辨 |
Zanthoxylum piperitum には、次のような品種がある。
ヤマアサクラザンショウ f. brevispinum 刺が短い
アサクラザンショウ f. inerme 刺が少なく、果実は大きく芳香が強い
和名は但馬朝倉山で発見されたことから。
アラゲザンショウ f. hispidum(f.pubescens)
リュウジンザンショウ f. ovatifoliolatum 葉が広卵形で先がやや丸い
シダレヤマアサクラザンショウ f. rotundatum
ブドウサンショウ 和歌山有田川町産
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サンショウ属 Zanthoxylum(花椒 huājiāo 屬)には、世界に約230種がある。
Z. acanthopodium(刺花椒・野花椒) 雲南・東南アジア・ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅱ』172
Z. ailanthoides
カラスザンショウ var. ailanthoides(Fagara ailanthoides;
椿葉花椒 chūnyè huājiāo・樗葉花椒・食茱萸) 本草綱目啓蒙28
トゲナシカラスザンショウ f. espinosum(Z.ailanthoides var.inermis)
アコウザンショウ var. inerma(var. bininshimae, Z.inerme) 小笠原産
アマミザンショウ Z. amamiense
Z. armatum
トウフユザンショウ var. armatum(竹葉椒) 『全國中草藥匯編』上/448,下/258
フユザンショウ(フダンザンショウ) var. subtrifoliatum(Z.planispinum;竹葉椒・秦椒)
Z. austrosinense(嶺南花椒・搜山虎・山胡椒・滿山香) 江西・湖南・兩廣産
Z. avicennae(Fagara avicennae;簕欓 lèdăng・勒欓・犬花椒・鷹不泊・鳥不宿)
臺灣・福建・兩廣・雲南産 『中国本草図録』Ⅰ/0155 『全国中草葯匯編』上/928-929
イワザンショウ Z. beecheyanum
イワザンショウ var. beecheyanum(Z.arnottianum;琉球花椒)
ヒレザンショウ var. alatum(Z.arnottianum var.alatum)
カホクザンショウ Z. bungeanum(椒・花椒・申椒・川椒・蜀椒・紅花椒)
『雲南の植物Ⅱ』172・『中国本草図録』Ⅶ/3196
var. pubescens(毛葉川椒)
ヒメハゼサンショウ Z. dimorphophyllum(Fagara dimorphophylla,
Z.pistaciiflorum;異葉花椒・羊山刺・三葉花椒)臺灣産
var. spinifolium (刺異葉花椒・靑椒皮・見血飛)
Z. dissitum (Fagara dissita;硯殻花椒・大葉花椒・單面針・山枇杷・蚌殻椒)
陝甘以南・五嶺以北に産 『中国本草図録』Ⅶ/3197 『全国中草葯匯編』下/343-344
Z. echinocarpum(刺殻花椒・見血飛)兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅹ/4682
Z. esquirollii(岩椒・雲貴花椒)四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』172
コカラスザンショウ Z. fauriei(Fagara fauriei, F.shikokiana)
ネワタノキ Z. integrifoliolum 臺灣・フィリピン産
Z. laetum(Z.dissitoides;擬硯殻花椒・單面針)兩廣・雲南産 『中国本草図録』Ⅹ/4681
Z. molle(Fagara mollis;朶花椒) 安徽・浙江・江西・湖南・貴州産
Z. multijugum(Z. multifoliolatum; 多葉花椒) 雲南産
テリハザンショウ Z. nitidum(Fagara nitida; 崖椒・光葉花椒・兩面針・入地金牛・山胡椒)
臺灣・福建・兩廣・雲貴産 『中国本草図録』Ⅹ/4683 『全國中草藥匯編 上』pp.403-404
f. fastuosum(疏刺花椒・毛兩面針) 『中国本草図録』Ⅹ/4684
Z. oxyphyllim(Z.tibetanum;尖葉花椒・西藏野花椒) 雲南・チベット・ヒマラヤ産
『全国中草葯匯編』下/224
Z. piasezkii(川陝花椒) 陝甘・四川産 『中国本草図録』Ⅵ/2699
サンショウ Z. piperitum(Fagara piperita) 『全國中草藥匯編 上』p.448
アリサンザンショウ Z. pteropodum
ツルザンショウ Z. scandens(Z.liukiuense, Z.cuspidatum;花椒簕) 琉球・臺灣・長江以南・東南亜産
イヌザンショウ Z. schinifolium
イヌザンショウ var. schinifolium(Fagara schinifolia, Z.mantchuricum,
Fagara mantchurica; 香椒子・崖椒・野椒・靑椒・土花椒)
