かわらなでしこ (河原撫子) 

学名  Dianthus superbus var. longicalycinus
日本名  カワラナデシコ 
科名(日本名)  ナデシコ科
  日本語別名  ナデシコ、ヤマトナデシコ(大和撫子)、トコナツ(常夏)、ヒグラシグサ、カタミグサ
漢名  瞿麥(クバク,qumai)、長萼瞿麥(チョウガククバク,chang'e qumai)
科名(漢名)  石竹(セキチク,shizhu)科
  漢語別名  紅花瞿麥、野麥、大菊、蘧麥(キョバク,qumai)、地面、木碟花、剪刀花、十樣景
英名  Fringed pink

2008/07/24 長野県霧ケ峰

2011/08/14 長野県八子ケ峰


2005/12/20 学内 (栽培品) 

 ナデシコ科 Caryophyllaceae(石竹科)には、約70属1750-2000種がある。
   Acanthophyllum(刺葉屬)
     A. pungens(刺葉)
   ムギセンノウ属 Agrostemma(麥仙翁屬)
   ノミノツヅリ属 Arenaria(蚤綴屬)
   Brachystemma(短瓣花屬)
     B. calycinum(短瓣花)
   ミミナグサ属 Cerastium(卷耳屬)
   ナンバンハコベ属 Cucubalus(狗筋蔓屬)
 1属1種
   ナデシコ属 Dianthus(石竹屬) 約300種
   ヤンバルハコベ属 Drymaria(荷蓮豆草屬) 
約50種
     ネバリハコベ D. cordata(荷蓮豆草・菁芳草・水藍靑・水氷片・穿綫蛇・
          有米菜・河乳豆草・對葉蓮・荷蓮豆草)『中国本草図録』Ⅰ/0051
       オムナグサ var. pacifica
     ヤンバルハコベ
(ネバリハコベ) D. diandra
   Gymnocarpos(裸果木屬)
     G. przewalskii(裸果木)
   カスミソウ属 Gypsophila(霞草屬・絲石竹屬) 
約130種
   コゴメビユ属 Herniaria(治疝草屬)
     コゴメビユ H. glabra(治疝草)
   カギザケハコベ属 Holosteum(硬骨草屬)
     カギザケハコベ H. umbellatum
   ハマハコベ属 Honkenya 
2種
     H. frigida
極東ロシア産
     H. peploides
       ハマハコベ var. major
       キチノハマツメクサ var. peploides
ヨーロッパ産
   ハナハコベ属 Lepyrodiclis(薄蒴草屬)
     ハナハコベ L. holosteoides(薄蒴草)
ユーラシア産。『中国雑草原色図鑑』53
   センノウ属 Lychnis(剪秋羅屬)
   ウシハコベ属 Malachium(牛繫縷屬)
   タカネツメクサ属 Minuartia(高山漆姑屬) 
約370。近年はノミノツヅリ属 Arenaria に統合
   フシグロ属 Melandryum(女婁菜屬) → マンテマ属 Silene(蠅子草屬)
   オオヤマフスマ属 Moehriagia(種阜草屬)
   ウシハコベ属 Myosoton
   コモチナデシコ属
(ハリナデシコ属) Petrorhagia
   Polycarpaea(白鼓釘屬)
     P. corymbosa(白鼓釘・滿天星草)
   ヨツバハコベ属 Polycarpon(多莢草屬)
     P. indicum(多莢草)
     ヨツバハコベ P. tetraphyllum(Mollugo tetraphyllum)
   Psammosilene(金鐵鎖屬)
     P. tunicoides(金鐵鎖・昆明沙參・獨釘子)
   ワチガイソウ属 Pseudostellaria(假繫縷屬・孩兒參屬) 
北半球に15種
     P. davidii(蔓假繫縷・蔓孩兒參)
     ワチガイソウ P. heterantha(異花假繫縷)
     ワダソウ P. heterophylla(異葉假繫縷・孩兒參・太子參)
『中薬志Ⅰ』pp.104-106
     ナンブワチガイソウ P. japonica(脈毛孩兒參)
     P. maximowicziana(假繫縷・矮小孩兒參)
     ヒゲネワチガイソウ P. palibiniana
     クシロワチガイソウ P. sylvatica(狹葉假繫縷・狹葉孩兒參)
   ツメクサ属 Sagina(漆姑屬)
   サボンソウ属 Saponaria(石鹼花屬)
   シバツメクサ属 Scleranthus
     シバツメクサ S. annuus
ヨーロッパ原産
   マンテマ属 Silene(蠅子草屬) 
約400種
   オオツメクサ属 Spergula(大爪草屬) 
ユーラシアに5種
     ノハラツメクサ S. arvensis(大爪草)
       オオツメクサ var. sativa 
ヨーロッパ原産
       オオツメクサモドキ var. maxima
   ウシオツメクサ属 Spergularia(擬漆姑屬)
     ウシオハナツメクサ S. bocconii
地中海地方原産
     ウシオツメクサ S. marina(擬漆姑)
     ウスベニツメクサ S. rubra 
北半球の温帯に分布
   ハコベ属 Stellaria(繫縷屬) 
約120属
   Telephium
     T. imperati
地中海地方産
   Thylacospermum(嚢種草屬)
     T. caespitosum(簇生嚢種草)
   Tunica(膜萼花屬)
     T. stricta(直立膜萼花)
   ドウカンソウ属 Vaccaria(王不留行屬)
 1属1種 
 ナデシコ属 Dianthus(石竹屬)には、次のようなものがある。

