辨 |
キキョウ科 Campanulaceae(桔梗 jiégěng 科)には、世界に約86-88属 約2300-2400種がある。
ツリガネニンジン属 Adenophora(沙參屬)
シデシャジン属 Asyneuma(牧根草屬)
ホタルブクロ属 Campanula(風鈴草屬)
incl. Popoviocodonia
ツルニンジン属 Codonopsis(黨參屬)
incl. Campanumoea
タンゲブ属 Cyclocodon(輪鐘草屬) 東アジアに3種
タンゲブ(タイワンツルギキョウ) C. lancifolius(Campanumoea lancifolia,
Codonopsis lancifolia;輪鐘花) 南西諸島・臺灣・福建・兩湖・
・兩廣・四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・インドシナ・マレシア・ニューギニア産
Cyananthus(藍鐘花屬) 漢土・ミャンマー・ヒマラヤに約20種、『雲南の植物』215-216に5種
ハナブサソウ属 Hanabusaya(金剛風鈴屬) 1種
ハナブサソウ H. asiatica 朝鮮産
Heterocodon(異鐘花屬) 北米西部に1種
ホシアザミ属 Hippobroma(馬醉草屬)
オオミゾカクシ属 Legousia(神鑑花屬) 歐洲・北アフリカ・西アジアに6種
ミゾカクシ属 Lobelia(半邊蓮屬)
incl. Hypsela, Pratia
Pankycodon(山南參屬) 1種
P. purpureus(山南參) 雲南・貴州・チベット・ヒマラヤ産 『全国中草葯匯編』下/378
タニギキョウ属 Peracarpa(袋果草屬)
Phyteuma(裂檐花屬)
キキョウ属 Platycodon(桔梗属)
ユウギリソウ属 Trachelium(療喉草屬)
キキョウソウ属 Triodanis(異檐花屬)
ヒナギキョウ属 Wahlenbergia(藍花參屬)
incl. Ceratostigma
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キキョウ属 Platycodon(桔梗 jiégěng 屬)には、次の1種がある。
キキョウ P. grandiflorus(桔梗)
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訓 |
漢名桔梗は、根が引き締まって堅いことから。
李時珍『本草綱目』桔梗の釈名に、「此の草の根、結実にして梗直、故に名づく」と。
同書に、「白薬別録。 梗草別録。 薺苨本経。符巵」と。
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朝鮮名はトラジ。漢名の道拉基(ドウロウキ,dàolājī)は、その音写。 |
和名キキョウは、桔梗の呉音ケチキョウの転訛。
アリノヒフキの名は平安時代からある。一説に、花瓣にアリの出す蟻酸が触れると、火を吹いたように赤くなることから。一説に、アリはキキョウを好み、春にその根を食べ、近くに巣を作るが、その形が火山乃至む火吹きに見えることからか、という(『週刊朝日百科 植物の世界』)。
トトキはツリガネニンジン、根を食用・薬用にすることが共通する。 |
『本草和名』桔梗に、「和名阿利乃比布岐、一名乎加止々岐」と。
『延喜式』桔梗に、「アリノヒフキ、アリノヒフキクサ」と。
『倭名類聚抄』に、桔梗は「和名阿里乃比布木」と、また苻■{艸冠に扈}は「和名乎加土々木」と。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「桔梗 アリノヒフキ和名鈔 アリノヒアフギ ヲカトゝキ古歌 ヒトヱグサ同上 キチカウ 佛吉草和方書 クハンサウ信州 セイネイ江州 今ハ通名キキヤウ」と。
岩崎灌園『本草圖譜』(1828)に、「桔梗(キチカウ) ありのひふき和名抄」と。 |
英名 Baloon flower は、蕾の形から。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・奄美・朝鮮・河北・東北・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・東シベリア南部・極東ロシアに分布。
日本では、古くから観賞用・食用・薬用に栽培する。 |
全国では絶滅危惧Ⅱ類(VU)、埼玉県では絶滅危惧ⅠB類(EN)。 |
雌雄異熟。雌蕊に先立ち、雄蕊が熟す。
根はサポニンを含み 有毒、食うには毒抜きが必要。 |
誌 |
中国では、根を薬用にする。『中薬志Ⅰ』pp.383-384 『全国中草葯匯編』上/666
日本では、生薬キキョウは キキョウの根である(第十八改正日本薬局方)。 |
また、屠蘇散(とそさん)は、中国の魏の名医 華陀(かだ)が処方したと伝えられる漢方薬、肉桂・山椒・白朮・桔梗・防風・陳皮などを調合したもの。これを清酒または味醂につけたものを屠蘇酒と呼び、正月に飲む。 |
李時珍『本草綱目』(ca.1596)人参の集解に、「偽る者は、皆な沙參(サシン,shashen,しゃじん)・薺苨(セイデイ,jini,せいねい)・桔梗を以て根を采り、造作して之を乱す」と。沙參はツリガネニンジン、薺苨は Adenophora trachelioides。 |
嫩葉・根を茹でて、水に晒して毒抜きすれば食用になり、救荒作物として用いられた。 |
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日本では、秋の七草の一。
すなわち、『万葉集』巻八(1537;1538)に「山上臣憶良(660-733)、秋の野の花を詠める歌 二首」に、
秋の野(ぬ)に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花
萩が花尾花(をばな)葛花なでしこの花女郎花(をみなへし)また藤袴朝貌(あさがほ)の花
とある「朝貌」は、今日のアサガオではなくキキョウであるとする説が 一般に行われている。詳しくは、アサガオを見よ。
集中、ほかに 4首に詠われる朝顔のうち、10/2275;14/3502 の例は、「さく」にかかる枕詞。
朝かほは 朝露負いて 咲くといえど 暮陰(ゆふかげ)にこそ 咲きまさりけれ
(10/2104,読人知らず)
展転(こひまろ)び 恋ひは死ぬとも いちしろく 色には出でじ 朝容(あさがほ)の花
(10/2274,読人知らず)
言(こと)に出でて 云はば忌(ゆゆ)しみ 朝貌の 穂には開(さ)き出ぬ 恋もするかも
(10/2275,読人知らず)
わ(吾)がめづま(目妻) ひと(人)はさ(離)くれど あさがほの
とし(年)さへこごと わ(吾)はさ(離)かるがへ (14/3502,読人知らず)
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桔梗の語の初見は、『出雲国風土記』(733)。
平安時代には、
あきちかう のはなりにけり 白露の をれる草ばも 色かはりゆく
(紀友則、『古今和歌集』巻10物名「きちかうの花」)
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ききょうという音の初見は、清少納言『枕草子』第67段「草の花は」に、「をみなへし、ききやう、あさがを、かるかや、云々」とあるものや、紫式部『源氏物語』手習に、「かき(垣)ほにう(植)えたるなでしこもおもしろく、をみなへし・ききやうなどさきはじめたるに」とあるものなど。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、幾つかの品種を挙げる。 |