トゲナシイヌザンショウ var. inerme
シマイヌザンショウ var. okinawense(Z.okinawense)
トウザンショウ Z. simulans(Z.setosum, Z.coreanum;
野花椒・柄果花椒・刺花椒・麻口皮子藥)
『中国本草図録』Ⅰ/0156,Ⅲ/1241 『全國中草藥匯編 上』p.448
Z. stenophyllum(Fagara stenophylla;狹葉花椒) 陝甘・湖北・四川産
ヤクシマカラスザンショウ Z. yakumontanum(Z.ailanthoides var.yakumontanum)
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ミカン科 Rutaceae(芸香 yúnxiāng 科)については、ミカン科を見よ。 |
訓 |
「和名ハ山椒ノ意ナレドモ山椒ハ漢名ニ非ズ、古名ノはじかみハはじかみらノ略ト謂ハル、はじハ飜花卽チはぜるノ意ニシテかみらハにらノ古名ナリ、卽チ其皮殻開裂シ且皮味辛辣ニシテ韭ノ味ニ似タルヨリ來リシ名ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 ハジカミは、後には味が似ていることからショウガをも指すようになった。 |
『本草和名』に、蜀椒は「和名布佐波之加美」と。
『延喜式』蜀椒に、「ナルハシカミ」と。
『倭名類聚抄』に、蜀椒は「奈留波之加美、一云不佐波之加美」と、蔓椒は「和名以多知波之加美、一云保曽木」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、秦椒は「サンシヤウ」、蜀椒は「ナルハジカミ和名鈔 フサハジカミ同上 アサクラザンシヤウ」、崖椒は「イヌザンシヤウ」、蔓椒は「イタチハジカミ和名鈔 ホソギ同上」と。 |
漢語の椒(ショウ,jiāo)は、刺激的な味のする実をつける植物の総称だが、たんに椒という場合はカホクザンショウ(花椒)を指す。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・朝鮮(南部)に分布。よく人家に栽培する。
株は、普通接木により増やす。台木には、自生のサンショウまたはイヌザンショウの2年木を用い、3-4年で開花結実を始め、7-8年で成木となり、12-13年が最盛期。 |
雌雄異株。 |
誌 |
中国では、サンショウ属 Zanthoxylum(花椒屬)の幾つかの種などを薬用にする。
花椒(カショウ,huājiāo)、椒目(ショウモク,jiāomù):次のものの果皮(花椒)及び種子(椒目)
『中薬志』ⅡI/195-201 『全國中草藥匯編』上/447-448
トウフユザンショウ Z. armatum(竹葉椒)
〇カホクザンショウ Z. bungeanum(椒・花椒・申椒・川椒・蜀椒)
〇イヌザンショウ Z. schinifolium(香椒子・崖椒・野椒・靑椒・土花椒)
トウザンショウ Z. simulans(野花椒・柄果花椒・麻口皮子藥)
ゴシュユ Tetradium ruticarpum(呉茱萸)
麻口皮子藥(マコウヒシヤク,mákŏupízĭyào):次のものの樹皮・根皮 『全国中草葯匯編』上/720-721
Z. austrosinense(嶺南花椒)
トウザンショウ Z. simulans(野花椒・柄果花椒・麻口皮子藥)
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花椒は、屠蘇散(とそさん)に調合する。屠蘇散とは、中国の魏の名医 華陀(かだ)が処方したと伝えられる漢方薬、肉桂・山椒・白朮・桔梗・防風・陳皮などを調合したもの。これを清酒または味醂につけたものを屠蘇酒と呼び、正月に飲む。 |
日本では、山椒は古来代表的な香辛料。
嫩葉を「木の芽」と呼び、香づけに用いる。また、花を半山椒、未熟な青い果実を実山椒、熟した果実を粉末にしたものを粉山椒と呼び、香辛料として用いる。なお、材は、堅いので擂粉木にする。
唐辛子・胡麻・山椒・芥子の実・麻の実・菜種・陳皮をあわせた香辛料を、七味唐辛子という。 |
生薬サンショウ(山椒)は サンショウの成熟した果皮で、果皮から分離した種子をできるだけ除いたものである(第十八改正日本薬局方)。近年では、ブドウサンショウのものが利用されている。
(中国では、サンショウを産しないので、花椒を用いる。) |
『古事記』『日本書紀』に、神武天皇「久米の歌」に、「かきもと(垣下)に う(植)ゑしはじかみ(椒)」と詠われている。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「朝倉 大つぶなり。木も葉も異有。木ニとげなし」、「柚(ゆ)さんせう 葉四季共ニあり。自然にゆの香あり」、「日向(ひなた)さんせう こつぶなれ共味よし」と。 |
近世には生垣にも用いる。いけがきを見よ。
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「昆布に山椒」とは、お茶を飲むのに、取り合わせのよいものの例。ふさわしいことのたとえ。狂言『釣狐』に「愚僧が事なれば別に振舞ふ物もない、昆布に山椒、茶ばかり申さう」と見える、と(平野雅章『食物ことわざ事典』1978)。 |