   オヤマナデシコ D. alpinis アルプス東部原産
   D. amtifolia(綫葉石竹)
   D. amurensis(東北石竹)
   ノハラナデシコ D. armeria(E.Deptford pink)
ヨーロッパ原産、日本の所々に帰化
   ビジョナデシコ(ヒゲナデシコ・アメリカナデシコ) D. barbatus(鬚苞石竹)
   D. caesius(D. gratianopolitanus)
中部ヨーロッパ・イギリス原産
   D. callizonus
ルーマニア(トランシルバニア)原産
   ホソバナデシコ D. carthusianerum
外来種、観賞用に栽培
   オランダセキチク
(ジャコウナデシコ・カーネーション・アンジャベル) D. caryophyllus
        (麝香石竹・香石竹・康納馨・紅茂草;E.Carnation)
   セキチク
(カラナデシコ) D. chinensis(D.amurensis;石竹・洛陽花)
         
『中国本草図録』Ⅲ/1100・『中国雑草原色図鑑』52
     トコナツ var. semperflorens
日本で江戸時代に作った変種
     イセナデシコ var. laciniatus
同上
     var. subulifolius(蒙古石竹) 『中国本草図録』Ⅸ/4094
     var. morii(高山石竹)
 『中国本草図録』Ⅲ/1101
   ヒメナデシコ(オトメナデシコ) D. deltoides (少女石竹)外来種、観賞用に栽培
   D. glacialis
 中・東部アルプス原産
   D. gratianopolitanus 
西・中部ヨーロッパ原産
   D. haematocalyx 
バルカン半島原産
   ハマナデシコ
(フジナデシコ) D. japonicus
   ヒメハマナデシコ D. kiusianus
   ホタルナデシコ D. knappi 外来種、観賞用に栽培
   D. longicalyx(長萼瞿麥。カワラナデシコか)
   D. neglectus 東部ピレネー・アルプス原産
   D. orientalis(繸裂石竹・東方石竹)
   タツタナデシコ(トコナデシコ) D. plumarius (常交石竹) オーストリア乃至シベリアの原産
   D. ramosissimus(多分枝石竹)
   D. repens(簇莖石竹) 『中国本草図録』Ⅸ/4095
   シナノナデシコ
(ミヤマナデシコ) D. shinanensis
   D. soongoricus(準爾石竹)
   D. subulifolius(絲葉石竹)
 『中国本草図録』Ⅵ/2569
   D. superbus
     エゾカワラナデシコ var. superbus(瞿麥;E. superb pink)
          
