はんのき (榛木)

学名  Alnus japonica
日本名  ハンノキ
科名(日本名)  カバノキ科
  日本語別名  ハリノキ
漢名  日本榿木(ニホンキボク,ribenqimu)
科名(漢名)  樺木(カボク,huamu)科
  漢語別名  赤楊(セキヨウ,chiyang)、水撥樹、水瓜樹、水冬果
英名  Japanese alder
2006/02/18 野川公園自然観察園

2006/02/23 田島が原

2006/02/23 秋が瀬
2006/03/27 同上
2008/04/05 田島が原 2007/04/29 野川公園自然観察園


2006/08/21 秋が瀬
2007/08/07 田島が原

2006/10/19 神代植物公園


 ハンノキ属 Alnus(榿木屬)には、30-40種がある。

   A. cremastogyne(榿木・水靑岡) 
『雲南の植物Ⅱ』148・『中国本草図録』Ⅶ/3051
   A. crispa
     キョクホクミヤマハンノキ ssp. crispa
     ssp. mandshurica → A.mandshurica
     オオバミヤマハンノキ ssp. maximowiczii f. frandifolia
     ssp. sinuata
   ミヤマカワラハンノキ A. fauriei(A. cylindrostachya)
   A. ferdinandi-coburgii(川滇榿木)
   ヤシャブシ
(ミネバリ) A. firma (Alnaster firma)
     ミヤマヤシャブシ var. hirtella
   ヨーロッパヤシャブシ A. glutinosa
   サルクラハンノキ A. hakkodensis
   A. henryi(淡水榿木・臺北榿木)
   ヤマハンノキ
(広義) A. hirsuta
     ケヤマハンノキ var. hirsuta(A. sibirica var. hirsuta)
     ヤマハンノキ
(狭義。マルバハンノキ・クロハリ) var. sibirica(A.sibirica;遼東榿木・水冬瓜・
          水冬瓜赤楊) 
『中国本草図録』Ⅰ/0024
   タニガワハンノキ
(コバノヤマハンノキ) A. inokumae(A. hirsuta var. microphylla)
   ハンノキ A. japonica(A.maritima var.japonica;日本榿木)
     ケハンノキ var. koreana
     エゾハンノキ
(ヤチハンノキ) var. arguta
     タイワンハンノキ var. formosana(A. formosana, A. henryi;臺灣榿木・
          臺北榿木・淡水榿木)
   A. lanata(榿木・毛榿木)
   マンシュウハンノキ A. mandshurica(東北榿木・東北赤楊) 『中国本草図録』Ⅸ/4070
   ヤハズハンノキ A. matsumurae
   A. maximowiczii → A.crispa ssp.maximowiczii
   ネパールハンノキ A. nepalensis(尼泊爾榿木・旱冬瓜・蒙自榿木・冬瓜樹)
          
 『中国本草図録』Ⅴ/2043
   ヒメヤシャブシ A. pendula(A. multivervis, Alnaster pendula)
   カワラハンノキ A. serrulatoides(A. obtusata)
     ケカワラハンノキ var. katoana
   A. sibirica → A. hirsuta var. sibirica
   オオバヤシャブシ A. sieboldiana(A.firma var.sieboldiana, Alnaster sieboldii;
          旅順榿木)
   サクラバハンノキ A. trabeculosa(A.nagurae; 江南榿木)
   A. viridis
     ミヤマハンノキ ssp. maximowiczii(A.crispa ssp.maximowiczii, A.maximowiczii,
          A.vemicularis, A.hakkodensis)
       オオバミヤマハンノキ f. grandifolia

