なす (茄子) 

学名  Solanum melongena
日本名  ナス
科名(日本名)  ナス科
  日本語別名  ナスビ
漢名  茄(カ,qié)
科名(漢名)  茄(カ,qié)科
  漢語別名  茄子(カシ,qiézi)、吊菜子(チョウサイシ,diaocaizi)、落蘇・落酥(ラクソ,luòsū)、矮瓜(ワイカ,aigua)
英名  Egg-plant

Solanum melongena
辨   ナス科
    ナス属


 

2005/07/11  三芳町竹間沢

 Solanum melongena には、果実の形・大きさ・色などに変異が多い。中国では、次の様な変種を区別する。
    ヘビナス var. anguinenum
    var. depressum(矮茄・鷄蛋茄)
 『中国本草図録』Ⅱ/0817
    var. esculentum(圓茄)
    var. serpentinum 
 ナス科 Solanaceae(茄 qié 科)には、世界の熱帯~温帯に約100属 約2600-2700種がある。

  ホオズキ属 Alkekengi(酸漿屬)

  Anisodus(山莨菪屬)
中国・ヒマラヤに約4種
    A. acutangulus(Scopolia acutangula;三分三・鋭萼東莨菪) 四川・雲南産
         『中国本草図録』Ⅷ/3792 『全國中草藥匯編』上 p.27-28 『(修訂)中葯志 』I/228-230
      var. acutangulus
      var. breviflorus
    A. carniolicoides(Scopolia carniolicoides;賽莨菪・七厘散・搜山虎)
         
四川・雲南産『全國中草藥匯編』上 p.27-28
      var. dentata(齒葉賽莨菪・小莨菪)
四川・雲南産『全國中草藥匯編』上 p.27-28
    A. stramoniifolius(A.luridus, A.mairei, Scopolia lurida, S.straminiifolia;
         鈴鐺子・搜山虎・喜馬拉雅東莨菪・麗江莨菪)
雲南・チベット・ヒマラヤ産
         
『全國中草藥匯編』上 p.27-28
      var. fischerianus(A.fischerianus;麗江山莨菪・三分三)
         雲南・チベット産 『中国本草図録』Ⅷ/3793・『全國中草藥匯編』上p.27
    A. tanguticus(Scopolia tangutica;山莨菪・唐古特莨菪・藏茄)
         
甘肅・青海・雲南・チベット産『全國中草藥匯編 上』pp.113-114,
         『全國中草藥匯編』上pp.113-114 『(修訂)中葯志 』I/223-227
         『中草藥現代研究』Ⅱp.542
      var. viridulus(黃花山莨菪) 青海産

  ヤマホオズキ属 Archiphysalis(地海椒屬)
東アジアに2種
    ヤマホオズキ A. chamaesarachoides(Physalis chamaesarachoides,
         Physalistrum chamaesarachoides, Archiphysalis kwangsiensis;
         廣西地海椒)
本州(関東・東海・紀伊半島)・四国・九州・臺灣・廣西産
    A.sinensis(Physalis sinensis;地海椒)
湖北・四川・貴州産

  ベラドンナ属 Atropa(顚茄屬)

  Atropanthe(天蓬子屬)
1-2種
    A. sinensis(Scopolia sinensis;天蓬子・新莨菪・搜山虎・白商陸)
         
湖北・四川・貴州・雲南産 『中草藥現代研究』Ⅱp.542 『全國中草藥匯編 上』p.164

  ルリマガリバナ属 Browallia(藍英花屬)
 熱帯米洲に約8種
    ルリマガリバナ
(マガリナデシコ) B. americana(B.grandiflora;美洲藍英花) 熱帯アメリカ産
    タイリンマガリバナ B. speciosa(藍英花) 熱帯アメリカ産
    ネバリマガリバナ B. viscosa 熱帯アメリカ産

  キダチチョウセンアサガオ属 Brugmansia(木曼陀羅屬)
南米に6-7種

  バンマツリ属 Brunfelsia

  ヒメツクバネアサガオ Calibrachoa(舞春花屬)
南北アメリカに約27-30種
    ヒメツクバネアサガオ C. parviflora(Petunia parviflora)

  トウガラシ属 Capsicum(辣椒屬)