 『中国本草図録』Ⅲ/1102
     カワラナデシコ var. longicalycinus(長萼瞿麥) 『中国雑草原色図鑑』52
       ヒロハカワラナデシコ f. latifolius
     タカネナデシコ var. speciosus
   D. sylvestris
ピレネー・アルプス・アペニン原産
   D. versicolor(興安石竹)
 『中国本草図録』Ⅵ/2570 
 なお、一見ナデシコに似た観賞用の花卉に、クサキョウチクトウがある。
 日本の古名は 単になでしこ(撫子)『万葉集』に見える。「なでるようにして大切にあつかう子ども。愛する子。愛児」の意(『日本国語大辞典(第二版)』)で、この花が小さくて愛らしい様子から。
 かわらなでしことは、本種がしばしば川原に
生えることから。近世以降の呼称である。
 『古今集』(ca.914)『源氏物語』(ca.1004-1012)には、とこなつ(常夏)の名で詠われている。本種の花期が 初夏から晩秋までたいへんに長いことから。
  
(なお、今日園芸品として売られているトコナツは、セキチクから江戸時代に作り出された四季ざきの品種 var. semperflorens を指しており、古典に見られる原義とは異なる)。
 やまとなでしことは、カラナデシコに対していう呼び方。
 本種は日本土産種であるから、古くはたんになでしこと呼ばれた。のちに 同属で中国産のセキチク D.chinensis が入ると、在来種をやまとなでしこ、外来種をからなでしこと呼んで区別した
 漢名の瞿麥は、種子が麦・燕麦に似ていることから。
 瞿は、両旁に生じる意で、瞿麦は穂が旁に生じることから
(以上、本草綱目)
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)瞿麦に、「和名奈天之古」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)瞿麦に、「和名奈天之古、一云止古奈豆」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』12(1806)瞿麦に、「トマリグサ ナツカシグサ チゝコグサ ヒクレグサ トコナツ
已上古名 ナデシコ古今通名 カハラナデシコ ヤマトナデシコ チヤセンバナ奥州」と。
 属名 Dianthus は「神 Dios の花 anthos」。
 英名の fringed は「房飾りのついた」、pink は、なでしこ、あるいはなでしこの花。
 オランダ語聖霊降臨祭 Pinkster に由来する、という。
 カワラナデシコは、日本(本州・四国・九州)・朝鮮・中国(全国)・臺灣などに分布。埼玉では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
 エゾカワラナデシコは、広くユーラシア大陸
(中部以北。中国では全国)から日本(本州中部以北・北海道)にかけて分布。
 中国では、カワラナデシコ或いはセキチクの全草・根を瞿麥と呼び、またその種子を瞿麥子と呼び、薬用にする。
 また、地方により、
   D. amtifolia (綫葉瞿麥) 甘肅 
   D. amurensis (東北石竹) 
東北 
   D. orientalis (東方石竹) 
寧夏・新疆・西藏 
   D. subulifolius (絲葉石竹) 
東北 
   D. versicolor (興安石竹) 
東北 
などを瞿麥として用いる。
 日本では、文献上の初見は『出雲国風土記』(733)の「瞿麦」。
 『万葉集』に、石竹・瞿麦をなでしこと訓む。詳しくは、文藝譜を見よ。
 秋の七草の一であり、人々は野辺にさく花を摘んで楽しんだ。

   射目立てて 跡見
(とみ)の岳辺(をかべ)の 瞿麦の花
     総
(ふさ)手折り 吾はゆきなむ 奈良人の為 (8/1549,紀鹿人)
   高円の 秋の野の上の 瞿麦の花 うらわかみ 人の挿頭
(かざ)しし 瞿麦の花
         (8/1610,丹生女王)
   野邊見れば 瞿麦の花 咲きにけり
       吾が待つ秋は 近づくらしも
(10/1972,読人知らず)

 野にあるナデシコは、庭に移し植えて愛でた。

   ひともと
(一本)の なでしこう(植)ゑし そのこころ(心)
     たれ
(誰)にか見せむと おも(思)ひそめけむ
        
 (18/4070,大伴家持。「庭中の牛麦花を詠む歌」。牛麦は、瞿麦と諧音)
   吾が屋外
(やど)に 蒔きし瞿麦 何時しかも 花に咲きなむ なそ(比)へつつ見む
      
