えのき (榎・榎木) 

学名  Celtis sinensis (C.sinensis var.japonica)
日本名  エノキ
科名(日本名)  アサ科
  日本語別名  エ、エノミ
漢名  朴樹(ボクジュ,pòshù)
科名(漢名)  大麻(タイマ,dàmá)科
  漢語別名  
英名  Japanese hackleberry
2021/03/29 小平市玉川上水緑地
  雄花と両性花
  雄花
      2021/03/10 同上 
     

2007/04/21 入間市宮寺
 
2009/04/16 同上

2021/04/07 小平市玉川上水緑地 2021/04/20 同左
2023/06/20 小石川植物園 
2007/07/19 森林公園 2008/08/08 さいたま市秋が瀬

2006/08/21 秋ケ瀬

2011/08/28 富山県中央植物園

2023/11/23 小平市玉川上水緑地   小枝を裏返して 
2006/10/19 神代植物公園

2006/12/03 神代植物公園
2006/3/21 神代植物公園 

 エノキ属 Celtis(朴 pò 屬)には、世界に約70-100種がある。

    C. biondii
     コバノチョウセンエノキ
(サキシマエノキ) var. biondii(C.leveillei;
         紫彈朴・紫彈樹・黃果朴)
         
本州(近畿以西)・四国・九州・朝鮮・臺灣・華東・河南・陝甘・湖北・兩廣・産 
     チュウゴクエノキ var. holophylla
本州(中国)・九州産 
     サキシマエノキ var. insularis
琉球産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
   クワハノエノキ
(オガサワラエノキ・ムニンエノキ) C. boninensis(C.liukiuensis, C.koidzumii)
         
山口・九州西部・琉球・小笠原産 
   トウエノキ C. bungeana(黑彈朴・小葉朴・棒棒樹)
 『全国中草葯匯編』上/814-815
         
遼寧・華北・西北・華東・両湖・四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』157
   C. cerasifera(小果朴・櫻果朴)
   C. chekiangensis(天目朴樹)
   エゾエノキ C. jessoensis
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江産 
   C. julianae(珊瑚朴・棠殻子樹・沙棠子)
   C. koraiensis(大葉朴)
   アメリカエノキ C. occidentalis
   コウトウエノキ C. philippensis(C.collinsae, C.wightii;
         菲律賓朴樹・鐵靈朴・蘭嶼沙朴・油朴・香膠木)
   C. reticulata(網朴) 『全国中草葯匯編』上/814-815
   エノキ C. sinensis(C.tetrandra ssp.sinensis, C.nervosa, c.bodinieri, C.labilis,
          C.cercidifolia;朴樹・黃果朴)
   シズイエノキ
(タイワンエノキ) C. tetrandra(C.formosana, C.kunmingensis;
         四蕊朴・昆明朴)  『雲南の植物Ⅱ』157『雲南の植物Ⅲ』155
   C. timorensis(C.cinnamomea;假玉桂・玉桂朴)
   C. vandervoetiana(西川朴)
    
 アサ科 Cannabaceae(大麻 dàmá 科)については、アサ科を見よ。
 和名の語源は、諸説あるが不明。「和名 其意不明ナリ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
 日本では、朴(ボク,pò)をホオノキにあてるが、誤り。
 また、エノキに榎の字をあてるが、これも誤り。「從來本種ニ對シテ用ウル榎ハ蓋シ和字ニシテ此樹夏時ノ樹陰ヲ貴ブ故ニ木ニ夏ヲ配セシナラン、漢字ニ榎アレドモ別物ナリト斷ズ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
 漢字 榎(カ,jiă)は檟(カ,jiă)と同字、ヒサギと訓じ、キササゲの仲間である。
 『倭名類聚抄』榎に「和名衣」と。
 本州・四国・九州・朝鮮・臺灣・華東・山東・河南・兩湖・兩廣・四川・貴州・インドシナに分布。
 樹皮から繊維を取り、根皮は薬用にする。果実は食え、油を搾り潤滑油に用いる。
 『万葉集』に、

   我が門
(かど)の榎(え)の実もり喫(は)む百(もも)千鳥
     千鳥は来れど君そ来まさぬ
(16/3872,読人知らず)
 
 吉田兼好『徒然草』第45段に、「公世(きんよ,藤原公世,bef.1282-1301)の二位のせうとに、良覚僧正と聞えしは、極てはら(腹)あしき人なりけり。坊の傍に、おほ(大)きなる榎の木のありければ、人、榎木僧正とぞい(言)ひける。この名然べからずとて、かの木をき(伐)られにけり。その根のありければ、きりくひの僧正といひけり。いよいよはら立て、きりくひをほ(掘)り捨たりければ、その跡おほきなる堀にてありければ、堀池僧正とぞいひける」と。

   榎
(え)の実ちるむくの羽音や朝あらし (芭蕉,1644-1694)

   榎
(えのき)野分(のわき)して浅間の煙余所(よそ)に立(たつ) (蕪村,1716-1783)
 
 大型の樹木で遠くから見えるのと、夏に大きな緑陰を作るので、道路わき・村外れなどによく植えられた。道祖神のご神木にされたほか、江戸時代には、街道の一里塚にこれを植えた。

 縁切り・縁結びの効能と結び付けられることも多い。和宮が徳川慶喜に降嫁したとき、その行列は、中山道最後の宿、板橋宿
(板橋区板橋)の外れにある縁切り榎を迂回した。

 王子
(北区)の稲荷神社の大エノキのもとには、毎年大晦日の日に関八州の狐が集まって狐火を灯したといい、その火を見て翌年の農作の豊凶を占ったという。 

板橋宿の縁切り榎
(場所は移り、木は
  代替わりしている)



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