  キチョウジ属 Cestrum(夜香樹屬)

  チョウセンアサガオ属 Datura(曼陀羅屬)

  ヒヨス属 Hyoscyamus(天仙子屬)

  メジロホオズキ属 Lycianthes(紅絲綫屬)
アジア&アメリカの熱帯・亜熱帯に約150種
    メジロホオズキ L. biflora(Solanum biflorum;紅絲綫・雙花紅絲綫・十萼茄・血見愁)
         
本州南部・四国・九州・琉球・臺灣・福建・江西・兩廣・四川・貴州・雲南産
         
『中国本草図録』Ⅰ/313 『全国中草葯匯編』下/5
    ムニンホオズキ L. boninensis(L.biflora var.glabra)
小笠原産
    L. laevis
      ヤエヤマメジロホオズキ var.kotoensis
琉球・臺灣産
    ツルコンロンソウ L. lysimachioides(單花紅絲綫)
         
兩湖・西南・兩廣・臺灣産 『中国本草図録』Ⅵ/2817

  クコ属 Lycium(枸杞屬)

  マンドラゴラ属 Mandragora(茄參屬)

  オオセンナリ属 Nicandra(假酸漿屬)

  タバコ属 Nicotiana(煙草屬)

  ギンサカズキ(ギンバイソウ) Nierembergia(賽亞麻屬)

  ノラナ属 Nolana(假茄屬)
南米太平洋岸・ガラパゴスに66-89種
    ノラナ N. paradoxa
チリ産
    ハイナス V. prostrata(N.humifusa subsp.humifusa)
ペルー産

  ツクバネアサガオ属 Petunia(碧冬茄屬)


  イガホオズキ属 Physaliastrum(散血丹屬) 3-7種
    イガホオズキ P. echinatum(Withania echinata;日本散血丹・山茄子)
         
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・河北・山東・遼寧・吉林・黑龍江・ロシア沿海地区産
    P. heterophyllum(Withania heterophylla;江南散血丹)
河南・両湖・江蘇・浙江・江西産
    アオホオズキ P. japonicum(P.savatieri, Withania japonica)
本州関東以西・四国・九州産
    P. kweichouense(Withania kweichouensis;散血丹)
貴州産
    P. sinicum(Withania sinica;華北散血丹・山茄子)
河北・山西産

  センナリホオズキ属 Physalis(燈籠果屬)
南北アメリカを主として、世界に約90-95種
    ナガエノセンナリホオズキ
(フウリンホオズキ) P. acutifolia(P.wrightii)
         
 北アメリカ原産
    ヒロハフウリンホオズキ
(センナリホオズキ) P. angulata(P.minima, P.ciliata;
         蘵・燈籠草・天泡子・小酸漿)
熱帯&亜熱帯アメリカ原産、
         
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・華東~雲南など世界に帰化
         
『中国本草図録』Ⅳ/1838,1839・『中国雑草原色図鑑』197 
         『(修訂) 中葯志』III/676-677 『全国中草葯匯編』下/222-223
    ショクヨウホオズキ P. grisea(P.pubescens var.grisea)
    ビロードホオズキ
(アメリカホオズキ) P. heterophylla 北アメリカ原産
    P. longifolia
      ウスゲホオズキ var. subglabrata(P.subglabrata)
北米原産
    ブドウホオズキ
(ケホオズキ・シマホオズキ) P. peruviana(燈籠果・小果酸漿・天泡果;
         E.Cape-gooseberry, Uchuba)
 南米原産、世界各地に帰化 『(修訂) 中葯志』III/677
    オオブドウホオズキ(キバナホオズキ) P. philadelphica(E.Tomatillo,
         Ground cherry, Tomate de cascarna)
メキシコ原産
    ヒメセンナリホオズキ
(センナリホオズキ) P. pubescens(苦蘵・毛酸漿
        ・燈籠草・天泡草・千生酸漿) 南北アメリカ原産。『中国本草図録』Ⅵ/2820
        
