ひがんばな (彼岸花) 

学名  Lycoris radiata
日本名  ヒガンバナ
科名(日本名)  ヒガンバナ科
  日本語別名  マンジュシャゲ・マンジュサゲ(曼珠沙華・曼殊沙華)、シビトバナ(死人花)、ステゴバナ(捨子花)、イッシセン(一枝箭)
漢名  石蒜(セキサン,shisuan)
科名(漢名)  石蒜科
  漢語別名  烏蒜、老鴉蒜(ロウアサン,laoyasuan)、紅花石蒜、蟑螂花(ショウロウカ,zhanglanghua)、龍爪花(リョウソウカ,longzhuahua)・龍爪草頭、山烏毒(サンウドク,shanwudu)、一枝箭、野水仙
英名  Short tube lycoris, Cluster amaryllis

2005/10/01 三芳町竹間沢

2005/09/25 野川公園自然観察園

2005/10/01新座市大和田 三本木墓地 2004/09/17  三芳町竹間沢

2012/09/26 奈良県桜井市田武峰 談山神社


2006/03/26 薬用植物園

 ヒガンバナ科 Amaryllidaceae(石蒜科)には、65属約860種がある。
   Agave(龍舌蘭屬)
 → リュウゼツラン科 Agavaceae
   ユリズイセン属 Alstroemeria(六出花屬)
 → ユリ科 Liliaceae
   アマリリス属 Amaryllis(朱頂蘭屬)
   Brunsvigia
   クンシラン属 Clivia(君子蘭屬)
   ハマオモト属 Crinum(文殊蘭屬)
   キンバイザサ属 Curculigo(仙茅屬)
 → キンバイザサ科 Hypoxidaceae
   Cyrtanthus
アフリカに約50種
   Eucharis
南アメリカに8種
   マツユキソウ属 Galanthus(雪花蓮屬)
   Haemanthus(鋼球花屬)
 アフリカ南部に22種
     マユハケオモト H. albiflos(虎耳蘭)
     H. coccineus(鋼球花)
     H. katharinae(繍毬百合)
   ヒッペアストルム属 Hippeastrum(孤挺花屬)
   ヒュメノカリス属 Hymenocallis(水鬼蕉屬)
南北アメリカに25-30種
   コキンバイザサHypoxis(小金梅草屬) → キンバイザサ科 Hypoxidaceae
   Ixiolirion(鳶尾蒜屬)
     I. tataricum(鳶尾蒜)
   レウコユム属 Leucojum(雪片蓮屬)
   ヒガンバナ属 Lycoris(石蒜屬)
   スイセン属 Narcissus(水仙花屬)
   Nerine(尼潤蘭屬)
南アフリカに約23種
     N. sarniensis(根稀百合)
 『週刊朝日百科 植物の世界』10-57
   Pancratium(全能花屬)
   Polianthes(晩香玉屬)
 → リュウゼツラン科 Agavaceae
   Scadoxux
   Sternbergia
地中海地方・西アジアに8種
   タマスダレ属 Zephyranthes(玉簾屬)

 ヒガンバナ科の植物は、ユリ科 Liliaceae(百合科)に含めて考える説がある。 
 ヒガンバナ属 Lycoris(石蒜屬)には、日本・朝鮮(南部)・中国(華南)・インドシナ北部・ヒマラヤに約20種がある。

   シロバナマンジュシャゲ
(シロバナヒガンバナ) L. albiflora
   L. aurea(黄花石蒜・忽地笑・鐡色箭・大一枝箭)
        
 かつてショウキズイセンと同一種とされた。『週刊朝日百科 植物の世界』10-56
   L. longituba(長筒石蒜)
 中国(長江下流域)産
   ヒガンバナ
(マンジュシャゲ) L. radiata(石蒜・烏蒜・老鴉蒜・一枝箭)
     ワラベノカンザシ var. kazukoana
     シナヒガンバナ var. pumila
   キツネノカミソリ L. sanguinea
     オオキツネノカミソリ var. kiushiana
     ムジナノカミソリ var. koreana(L.koreana)
朝鮮
   L. sprengeri(換錦花)
 『中国本草図録』Ⅲ/1439
   ナツズイセン L.×squamigera(紫花石蒜・鹿葱)
   ショウキズイセン L.traubii 
 
