しらかば (白樺)
学名 |
Betula platyphylla (B.alba var.japonica, B.pendula var.japonica, B.tauschii,
B.platyphylla var.tauschii, B.platyphylla var.pluricostata, B.platyphylla
var.japonica, B.platyphylla var.kamtschatica, B.platyphylla var.mandshurica) |
日本名 |
シラカバ |
科名(日本名) |
カバノキ科 |
日本語別名 |
カバ・カンバ・カバノキ、シラカンバ・シロキ・シラハリ、カンバゾウシ、ガンピ、 |
漢名 |
白樺(ハクカ,báihuà) |
科名(漢名) |
樺木(カボク,huàmù)科 |
漢語別名 |
樺樹、樺木、樺皮樹、粉樺 |
英名 |
Broad leaf birch, Japanese white birch, Silver birch |
2010/05/03 群馬県浅間高原 |
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2006/03/27 三芳町竹間沢 (植栽) |
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下垂する雄花序と、小型の雌花序 |
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2004/04/02 同上 |
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2007/04/09 同上 |
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2016/05/04 茅野市北山 |
2012/08/03 同左 |
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2010/08/26 長野県志賀高原 朝日を浴びて |
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2004/10/06 跡見学園女子大学新座キャンパス (植栽) |
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2006/10/26 長野県白樺湖 |
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2008/11/19 跡見学園女子大学新座キャンパス (植栽) |
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2006/10/26 長野県霧が峰 |
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2006/10/26 長野県蓼科山 |
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2004/12/26 跡見学園女子大学新座キャンパス |
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辨 |
Betula platyphylla の下には、従来次のような種内分類群を区別してきた。
コウアンシラカバ var. platyphylla(白樺・樺樹・樺木・樺皮樹)
『雲南の植物Ⅰ』160・『中国本草図録』Ⅵ/2534・『週刊朝日百科 植物の世界』8-101
シセンカンバ var. szechuanica 中国(四川)産
シラカバ var. japonica
エゾノシラカンバ var. kamtschatica
カラフトシラカンバ(マンシュウシラカンバ) var. mandshurica(B.mandshurica,
B.japonica var.sachalinensis)
エゾノオオシラカンバ var. pluricostata
しかし今日では、日本・朝鮮・漢土・モンゴリア・シベリアに分布するこの類の植物を Betula platyphylla として包括する考え方が、日中ともに強い。
(ここでは『改訂新版 日本の野生植物』及び『植物智』に従う)。
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また、Betula platyphylla を、オウシュウシラカバ Betula pendula に統合し、その全体を次の3亜種に整理する説がある(Kew植物園はこの考え方)。
subsp. pendula(バイカル湖以西に分布)
subsp. mandshurica(バイカル湖以東~北米に分布、B.platyphylla はここに入る)
subsp. szechuanica(中国の西北・西南・チベットに分布)
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カバノキ科 Betulaceae(樺木 huàmù 科)には、6属100-170種がある。
ハンノキ属 Alnus(榿屬)
カバノキ属 Betula(樺木屬)
シデ属 Carpinus(鵝耳櫪屬)
ハシバミ属 Corylus(榛屬)
アサダ属 Ostrya(鐵木屬)
ハシバミモドキ属 Ostryopsis(虎榛子屬) 中国に2種
ハシバミモドキ O. davidiana(虎榛子・胡榛子・稜楡・榛子)
遼寧・内蒙古・河北・山西・陝甘・四川産
ヒメハシバミモドキ O. nobilis(滇虎榛)
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カバノキ属 Betula(樺木 huàmù 屬)には、北半球の温帯・亜寒帯に40-60種がある。
B. albosinensis(紅樺・紅皮樺) 華北・西北・河南・湖北・四川・雲南産 『雲南の植物Ⅰ』160
キハダカンバ B. alleghaniensis
B. alnoides(西樺・西南樺木・蒙自樺木) 廣東・雲南・インドシナ・ヒマラヤ産
アポイカンバ(ヒダカカンバ・マルミカンバ) B. apoiensis
北海道アポイ産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
B. austrosinensis(華南樺) 湖南・兩廣・四川・貴州・雲南産
B. calcicola(岩樺) 四川・雲南産 『雲南の植物Ⅰ』161