『全國中草藥匯編 上』p.519 『(修訂) 中葯志』III/676-677
    ウスゲホオズキ P. subglabrata
北アメリカ原産 

  フクロヒヨス属 Physochlaina(脬嚢草屬)
西&中央アジア・チベット・北東アジアに約8-12種
    P. infundibularis(華山參・華參・漏斗脬囊草・漏斗泡嚢草)
          河南・陝西・山西産 『中国本草図録』Ⅹ/4833
         『中藥志 I』p.8 『(修訂)中葯志 』I/231-234 『全國中草藥匯編 上』pp.378-379
    P. macrophylla(大葉脬囊草) 四川産 『中藥志 I』p.14
    フクロヒヨス P. physaloides(泡嚢草)
         河北・黑龍江・モンゴル・新疆・シベリア・カザフスタン産 『中国本草図録』Ⅱ/815
         『中草藥現代研究』Ⅱp.542 『(修訂)中葯志 』I/235-237

  Przewalskia(馬尿脬屬)
 1-2種
    P. tangutica(馬尿泡草・矮莨菪)
『中国本草図録』/2786
         『(修訂)中葯志 』I/238-241 『中草藥現代研究』Ⅱp.542 『全国中草葯匯編』下/53
         
甘肅・青海・四川・チベット・ヒマラヤ産

  ハコベホオズキ属 Salpichroa
南米に16-17種
    ハコベホオズキ S. rhomboidea
南アメリカ原産 

  サルメンバナ属 Salpiglossia
 アンデス南部に2種
    サルメンバナ S. sinuata

  ムレゴチョウ
(コチョウソウ)属 Schizanthus(蛾蝶花屬) 南米南部に12-13種
    ムレゴチョウ
(コチョウソウ) S. pinnatus(蛾蝶花) チリ南部産

  ハシリドコロ属 Scopolia(新莨菪屬・東莨菪屬)
歐洲・北東アジアに2-30種

  ラッパバナ属 Solandra(金盞藤屬)
メキシコ・熱帯アメリカに10-11種

  ナス属 Solanum(茄屬) 約1400種
      incl. Cyphomandra, Lycopersicon

  ハダカホオズキ属 Tubocapsicum(龍珠屬)
 2種
    T. anomalum
      ハダカホオズキ var. anomalum(龍珠・赤珠)
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・
         
臺灣・福建・浙江・江西・兩廣・四川・貴州・雲南・インドシナ・フィリピン・ボルネオ・アッサム産
      マルバハダカホオズキ var. obtusum(T.obtusum)
    ムニンハダカホオズキ T. boninense
小笠原産

  Withania(睡茄屬)
東・南・西アジア・地中海地方・アフリカに約10-20種
    W. coagulans
インド~イラン・ソマリア産
    W. somnifera(W.kansuensis;睡茄)
 甘肅・南&西アジア・アフリカ・地中海地方に産 
     
 ナス属 Solanum(茄 qié 屬)には、世界に約(1200-)1400-1700(-2000)種がある。
      incl. Cyphomandra, Lycopersicon

  サンゴナス S. aculeatissimum(牛茄子) 
『雲南の植物Ⅲ』247
  カザリナス
(ヒラナス) S. aethiopicum(S.integrifolium;紅茄) エチオピア原産
  アカミノイヌホオズキ S. alatum(S.villosum subsp.puniceum, S.nigrum var.miniatum,
         S.villosum subsp.miniatum, S.alatum;紅果龍葵・紅葵)
北米産
  テリミノイヌホオズキ S. americanum(S.nodiflorum, S.photeinocarpum, S.americanum
         var.nodiflorum)少花龍葵)
『中国本草図録』Ⅱ/0819・『中国雑草原色図鑑』199
  テンジクナスビ S. angivi
  S. aviculare(澳洲茄) ニュージーランド・オセアニア原産
  コダチトマト S. betaceum(Cyphomandra betacea;樹蕃茄;
         E.Treetomato, Tamarillo) 熱帯アメリカ産
  キンギンナスビ(ニシキハリナスビ) S. capsicoides(S.ciliatum)
         