 和名ヒガンバナは、しばしば墓地に植えられ、秋の彼岸のころに花を開くことから。
 曼珠沙華は、サンスクリット語マンジューシャカ manjusaka・パーリ語マンジューサカ manjusaka(「天上の花」) の音写。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』9(1806)に、「マンジユシヤケ シビトバナ テンガヒバナ共ニ同上 キツネノイモ同上下久世 ヂゴクバナ カラスノマクラ ケナシイモ キツネバナ備前 サンマイバナ勢州 ヘソビ同上粥見凶年ニハ団子トナシ食用スヘソビダンゴトイフ ホソビ同上 シタカリバナ同上松坂 キツネノタイマツ越前 キツネノシリヌグヒ同上 ステゴノハナ筑前 ステゴグサ同上 シタマガリ江州 ウシノニンニク同上 シタコジケ同上和州 ヒガングサ仙台 セウゼウバナ クハヱンサウ ワスレグサ共ニ同上 ノダイマツ能州 テクサリバナ同上 テクサリグサ播州 フジバカマ同上三ケ月 シビレバナ同上赤穂 ヒガンバナ肥前 ドクスミラ キツネノヨメゴ共ニ同上 オホスガナ熊野 オホヰゝ マンジユサケ共ニ同上 ユウレイバナ上総 カハカンジ駿州 スゞカケ土州 ウシモメラ石州 ハヌケグサ豊後 ジユズバナ豫州 イチヤニヨロリ同上今治 ホドヅラ同上松山 テアキバナ丹州笹山 キツネノアフギ濃州 ウシオビ同上 イツトキバナ防州 ヤマベウバナ越後 ハミズハナミズ加州」と。
 漢名は「蒜は根の状を以て名づけ、箭は茎の状を以て名づく」と(李時珍『本草綱目』)
 また、蟑螂(ショウロウ,zhanglang)とは、ゴキブリ。
 東アジアに分布。中国では長江流域以南に分布。
 日本のものは三倍体で結実せず、人家の周辺に自生しあるいは栽培される。したがって、日本には古く中国からもたらされたものが野生化とたものであろうと考えられている。
 鱗茎に澱粉を含み、食用にする。ただし、アルカロイドのリコリンを含むので、毒抜きが必要。
 漢方では、鱗茎を薬用にする。
 一説に、『万葉集』のイチシをヒガンバナとする

   路の邊の 壱師の花の いちしろく
(灼然) 人皆知りぬ 我が恋妻を
    
或る本の歌に曰はく、いちしろく 人知りにけり 継ぎてし念へば (11/2480,読人知らず)

 イチシの花が何であるのか、旧来諸説があり、定まらない。曰く、ギシギシ・クサイチゴ・エゴノキなど。
 イチシをヒガンバナと考えたのは牧野富太郎であり、のち松田修がその説を引き継いだ
(『増訂 万葉植物新考』1970)
 『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、「さんしこ 末。花あかし。葉ハすゐせんのごとく、花の時ぶんハ葉なし。秋ニ出る」とあるさんしこは、ヒガンバナか。次項の「唐さんしこ」はなつずいせんである。さんしこは、山慈姑かも知れない。 
 
  曼殊沙華咲くべくなりて石原へおり来む道のほとりに咲きぬ
     
(1920,雲仙岳温泉神社裏の石原にて。斎藤茂吉『つゆじも』)
 
 『妙法蓮華経』序品に、ブッダ(仏,釈尊,お釈迦様)が ラージャグリハ(王舎城)のグリドゥラクータ(霊鷲山,りょうじゅせん)で、多くの人々に教えを説き終わると、「この時、天は曼陀羅華(まんだらけ)・摩訶(まか)曼陀羅華・曼殊沙華(まんじゅしゃけ)・摩訶曼殊沙華を雨(ふら)して、仏の上及び諸(もろもろ)の大衆(だいしゅ)に散じ」た、という。
 曼陀羅華は、マーンダーラヴァ花の音写、「適意華」と意訳する。見る者の意を喜ばせる花、の意。曼殊沙華は、マンジューシャカ花の音写、「柔軟華」と意訳する。見る者に剛強から離れさせる花、の意。摩訶は、マハーの音写、「大」の意。
 この曼殊沙華が何の植物を指していたかは不明である。しかし、少なくともヒガンバナではない。(なお、曼陀羅華はデイコの仲間、Erythrina indica)。


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