(8/1448,大伴家持)
   吾が屋前の 瞿麦の花 盛りなり 手折りて一目 見せむ児もがな
      
(8/1496,大伴家持「石竹花歌」)
   朝毎に 吾が見る屋戸の 瞿麦の 花にも君は ありこせぬかも
      
(8/1616,笠郎女大伴家持に贈る歌)

 人々は、ナデシコの花に 恋人の姿を重ねて見ていた。

   秋さらば 見つつ思(しの)べと 妹が殖ゑし
      屋前
(やど,には)の石竹 開(さ)きにけるかも
      
(3/464,大伴家持「砌(みぎり)の上(ほとり)の瞿麦の花を見て作る歌」)
   石竹の その花にもが 朝な旦な 手に取り持ちて 恋ひぬ日無け (3/408,大伴家持)
   隠りのみ 恋ふれば苦し 瞿麦の 花に開き出よ 朝な旦な見む
(10/1992,読人知らず)

   おほきみの とほのみかどと ま
(任)きたまふ 官のまにま
   みゆきふる こし
(越)にくたり来 あらたまの としの五年
   しきたへの 手枕まかず ひもとかず まろ宿
(ね)をすれば
   いぶせみと 情
(こころ)なぐさに なでしこを や戸(宿)にまきおほし
   夏ののの さゆりひきうゑて 開く花を いで見るごとに
   なでしこが そのはなづま
(花妻)に さゆり花 ゆり(後)もあはむと
   なぐさむる こころしなくは あまさかる ひな(鄙)に一日も あるべくもあれや
     反歌
   なでしこが 花見るごとに をとめらが ゑまひのにほひ おもほゆるかも
   さゆり花 ゆりも相はむと したはふる こころしなくは 今日もへ
(経)めやも
      
(18/4113;4114;4115,大伴家持「庭の中の花に歌を作る」)
 
 やまとなでしこの語は、素性法師(9c.末-10c.初)の次の歌に初見。

   我のみや あはれと思はん 蛬(きりぎりす) なくゆふかげの やまとなでしこ
        (『寛平后宮歌合』(893)・『古今和歌集』(ca.914)所収)

 清少納言『枕草子』(ca.1000)第67段「草の花は」には、「草の花は、なでしこ。から(唐)のはさらなり、やまと(大和)のもいとめでたし」とある。
 からなでしこの語の初見は『栄華物語』
(11c.末)という。
 『八代集』に、

   ちりをだに すゑじとぞ思ふ さきしより いもとわ
(我)がぬる とこ夏の花
     
(凡河内躬恒「となりより、とこなつの花をこひにおこせたりければ、をしみて、
         この歌をよみてつかはしける」、『古今集』。「常」と「床」とをかける)

   あなこひし 今もみてしが 山がつの かきほにさける やまとなでしこ
     
(よみ人しらず、『古今集』)

   ひとしれず わがしめしのゝ とこなつは 花さきぬべき 時ぞきにける
   わがやどの かきねにうゑし なでしこは 花にさん南 よそへつゝ見む
   常夏の 花をだに見ば ことなしに すぐす月日も みじかかりなん
   常夏に おもひそめては 人しれぬ 心の程は 色に見え南
   色といへば こきもうすきも たのまれず 山となでしこ ちる世なしやは
(返し)
     
(以上、よみ人しらず、『後撰集』4夏)
   なでしこは いづれともなく にほへども をくれてさくは あはれなりけり
     
(藤原忠平「師尹(もろまさ)朝臣のまだわらはにて侍ける、とこ夏の花をゝりて
         もちて侍りければ、この花につけて、内侍のかみの方にをくり侍ける」、『後撰和歌集』4夏)

