のぎく (野菊) 

 野菊は、家菊の対語。家菊が、栽培品であるキクを指すのに対して、野辺に野生する菊の仲間をいう。
 いわゆる野菊の仲間を一覧する。
和名 漢名 学名 備考
ヨメナ   Kalimeris yomena 狭義の野菊。日本特産、本州中部以西の暖帯に分布、特に関西に多い。花期は秋。若菜を摘んで食う。
コヨメナ 馬蘭 Kalimeris indica 日本(四国・九州)・台湾・中国・東南アジア・インドに分布。花期は、南方では一年中。中国では嫩葉を食用にし、全草を薬用にする。
ユウガギク   Kalimeris pinnatifida 日本(近畿以北の本州)の温帯に分布。花期は7-10月。
オオユウガギク   Kalimeris incisa 日本(愛知県以西)・朝鮮・中国(華北・東北)・シベリアに分布。花期は8-10月。
カントウヨメナ   Kalimeris pseudoyomena 日本(関東・東北)に分布。
ミヤマヨメナ   Miyamayomena savatieri 日本特産で、箱根以南の本州・四国・九州に分布。花期は5-6月。園芸品はミヤコワスレ。
チョウセンヨメナ   Miyamayomena koraiensis 朝鮮原産。大正年間に小石川植物園に導入されて広まった。花期は6-9月。
シラヤマギク   Aster scaber 日本・朝鮮・中国に分布。花期は8-10月。若菜を食う(嫁菜ほどうまくないので婿菜と言う)。
ノコンギク 三褶脈紫菀 Aster ageratoides 日本各地に分布。花期は8-11月。園芸品はコンギク
 
 漢名を野菊(ヤキク,yeju)というものは、次のようなものである。
   アワコガネギク
(キクタニギク・アブラギク) D. boreale(甘野菊・北野菊)『中国雑草原色図鑑』245
   シマカンギク(ハマカンギク・アブラギク) D. indicum(野菊・野黄菊・苦薏)
   ホソバアブラギク D. lavandulaefolium(細裂野菊・岩香菊・野菊・甘菊) 『中国本草図録』Ⅰ/0379・Ⅴ/2360
 いずれも、花は黄色。 
 栽培されている菊については、キク Dendranthema grandiflorum を見よ。
 キク科 Compositae(菊科)の植物については、キク科を見よ。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』11(1806)に、「野菊 アブラギク センボンギク イハヤギク」と。
 

   なでしこの暑さわするゝ野菊かな 
(芭蕉,1644-1694)

   なつかしきしをにがもとの野菊哉 
(蕪村,1716-1783。しをにはシオン)
 
 道の真中は乾いているが、両側の田についている所は、露にしとしとに濡れて、いろいろの草が花を開いている。タウコギは末枯(うらが)れて、水蕎麦(みずそば)(たで)など一番多く繁っている。都草も黄色く花が見える。野菊がよろよろと咲いている。民さんこれ野菊がと僕は吾知らず足を留めたけれど、民子は聞えないのかさっさと先へ行く。僕は一寸脇へ物を置いて、野菊の花を一握り採った。
 ・・・
 「・・・まア綺麗な野菊、政夫さん私に半分おくれッたら、私ほんとうに野菊が好き」
 「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き・・・」
 「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」
 「民さんはそんなに野菊が好き・・・道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」
 民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。二人は歩きだす。
 「政夫さん・・・私野菊の様だってどうしてですか」
 「さアどうしていうことはないけれど、民さんは何がなし野菊の様な風だからさ」
 「それで正雄さんは野菊が好きだって・・・」
 「僕大好きさ」
 民子はこれからはあなたが先になってと云いながら、自らは後になった。
(伊藤左千夫『野菊の墓』1906)

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