チチブミネバリ B. chichibuensis 本州(秩父・岩手)産 絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
トウカンバ B. chinensis(B.jiaodongensis, B.liaotungensis, B.ceratoptera,
B.exaltata, B.chinensis var.nana, B.chinensis var.angusticarpa;
堅樺・小樺木・杵楡・垂楡)
朝鮮・遼寧・黑龍江・華北・陝甘・山東産
ウラジロカンバ(ネコシデ) B. corylifolia 本州(近畿以北)産
チョウセンミネバリ B. costata(B.ermanii var.japonica, A.nikoensis,
B.ermanii var.costata;碩樺・驢脚樺・風樺・千層樺)
本州(中部)・朝鮮・遠東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・河北産
B. cylindrostachya(長穗樺) 雲南・チベット産
B. dahurica
ヤエガワカンバ(コオノオレ) var. dahurica (B.maackii;黑樺・棘皮樺・千層樺・樺樹)
北海道・本州(中部)・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・モンゴリア・ウスリー・アムール産
『中国本草図録』Ⅵ/2533
ヒダカヤエガワ var. okuboi 北海道・択捉島産
B. delavayi(高山樺・大葉高山樺・崖樺) 四川・雲南・チベット産
ダケカンバ(ソウシカンバ) B. ermanii (嶽樺 yuèhuà)
ヒメカンバ B. exilis
コウアンヒメオノオレ B. fruticosa(柴樺・叢枝樺・叢樺)
朝鮮(北部)・黒龍江・東シベリア・極東ロシア産
ジゾウカンバ(イヌブシ) B. globispica 本州中部産
B. gmelinii(砂生樺) 朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・モンゴリア・東シベリア・ザバイカル産
ヨグソミネバリ(アズサ・ミズメ・アズサカンバ) B. grossa 本州(岩手新潟以南)・四国・九州産
B. halophila(鹽樺) 新疆産
B. humilis(沼樺・甸生樺) 中歐・ロシア・中央アジア・シベリア・モンゴル・オホーツク産
B. insignis(香樺) 兩湖・四川・貴州・雲南産
B. jinpingensis(金平樺) 雲南産
B. jiulungensis(九龍樺) 四川産
B. luminifera(亮葉樺・光皮樺・樺角・花膠樹) 『中国本草図録』Ⅳ/1581
陝甘・湖北・江西・浙江・兩廣・四川・貴州・雲南産
B. mandshurica(東北白樺) 『中国本草図録』Ⅱ/0521
ウダイカンバ(サイハダカンバ) B. maximowicziana(B.candelae)
北海道・本州(岐阜以北)産。ウダイとは 鵜飼の松明に用いたことから
B. microphylla(小葉樺) 新疆・モンゴル・シベリア産
B. middendorfii(扇葉樺) 大興安嶺・東シベリア・極東ロシア産
ヤチカンバ(ヒメオノオレ・ルクタマカンバ) B. ovalifolia(B.yoshimurae, B.tatewakiana,
B.humilis var.tatewakiana;油樺・油樺條子・卵葉樺)
北海道・樺太・朝鮮(北部)・吉林・黒龍江)・ウスリー産
絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
オウシュウシラカバ B. pendula(B.verrucosa;垂枝樺・新疆白樺・阿爾泰樺・疣枝樺・疣皮樺)
歐亞のバイカル湖以西に分布。『週刊朝日百科 植物の世界』8-100
シラカバ(シラカンバ) B. platyphylla(白樺 báihuà)
B. potaninii(矮樺) 甘粛・四川産
ケカンバ B. pubescens 歐亞のバイカル湖以西に分布
B. rhombibracteata(菱苞樺) 雲南産
B. rotundifolia(圓葉樺) シベリア・モンゴル・新疆産
オノオレ(オノオレカンバ・アズサミネバリ) B. schmidtii(賽黑樺)
北海道・本州(中部以北)・朝鮮・遼寧・吉林・ウスリー産
B. tianschanica(天山樺) 新疆天山産
B. utilis(糙皮樺・喜馬拉雅銀樺)『週刊朝日百科 植物の世界』8-103
河北・西北・四川・貴州・雲南・チベット・ヒマラヤ産
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訓 |
和名しらかばは、白いかば。カバの語源については、かにはを見よ。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)31に、樺木は「カバノキ信州 クサゞクラ カンバ ウダイマツ共同上 シラカバ奥州 ホンゴウザクラ ヤテラシ共同上」、「又コノ皮能モユル者故ニ、雨中ノ炬火(タイマツ)ニ作リ、或ハ鸕鷀(ウ)ヲ使テ魚ヲ捕時ノ火把トス、故ニ信州ニテ ウダイマツト云」と。 |
漢語の樺(カ,huà)は、カバノキ属 Betula(樺木 huàmù 屬)の総称、なかでも、一般に樺樹・樺木と呼ばれるものはシラカバ。 |
属名は、ケルト語の樺の木 betu から。 |
説 |
北海道・本州(中部以北)・朝鮮(北部)・遼寧・吉林・黑龍江・華北・西北・チベット・モンゴリア(東部)・千島・樺太・東シベリアに分布。 |
樹皮が白いのは、外皮に蝋質を分泌するため。
燃えやすいのは、若い枝に油脂点があるため。 |
誌 |
中国では、シラカバなどの柔らかい樹皮を樺樹皮と呼び、薬用にする(〇印は正品)。 『全国中草葯匯編』上/661
Betula mandshurica(東北白樺)
オウシュウシラカバ Betula pendula(B.verrucosa;垂枝樺・新疆白樺・阿爾泰樺)
〇シラカバ B. platyphylla(白樺 báihuà) |
かつて、『万葉集』に詠われるカニハはシラカバであるとする説が唱えられたが、今日では否定されている。かにはを見よ。 |
樹皮の白さを利用して、建材・工芸材などに用いる。
火持がよいので薪としても用い、地方により樹皮をお盆の迎え火・送り火に用いる。 |
長野県の県木。 |
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