   なでしこの 花ちり方に なりにけり わが松秋そせ ちかくなるらし
     
(よみ人しらず、『後撰集』4夏)
   つまにおふる ことなしぐさを 見るからに たのむ心ぞ かずまさりける
     
(源庶明「人のもとにはじめてふみつかはしたりけるに、返事はなくて、たゞかみを
         ひきむすびてかへしたりければ」。ことなし草は、シノブか)
   をくつゆの かゝる物とは おもへども か
(枯・離)れせぬ物は なでしこのはな
     
(源庶明「かくてをこせて侍けれど、宮づかへする人なりければ、いとまなくて、
         又のあしたに、とこなつの花につけてをこせて侍ける」)

   かれずとも いかゞたのまむ なでしこの 花はときはの いろにしあらねば
     
(よみ人しらず「返し」、以上三首『後撰集』)
   打返し 見まくぞほし き故郷の やまとなでしこ 色やかはれる
     
(よみ人しらず「わすれにける女を思いでてつかはしける」、『後撰集』)

   ふたばより わがしめゆひし なでしこの はなのさかりを ひとにをらすな
     
(よみ人しらず「女ごもて侍ける人に、思ふ心侍てつかはしける」、『後撰集』)
   時鳥(ほととぎす) 鳴きつつ出づる あしびきの やまと撫子 咲きにけらしも
      (大中臣宣朝、『新古今和歌集』)

 西行
(1118-1190)『山家集』に、

   かきわけて おればつゆこそ こぼれけれ あさぢ
(浅茅)にまじる なでしこの花
   露おもみ その
(園)のなでしこ いかならん あらく見えつる ゆふだち(夕立)の空
 
 増基『いほぬし』(947-957頃)に、「いひちぎる事ありける人に。 契をきし大和なてしこ忘るなよみぬまに露の玉きえぬとも」と。
 紫式部『源氏物語』(1004-1012頃)帚木の巻、雨夜の品定めの一節。頭中将が夕顔との交情の一こまを思い出して、源氏に語るには・・・、
 久しく訪ねてこない頭中将に対して、夕顔が「なでしこの花をを
(折)りて」次の歌を贈った。

   山がつの かきほ
(垣穂)(荒)るとも をりをりに あはれはかけよ なでしこの露
     
(夕顔は、頭中将との間に生まれた娘である玉鬘を「なでしこ」に擬え、
      せめて娘に会いに来て、と求める)。

 これに対して頭中将は「おもひいでしままに、
(夕顔の家に)まかりたりしかば、れい(例)のうらもなき物から、いと物おもひがほ(顔)にて、あれたる家の、露しげきをながめて、むしのね(音)にきほへるけしき(気色)、むかし物がたりめきて、おぼえ侍りし。

   さきまじる 花はいづれと わかねども なほとこなつ
(常夏)に しくものぞなき
     
(頭中将の歌。夕顔をとこなつになぞらえ、交情の復活を求める)。

やまとなでしこ
(玉鬘を指す)をばさしおきて、まづ「ちり(塵)をだに(上欄に引く凡河内躬恒の歌を参照)」など、おや(親すなわち夕顔)のこころ(心)をとる。

   うちはらふ 袖もつゆけき とこなつに あらしふ
(吹)きそふ 秋もきにけり

とはかなげにい
(言)ひなして、まめまめしくうらみたるさまもみえず。」云々。 
 藤原孝標女『さらしな日記』(1059頃)に、「相摸の國になりぬ。・・・もろこしがはら〔神奈川県平塚から大磯の一帯〕といふ所も。すなごのいみじうしろきを二三日ゆく。夏はやまとなでしこのこくうすく。にしきをひけるやうになん咲たる。これは秋の末なれば。見えぬといふになを所々は打こぼれつゝ。あはれげに咲わたれり。もろこしがはら。やまとなでしこしも咲けんこそなど。人々おかしがる」と。
 『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、瞿麦(なてしこ)・石竹(せきちく)の品種を載せると。

   酔て寝むなでしこ咲ける石の上 
(芭蕉,1644-1694)
   霜の後撫子さける火桶哉 
(同)
 
 ピンク色というのは、西洋では(桃の花の色ではなく)なでしこの花の色である。
 その含意は、
(日本のピンク色が性的な意味を持つのに対して)、若さ・健康・清純など。


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