辨 |
Narcissus tazetta には次のような種内分類群がある。
フサザキスイセン var. tazetta(歐洲水仙・法國水仙) 地中海地方原産
スイセン var. chinensis(水仙) 浙江・福建の海浜地区に自生
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スイセン属 Narcissus(水仙 shuĭxiān 屬)には、イベリアを主として、地中海地方・北アフリカに50-60種がある。
N. atlanticus モロッコ産
N. 'Autumn Jewel'
N. bicolor ピレネー産
N. broussonetii モロッコ産
N. bulbocodium(圍裙水仙)
N. cantabricus イベリア・モロッコ・アルジェリア産
N. cavanillesii イベリア・モロッコ・アルジェリア産
N. cuneiflorus(N.asturiensis) イベリア産
N. cyclamineus(仙客來水仙) イベリア産
N. hispanicus 南仏・イベリア産
N. × incomparabilis(明星水仙・星冠水仙) フランス産
キズイセン N. jonquilla(長壽水仙・丁香水仙・燈心草水仙・長壽花)
ツツザキスイセン N. minor ピレネー産
N. moschatus
N. nevadensis スペイン産
subsp. longispathus(N.longispathus) スペイン産
カンランズイラン N.×odorus スペイン産
シロバナスイセン N. papyraceus 地中海地方産
クチベニズイセン N. poeticus(紅口水仙・紅水仙) 南歐・東歐・ウクライナ産
ラッパズイセン N. pseudo-narcissus(黃水仙)
N. serotinus イベリア・モロッコ産
N. tazetta(歐洲水仙)
フサザキスイセン var. tazetta(法國水仙) 地中海地方・西アジア・アフガニスタン産
スイセン(ニホンズイセン) var. chinensis(水仙・水仙花)
シラタマズイセン N. triandrus(三蕊水仙) フランス・イベリア産
N. viridiflorus スペイン・モロッコ産
N. watieri モロッコ産
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ヒガンバナ科 Amaryllidaceae(石蒜 shísuàn 科)については、ヒガンバナ科を見よ。 |
訓 |
漢名水仙は、「此の物、卑湿の処に宜し。水を缺くべからず。故に水仙と名づく」と(李時珍『本草綱目』)。 |
和名スイセンは、漢名の漢音。
『大和本草』水仙に、「金盞銀臺ヲ上品トシ、千葉ヲ下品トス」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「水仙 セツチウクワ下学集 ハルタマ大阪 キンダイ房州 今ハ通名」と。 |
学名の属名・英名は、ギリシア神話に現れる美少年ナルキッソス Narkissos から(下の誌を見よ)。
なお、Narkissos とは narke(麻痺、昏睡、無気力などの意)の語からできた名で、スイセンの有毒な鱗茎に因む。 |
種小名 tazetta は イタリアの小型コーヒーカップ、花の形から。
漢名の金盞銀臺も、花の形から。 |
なお、英名を daffodil というものは、ラッパズイセン。 |
説 |
本州(関東以西)・四国・九州・浙江・福建の海岸に生ずる。
中国には、唐代以前にシルクロードを経て伝わった。 |
日本には、古く中国から入った。
一説に、遣唐使が(キクやアサガオと同様に)薬草としてもたらしたものだろうといい、一説に、海流に運ばれてきたものだろう、という。
九条良経(1169-1206)の色紙にその姿が見え、『下学集』(1444)にその名が見える。 |
根茎等にリコリンを含み、有毒。 |
誌 |
西方では、クレタ島の ミノア文明クノッソス宮殿の壁画に画かれる。
16c.には八重ざき品種が記録され、この頃から品種改良が進められた。ことに19c.以降、多くの品種が作り出された。 |
中国では、鱗茎を薬用にする。 『全国中草葯匯編』下/127 |
水仙や白き障子のとも移り (芭蕉,1644-1694)
初雪や水仙のはのたはむまで (同)
其にほひ桃より白し水仙花 (同)
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その翌朝おしろいやけの素顔吹く水仙の芽の青きそよかぜ
(北原白秋『桐の花』1913)
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今日では、福井県の県花。 |
ギリシア神話に現れる美少年ナルキッソス Narkissos は、泉の水面に映る自分の姿に恋をし、思いかなわぬままやつれて死んだ、そのあとにさいた花がスイセンである、という(Ovidius)。
(この神話に歌われるスイセンは、クチベニスイセン N. poeticus であるという。)
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