辨 |
ヤブコウジ属 Ardisia(紫金牛 zĭjīnniú 屬)には、世界の熱帯・亜熱帯に約500-700種がある。
A. bicolor (紫背紫金牛・紅涼傘・鐵涼傘・葉下紅)『中国本草図録』Ⅶ/3277
トンロクヤブコウジ A. brevicaulis (九管血・矮莖硃砂根・血黨・活血胎)
『中国本草図録』Ⅶ/3278 臺灣・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・ベトナム産
A. brunnescens(凹脈紫金牛) 兩廣・ベトナム産 『中国本草図録』Ⅱ/0750
A. caudata (峨眉紫金牛・尾葉紫金牛) 兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅶ/3279
シナヤブコウジ A. chinensis(小紫金牛・華紫金牛・小獅子) 『全国中草葯匯編』上/839
琉球・臺灣・福建・浙江・江西・兩廣産 『中国本草図録』Ⅹ/4775
A. conspersa(散花紫金牛) 廣西・雲南産 『雲南の植物Ⅲ』217
A. cornudentata
ヒイラギマンリョウ subsp. cornudentata(腺齒紫金牛・雨傘仔) 臺灣産
ニイタカマンリョウ subsp. morrisonensis
アリサンコウジ var. stenosepala(A.stenosepala)
A. corymbifera (傘形紫金牛・紫背綠・紫綠西南紫金牛) 廣西・雲南産 『中国本草図録』Ⅴ/2243
マンリョウ A. crenata(var.lanceolata, f.taquetii;
圓齒紫金牛・硃砂根・大羅傘・紅銅盤)『雲南の植物Ⅲ』217
var. bicolor(紅涼傘) 『雲南の植物Ⅲ』217
カラタチバナ(シナタチバナ) A. crispa(var.dielsii;百两金・八爪金龍・開喉箭)
『雲南の植物Ⅱ』201
ヤクシマタチバナ var. caducipila(var.brevifolia)
シナヤブコウジ A. cymosa(A.chinensis)
A. elegans (美麗紫金牛・郎傘木・小羅傘) 兩廣・ベトナム産 『中国本草図録』Ⅹ/4777
センロンマンリョウ A. elliptica(A.squamulosa)
A. faberi (江南紫金牛・月月紅) 兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅶ/3280
A. gigantifolia (大葉紫金牛・走馬胎・走馬風) 『中国本草図録』Ⅳ/1782
福建・江西・兩廣・雲南産 『全國中草藥匯編 上』p.421
A. humilis(矮紫金牛・大雨傘) 廣東産 『中国本草図録』Ⅰ/253
ヤブコウジ A. japonica(紫金牛・野枇杷葉・平地木)
ホソバヤブコウジ var. angusta 伊豆大島・屋久島・臺灣に産
クスクスコウジ A. kusukusensis
A. lindleyana(A.punctata;山血丹・沿海紫金牛) 廣西産 『中国本草図録』Ⅹ/4778
ヒカゲコウジ A. maclurei (心葉紫金牛・紅雲草) 臺灣・兩廣・貴州産 『中国本草図録』Ⅸ/4287
A. maculosa (珍珠傘・紫綠果根・小羅傘・天靑地紅) 雲南・ベトナム南産
『中国本草図録』Ⅷ/3713 『全國中草藥匯編 上』pp.376-377
A. mamillata (紅毛紫金牛・乳毛紫金牛・虎舌紅・紅毛氈) 『全國中草藥匯編 上』p.384
福建・湖南・兩廣・四川・貴州・雲南・ベトナム産 『中国本草図録』Ⅶ/3281
トウランアクチ A. obtusa(A. obtusa;銅盆花・鈍葉紫金牛) 広東産
オオマンリョウ A. polysticta(A.virens)
ツルコウジ A. pusilla(九節龍・地茶・猴接骨・五托蓮・細小紫金牛・毛莖紫金牛・毛靑杠)
『中国本草図録』Ⅰ/0255
リュウキュウツルコウジ var. liukiuensis
シシアクチ A. quinquegona(羅傘樹) 『全国中草葯匯編』下/382-383
琉球・臺灣・福建・兩廣・雲南・インドシナ産 『中国本草図録』Ⅳ/1783
モクタチバナ A. sieboldii(多枝紫金牛・東南紫金牛)
小笠原・四国南部・九州・琉球・臺灣・福建・浙江に分布
A. thyrsiflora(A.depressa, A.neriifolia;南方紫金牛・羅傘樹・圓果羅傘・癆病木)
『中国本草図録』Ⅹ/4776) 兩廣・四川・貴州・雲南・インドシナ・インド産
A. villosa (卷毛紫金牛・雪下紅)
A. verbascifolia(A.villosoides;長毛雪下紅) 海南島・雲南産 『雲南の植物Ⅲ』217
コビトマンリョウ A. violacea(A.brevicaulis var.violacea)
A. virens (綠葉紫金牛・紐子果・大羅傘) 臺灣・海南島・兩廣・雲南産 『中国本草図録』Ⅹ/4779
オオツルコウジ A. walkeri(A.montana)
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サクラソウ科 Primulaceae(報春花 bàochūnhuā 科)については、サクラソウ科を見よ。 |
訓 |
和名は、藪にある柑子、山にある橘。この場合、柑子・橘は、どちらもカラタチバナ。
柑橘類としての柑子・橘については、柑橘類を見よ。 |
カラタチバナ(百両)・センリョウ(千両)・マンリョウ(万両)などに対して十両と呼ばれることがある。カラタチバナの訓を見よ。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』9(1806)に、「ヤブカウジ ヤブタチバナ サルノメ アカダマノキ江戸 チヤウジヤノクハシ佐州 ヤマタチバナ クサタチバナ加州 ヤマウンジユ肥前 ハナタチバナ筑前」と。 |
説 |
北海道(西南部)・本州・四国・九州・朝鮮・臺灣・陝西・長江以南に分布。 |
誌 |
中国では、全株を矮地茶・紫金牛と呼び薬用にする。 『全国中草葯匯編』上/838-839 『(修訂) 中葯志』IV/719-724 |
『万葉集』に、
けのこ(消残)りのゆき(雪)にあ(合)へて(照)るあしひきの
やまたちばなをつと(裹)につ(摘)みこ(来)な (20/4471,大伴家持)
此の雪の消(け)遺る時にいざ帰(ゆ)かな山橘の実の光(て)るも見む (19/4226,大伴家持)
紫の糸をそ吾搓る足ひきの山橘を貫かむと念ひて (7/1340,読人知らず)
足引の山橘の色に出でよ語らひ継ぎてあふ事もあらむ (4/669,春日王)
足引の山橘の色に出でて吾が恋ひなむを人目難みすな (11/2767,読人知らず)
『古今集』に、
あしひきの 山たちはなれ ゆくものの やどりさだめぬ 世にこそ有りけれ
(小野滋蔭、『古今和歌集』物名「たちばな」)
我こひを しのびかねては あし引の 山橘の 色にいでぬべし (紀友則)
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江戸時代には、観賞用の品種が多く作出されていた。
『花壇地錦抄』(1695)巻三「実秋色付て見事成るひ」に、「やぶかうじ 草。正月かざりニ用ルたち花也。実あかし」と。 |