くぬぎ (櫟) 

学名  Quercus acutissima
日本名  クヌギ
科名(日本名)  ブナ科
  日本語別名  ツルバミ(橡)、ドングリノキ、クニギ、フシマキ、カタギ、フシクレボク
漢名  麻櫟(マレキ,málì)
科名(漢名)  殻斗(カクト,kédŏu)科
  漢語別名  靑棡(セイコウ,qīnggāng)、橡椀樹(ショウワンジュ,xiàngwănshù)、櫟(レキ,lì)、橡(ショウ,xiàng)、栩(ク,xŭ)、杼(ショ,shù)、柞(サク,zuò)
英名  Japanese chestnut oak
2006/03/27 さいたま市秋ケ瀬公園

2007/03/04 野川公園
2007/03/29 同上  雄花 (以下同)

2016/04/06 秋ヶ瀬
2007/04/06 薬用植物園 2008/04/05 三芳町竹間沢

2007/04/13 三芳町竹間沢
2006/04/13 秋が瀬

2007/04/29 神代植物公園 2007/04/29 野川公園

2007/08/07 秋が瀬

2005/11/05 田島が原

2006/11/26 薬用植物園

2021/12/02 小平市 玉川上水緑地

2006/10/19 神代植物公園 2021/09/10 小平市

 コナラ属 Quercus(櫟 lì 屬) コナラ亜属 subgen. Quercus(櫟 lì 亞屬)の植物については、Quercus を参照。
 ドングリとは、本来クヌギの実を言うという。
 ドングリの別名は、地方によりシダミ、ジザイ、ジダングリ、ジダンボウ、ズンダ、ズンダグリなど多様。ドングリに団栗の字を当てるのも、正しいものかは不明。
 クヌギ・ツルバミの語源について諸説がある。『日本国語大辞典 第二版』のそれぞれの項を参照。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、釣樟は「和名久沼木」と、また挙樹は「和名久沼木」「日本紀私記云、歴木」と。橡は「和名都流波美」と。また櫟子は「和名以知比」、櫟梂は「和名以知比乃加佐」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)26橡実に、「ツルバミ和名鈔 ドングリ ジザイ但州 ジダンボウ上州 ジダングリ信州、以上実ノ名 クヌギ クノギ クニギ豫州 ウツナ同上 マキ備中 シダミ奥州 ジザイガシ但州 ウバボウ摂州、以上木ノ名」と。
 漢名橡(ショウ,xiàng)・杼(ショ,shù)には二義があり、一はクヌギ、一はトチノキ
 本州(岩手山形手南)・四国・九州・琉球・朝鮮・遼寧・華北・華東・兩湖・兩廣・西南・インドシナ・ヒマラヤに分布。
 『爾雅』釈木に、「栩(ク,xŭ)は、杼(ショ,shù)なり。〔柞(サク,zuò)樹なり。○栩は香羽の切、杼は省汝の切。〕」と。
 柞は、ナラの仲間の総称。
 賈思勰『斉民要術』(530-550)巻5に「種槐・柳・楸・梓・梧・柞」が載る。
 日本では、薪炭材、椎茸栽培のほだ木。
 団栗の笠の煮汁で染めた色を橡
(つるばみ)といい、黒に近い灰色、古代の衣服令では家人・奴隷など身分の低い人が着る衣の色。また喪服に用いた。平安時代には茜(あかね)を加えて、4位以上の袍の色。
 日本では、生薬ボクソク(樸樕)は クヌギコナラミズナラ又はアベマキの樹皮である(第十八改正日本薬局方)。 
 『日本書紀』巻7 景行天皇18年の条に、「秋七月の辛卯の朔甲午に、筑紫後国(つくしのくにのみちのしりのくに)の御木(みけ)に到りて、高田行宮(かりみや)に居(ま)します。時に僵れたる樹(き)有り。長さ九百七十丈。百寮(つかさつかさ)、其の樹を踏みて往来(かよ)ふ。時人(ときのひと)、歌(うたよみ)して曰はく、

   あさしも
(朝霜)の みけのさをばし(小橋)
     まへつきみ
(群臣) いわた(渡)らすも みけのさをばし

(ここ)に天皇(すめらみこと)、問ひて曰はく、「是何の樹ぞ」とのたまふ。一の老夫(おきな)有りて曰さく、「是の樹は歴木(くぬぎ)といふ。嘗(むかし)、未だ僵れざる先に、朝日の暉(ひかり)に当りて、則ち杵島山(きしまのやま)を隠しき。夕日の暉に当りては、亦、阿蘇山(あそのやま)を覆(かく)しき」とまうす。天皇の曰はく、「是の樹は、神(あや)しき木なり。故(かれ)、是の国を御木の国と号(よ)べ」とのたまふ」とある。巨木伝説にかこつけた、地名起源説話。

 『同』巻11 仁徳天皇58年5月に、「荒陵
(あらはか)の松林(まつばら)の南の道に当りて、忽(たちまち)に両(ふたつ)の歴木(くぬぎ)生ひたり。路を挟みて末は合へり」とある。連理の木は 瑞祥。
 『万葉集』に、

   橡
(つるばみ)の 衣は人皆 事無しと いひし時より 服(き)欲しく念ほゆ
       
(7/1311,読人知らず)
   橡の 解濯衣
(ときあらひぎぬ)の 怪しくも 殊に服欲しき この暮(ゆふべ)かも
       
(7/1314,読人知らず)
   橡の 衣
(きぬ)解き洗ひ まつち(真土)山 もとつ人には 猶如かずけり
       
(11/3009,読人知らず)
   橡の 袷の衣 裏にせば 吾強いめやも 君が来まさぬ
(11/2965,読人知らず)
   橡の 一重の衣 裏も無く あるらむ児ゆゑ 恋ひ渡るかも
(11/2968,読人知らず)
   くれなゐ
(紅)は うつ(移)ろふものそ つるはみ(橡)
     な
(馴)れにしきぬ(衣)に なほし(若)かめやも (18/4109,大伴家持)
 

   櫟の、冬葉のかげをくぐり居りし禽の羽色はふと見えにけり
     
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)

   冬の日のかたむき早く櫟原
(くぬぎはら)こがらしのなかを鴉くだれり
     
(1915,斉藤茂吉『あらたま』)
 



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