とちのき (栃木・橡) 

学名  Aesculus turbinata
日本名  トチノキ
科名(日本名)  ムクロジ科
  日本語別名  トチ、ウマグリ
漢名  日本七葉樹(ニホンシチヨウジュ, rìběn qīyèshù)
科名(漢名)  無患子(ブカンシ, wúhuànzĭ)科
  漢語別名  橡(ショウ,xiàng)、杼(ショ,shù)
英名  Japanese horse-chestnut
2024/03/16 
小石川植物園 
2024/04/11
植物多様性センター

2024/04/25 植物多様性センター 
2024/05/10 同上 
2024/05/17 同上 
2024/05/24 同上 
2024/06/08 同上 

2007/04/29 神代植物公園
2007/05/12 同上


2016/08/26 長野県小県郡長和町和田
     (旧中山道和田峠下)
 

2006/10/19 神代植物公園

 トチノキ属 Aesculus(七葉樹 qīyèshù 屬)には、ユーラシア・北アメリカに12-13種がある。

  A. assamica(長柄七葉樹・滇緬七葉樹)
 廣西・雲南・インドシナ・ヒマラヤ産 『中国本草図録』Ⅴ/2197
  ベニバナトチノキ A. × carnea(紅花七葉樹)
  シナトチノキ A. chinensis(A.chekiangensis, A.wilsonii;
         七葉樹・娑羅子・蘇羅子・開心果・桫欏樹・天師栗・猴板栗)
         河南・陝甘・江蘇・浙江・江西・兩湖・廣東・四川・貴州・雲南産
         『中薬志Ⅱ』pp.383-388 『中国本草図録』Ⅱ/0685,Ⅶ/3213 『(修訂) 中葯志』III/555-562
  セイヨウトチノキ(マロニエ) A. hippocastanum(歐洲七葉樹・猴板栗;
         E.Horse-chestnut;F.Marronnier)
  インドトチノキ A. indica
 東西ヒマラヤ産 
  A. parviflora(小花七葉樹)
USA南東部産 
  アカバナアメリカトチノキ
(アカバナトチノキ) A. pavia(北美紅花七葉樹;E.Buckeye)
  トチノキ A. turbinata(日本七葉樹)
    ウラゲトチノキ f. pubescens
  A. wangii(雲南七葉樹) 
雲南産 『雲南の植物Ⅲ』200・『中国本草図録』Ⅵ/200
   
 ムクロジ科 SAPINDACEAE(無患子 wúhuànzĭ 科)については、ムクロジ科を見よ。
 「和名とちノ意義不明」(『牧野日本植物図鑑』)。 
 ウマグリは、英名の和訳。 
 『本草和名』橡実に、「和名都留波美乃美」と。
 『倭名類聚抄』杼に、「和名止知」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』25 天師栗に、「トチノミ 弘法大師クハズノクリ
阿州 木」と。
 漢名 橡(ショウ,xiàng)には、二つの意味があり、一はトチノキ、一はクヌギ。杼(ショ,shù)も、一はクヌギ、一はトチノキ。
 なお、栃の字は、トチノキを表す字として日本で作られた国字、従って漢音は無い。
 北海道(札幌小樽以南)・本州・四国・九州に分布。中国では上海・杭州・青島などの城市で栽培。
 葉は、大小不ぞろいの 5-7片の小葉からなる、大型の掌状複葉。
 中国では、A.chinensis(七葉樹)や A.wilsonii(天師栗)の果実を、天師栗・娑羅子(シャラシ,suoluozi)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.383-388 
 実はサポニン・アロインなどを含み、苦い。これを十分にアク抜きして澱粉を取り、栃餅・栃粥などを作る。日本では、縄文時代から食用にされてきた。
 トチの澱粉から麺を打つときに用いる丸棒を、栃麺棒(とちめんぼう)という。
 一説に、栃の粉は粘性に乏しいので、麺に打つときに手早く扱う必要がある。ここから、忙しいこと・あわててうろたえることや、そのような人を「とちめんぼう」と言う。
 ここからさらに派生して、あわててへまをすることを「とちる」と言う。
 
   秋深橡子熟   秋深くして橡子
(しょうし)熟し、
   散落榛蕪崗   散落す、榛蕪
(しんぶ)の崗(おか)
   傴傴黄髮媼   傴傴
(くく)たり、黄髪の媼(おうな)
   拾之踐晨霜   之れを拾って 晨霜
(しんそう)を践(ふ)む。
   移時始盈掬   時を移して 始めて掬
(きく)に盈(み)ち、
   盡日方滿筐   日を尽して 方
(まさ)に筐(かご)に満つ。
   幾曝復幾蒸   幾
(いく)たびか曝(さら)し 復(ま)た幾たびか蒸し、
   用作三冬糧   用
(もっ)て三冬の糧(かて)と作(な)す。
      皮日休
(833-883?)「橡媼嘆」より
 
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   やまふかみ いは
(岩)にしだ(垂)るゝ 水ためん かつがつお(落)つる とちひろ(拾)ふほど
 

   木曾のとち浮世の人のみやげ哉 
(芭蕉,1644-1694)
 

   橡の太樹
(ふとき)をいま吹きとほる五月(さつき)かぜ
     嫩葉
(わかば)たふとく諸(もろ)む向きにけり 
   かんかんと橡の太樹の立てらくを背向
(そがひ)にしつつわれぞ歩める
     (1914,斉藤茂吉『あらたま』)
   わが心たひらになりて快し落葉をしたる橡の樹
(き)みれば
     
(1941,齋藤茂吉『霜』)
 
 栃木県の県花。
 パリの並木として有名なマロニエ marronnier は、ヨーロッパ産の同属異種セイヨウトチノキ A.hippocastanum。



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