すいせん (水仙) 

学名  Narcissus tazetta var.chinensis
日本名  スイセン
科名(日本名)  ヒガンバナ科
  日本語別名  ニホンズイセン、セッチュウカ(雪中花)、ニワキ
漢名  水仙(スイセン, shuĭxiān)
科名(漢名)  石蒜(セキサン,shísuàn)科
  漢語別名  雅蒜(ガサン,yăsuàn)、天葱(テンソウ,tiāncōng)、凌波仙子(リョウハセンシ, língbō xiānzĭ)、金盞銀臺(キンサンギンダイ,jīnzhăn yíntái)、
儷藍(レイラン, lìlán)、女星(ジョセイ,nǚxīng)
英名  Chinese narcissus
2008/02/14 千葉県 安房郡 鋸南町(きょなんまち)江月(えづき)
2004/12/08 跡見学園女子大学新座キャンパス
2004/12/22 同上
2006/02/03 同上
房ざきの八重ざき品   2005/01/21 跡見学園女子大学新座キャンパス
 漢名で、八重ざき品を玉玲瓏(ギョクレイロウ,yùlínglóng)という。

 Narcissus tazetta には次のような種内分類群がある。

  フサザキスイセン var. tazetta(歐洲水仙・法國水仙) 地中海地方原産 
  スイセン
var. chinensis(水仙)
浙江・福建の海浜地区に自生 
   
 スイセン属 Narcissus(水仙 shuĭxiān 屬)には、イベリアを主として、地中海地方・北アフリカに50-60種がある。

  N. atlanticus
モロッコ産
  N. 'Autumn Jewel'
  N. bicolor ピレネー産
  N. broussonetii
モロッコ産
  N. bulbocodium(圍裙水仙)
  
N. cantabricus イベリア・モロッコ・アルジェリア産
  N. cavanillesii
イベリア・モロッコ・アルジェリア産
  N. cuneiflorus(N.asturiensis)
イベリア産
  N. cyclamineus(仙客來水仙)
イベリア産
  N. hispanicus
南仏・イベリア産
  N. × incomparabilis(明星水仙・星冠水仙)
フランス産
  キズイセン N. jonquilla(長壽水仙・丁香水仙・燈心草水仙・長壽花)
  ツツザキスイセン N. minor
ピレネー産
  N. moschatus
  N. nevadensis
スペイン産
    subsp. longispathus(N.longispathus)
スペイン産
  カンランズイラン N.×odorus スペイン産
  シロバナスイセン N. papyraceus
地中海地方産
  クチベニズイセン N. poeticus(紅口水仙・紅水仙)
 南歐・東歐・ウクライナ産
  ラッパズイセン N. pseudo-narcissus(黃水仙)
  N. serotinus
イベリア・モロッコ産
  N. tazetta(歐洲水仙)
    フサザキスイセン var. tazetta(法國水仙)
地中海地方・西アジア・アフガニスタン産
    スイセン
(ニホンズイセン) var. chinensis(水仙・水仙花)
  シラタマズイセン N. triandrus(三蕊水仙)
 フランス・イベリア産
  N. viridiflorus
スペイン・モロッコ産
  N. watieri
モロッコ産
   
 ヒガンバナ科 Amaryllidaceae(石蒜 shísuàn 科)については、ヒガンバナ科を見よ。
 漢名水仙は、「此の物、卑湿の処に宜し。水を缺くべからず。故に水仙と名づく」と(李時珍『本草綱目』)
 和名スイセンは、漢名の漢音。
 『大和本草』水仙に、「金盞銀臺ヲ上品トシ、千葉ヲ下品トス」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「水仙 セツチウクワ
下学集 ハルタマ大阪 キンダイ房州 今ハ通名」と。
 学名の属名・英名は、ギリシア神話に現れる美少年ナルキッソス Narkissos から(下の誌を見よ)。
 なお、Narkissos とは narke(麻痺、昏睡、無気力などの意)の語からできた名で、スイセンの有毒な鱗茎に因む。
 種小名 tazetta は イタリアの小型コーヒーカップ、花の形から。
 漢名の金盞銀臺も、花の形から。
 なお、英名を daffodil というものは、ラッパズイセン
 本州(関東以西)・四国・九州・浙江・福建の海岸に生ずる。
 中国には、唐代以前にシルクロードを経て伝わった。
 日本には、古く中国から入った。
 一説に、遣唐使が(キクやアサガオと同様に)薬草としてもたらしたものだろうといい、一説に、海流に運ばれてきたものだろう、という。
 九条良経(1169-1206)の色紙にその姿が見え、『下学集』(1444)にその名が見える。
 根茎等にリコリンを含み、有毒。
 西方では、クレタ島の ミノア文明クノッソス宮殿の壁画に画かれる。
 16c.には八重ざき品種が記録され、この頃から品種改良が進められた。ことに19c.以降、多くの品種が作り出された。
 中国では、鱗茎を薬用にする。 『全国中草葯匯編』下/127  

   水仙や白き障子のとも移り 
(芭蕉,1644-1694)
   初雪や水仙のはのたはむまで 
(同)
   其にほひ桃より白し水仙花 
(同)
 

   その翌朝おしろいやけの素顔吹く水仙の芽の青きそよかぜ
     
(北原白秋『桐の花』1913)

 今日では、福井県の県花。
 ギリシア神話に現れる美少年ナルキッソス Narkissos は、泉の水面に映る自分の姿に恋をし、思いかなわぬままやつれて死んだ、そのあとにさいた花がスイセンである、という(Ovidius)。
 (この神話に歌われるスイセンは、クチベニスイセン N. poeticus であるという。)
 


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