われてしまったそうだ。震災で失われた家屋再建の為、壁土の需要が激増し、壁土として良質の浮間ケ原の土が大量に掘り取られ、それとともにサクラソウが激減してしまったという。」(柳宗民『日本の花』)。
 荒川河川敷田島が原のさくらそう公園は、今日に残るサクラソウの自生地であり、国の特別天然記念物(1920指定)
 この野生のサクラソウを採取して栽培することは、江戸初期から始まった。徳川家康が鷹狩の折にこの花を見て持ち帰って栽培し、家光は品評会を催したと言う。江戸時代には、田島が原のほか、尾久の原・浮間が原・戸田が原などがサクラソウで有名で、花見の客で賑わったと言う。
 江戸時代の中期から、さまざまな花の形や色の変異が作り出され、観賞されてきたが、現在では観賞用の品種は300種の多きに上る。

 埼玉県の花、さいたま市の花。

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