 なお、ヤシャブシ亜属 subgen. Alnaster を、ヤシャブシ属 Alnaster として独立させることがある。 
 カバノキ科 Betulaceae(樺木科)については、カバノキ科を見よ。
 和名ハンノキは、ハリノキの転訛。
 ハリノキは、一説に「墾
(はり)の木」の意(武田久吉『民俗と植物』)
 『日本書紀』には、榛原と書いてハリハラと読む。この頃より、日本ではハンノキに榛の字を当てていた。
 『吾妻鏡』には、榛谷と書いてハンガエと読む。
 しかし、漢名を榛(シン,zhen)というものはハシバミであり、榛をハンノキとするのは誤り。
 漢名を赤楊というものは、近縁種かもしれないという。
 日本・沖縄・臺灣・朝鮮・中国(東北・河北・山東,一説湖北)・ウスリーに分布。好んで湿地に生える。
 「地下水位が高く、しばしば水が地表に停滞するような湿地に形成される自然林は、ハンノキ林やヤチダモ林である。ハンノキ林は、垂直的には平地から山地帯上部まで、水平的には本州から北海道まで広く分布する。・・・
 ハンノキは過湿の地に先駆的に出現し、成長が早く、しばしば純林をつくる。萌芽の成長もよいため二次林もつくりやすい。水分条件が変動しない限り、長く林の状態が保たれるので、一種の土壌的極相林と見なすこともある。
 低地でハンノキ林のできるようなところは、多くは古くから水田地帯にされてきた。また、ハンノキを燃料にするために伐採したころもあった。最近では、ハンノキ林の成立しやすい場所が開発の影響を強く受けて消滅しつつある。一方、水田を放棄したあとにハンノキの進出している例もある。河川敷に続く沖積低地に、広くハンノキ林のできているところがある。・・・
 関東地方の低地でハンノキ林の構造を見ると、高木層・亜高木層はほとんどハンノキで占められるが、土壌水分の少ないところではエノキクヌギなどが混生する。低木層にはイボタ・ノイバラなどがあり、草本層にはカサスゲ・クサヨシなどが優占する。種類組成は地下水位と関係があり、水位の低下にしたがってハンノキからエノキ・クヌギへ、林床はカサスゲからクサヨシへと優占種は入れ替わる。」
(沼田真・岩瀬徹『図説 日本の植生』1975)
 『古事記』下・雄略天皇の条に、天皇が葛城山に狩に出て猪に襲われて「榛」の上に逃げたが、これを歌った歌に、「わがにげのぼりし ありをの はりのきのえだ」とある。
 『万葉集』には、

   あ
(明)けされば 榛(はり)のさ枝に 暮(ゆふ)されば 藤の繁みに
   遥遥
(はろばろ)に 鳴く霍公鳥(ほととぎす) ・・・
      
(19/4207,大伴家持)
   いざ児ども 倭(やまと)へ早く 白菅の 真野の榛原 手折りてゆかむ (3/280,高市黒人)
   古に ありけむ人の もとめつつ 衣にすりけむ 真野の榛原 (7/1166,読み人知らず)
   住吉(すみのえ)の 遠里小野の 真榛(まはり)もち
     すれる衣の 盛り過ぎゆく
(7/1156,読み人知らず)

など。詳しくは文藝譜を見よ。
 「此ごろ津の国あたりの民のいへるは、此木枝を取る用にあらず。並べる木の間に木や竹をゆひわたし、是にいねを掛けてほし、わらをかけ、しんぼくにもいねわらを本より末にゆひ付くるなり。是ふか田所なるゆへなり」(宮崎安貞『農業全書』1697)。

     赤楊(はんのき)の黄葉(きば)ひるがへる田中路、
     稻搗
(いなき)をとめが靜歌(しづうた)に黄(あめ)なる牛はかへりゆき、・・・
       
薄田泣菫「望郷の歌」(1906,『白羊宮』)より
 
   白雲のみだれしづまるありさまをそひの榛原に居りてこそ見れ
      
(1933伊香保,斎藤茂吉『白桃』)
 
 長野県から富山県に越す針ノ木峠・針ノ木沢は、ミヤマハンノキに因む。


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