熱帯アメリカ原産
  ワルナスビ(オニナスビ・ノハラナスビ) S. carolinense(北美刺龍葵) 北米産
  ムラサキハリナスビ S. citrullifolium
USA・メキシコ産
  S. coagulans(野茄・黃刺茄・黃水茄・黃天茄)
『中国本草図録』Ⅴ/2305・『中国雑草原色図鑑』198
  キダチイヌホオズキ S. diphyllum(黃果龍葵)
  S. donianum(S.verbascifolium)
メキシコ-グヲテマラ産
  セイヨウヤマホロシ S. dulcamara(歐白英・苦茄・蜀羊泉)
  ラシャナス(グミバナス) S. elaeagnifolium 南米産
  アメリカイヌホオズキ S. emulans(S.ptycanthum)
北米産
  ヤンバルナスビ S. erianthum(S. verbascifolium auct. non L.; 假煙葉樹・野茄樹)
         
琉球・臺灣・福建・兩廣・四川・貴州・雲南から世界の熱帯に産
         『雲南の植物Ⅱ』230 『中国本草図録』Ⅰ/0322 『全国中草葯匯編』上/787-788 
  アオナス S. gilo(E.Jilo) 
中央アフリカ原産か。ナイジェリアで栽培
  ルリヤナギ
(リュウキュウヤナギ) S. glaucophyllum 南米産
  ヤマホロシ S. japonense(S.gracilescens, S.japonense var.takaoyamense,
         S.dulcamara var.heterophyllum;野海茄)
         北海道・本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・西北・華東・湖南・兩廣産
         『中国雑草原色図鑑』201
  オキナワヒヨドリジョウゴ S. kayamae
琉球産
  S. khasianum(刺天茄)
 『中国本草図録』Ⅳ/1840
  ヒロハノホロシ S. kitagawae
  オニハリナスビ S. lasiocarpum(S.indicum;毛茄)
         
臺灣・兩廣・雲南・インドシナ・マレシア・パブアジア・豪州北東部産
  ツルハナナス S. laxum(S.jasminoides)
  ルソンナスビ S. luzoniense
  トマト S. lycopersicum(Lycopersicon esculentum;蕃茄)
    マメトマト var. cerasiforme(櫻桃小蕃茄)
  キダチハリナスビ S. linnaeanum
  ヒヨドリジョウゴ S. lyratum(白英)『中国雑草原色図鑑』198
  ヤイマナスビ
(セイバンナスビ) S. macaonense(S.lasiostylum;山茄)
         
琉球・臺灣・廣東・フィリピン産
  テリハナス S. macrocarpon(E.African eggplant) アフリカ象牙海岸・マダガスカルで栽培
  ツノナス
(キツネナス) S. mammosum(乳茄・五指茄;E.Fox face) 熱帯アメリカ産
  ダイオウナスビ S. mauritianum(野煙樹)
南米産 伊豆半島に帰化
  マルバノホロシ S. maximowiczii
本州関東以西・四国・九州・琉球産
  オオマルバノホロシ S. megacarpum
北海道・本州中部以北・千島・樺太産
  ナス S. melongena()
  イラブナスビ S. miyakojimense
琉球・臺灣産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
  S. muricatum(E.Peppino,Melon pear)
 アンデス(ペルー)原産
  S. myriacanthum(喀西茄)
 『雲南の植物Ⅱ』230
  オオイヌホオズキ S. nigrescens(S.memphiticum)
 南米産
  イヌホオズキ S. nigrum(龍葵)『中国雑草原色図鑑』199
  ハックナスビ S. peikuoense
  ヒメケイヌホオズキ S. physalifolium var. nitidibaccatum
 南米産
  ヤマヒヨドリジョウゴ S. pittosporifolium(S.hidetaroi;海桐葉白英・臺灣白英)

         
河北・安徽・浙江・江西・湖南・兩廣・臺灣・西南産
  S. pseudocapsicum
    ヒメタマサンゴ  var. diflorum(S. capsicastrum;珊瑚豆)
    タマサンゴ
(フユサンゴ・リュウノタマ) var. pseudocapsicum(珊瑚櫻・冬珊瑚)
  S. quitoense(E.Naranjillo, Lulo) エクアドル原産
  トマトダマシ S. rostratum 北米産
  ケイヌホオズキ S. sarrachoides 南米産
  ナンゴクイヌホオズキ S. scabrum(S.pterocaulon, S.guineense, S.nigrum var.guineense;
         木龍葵・白花仔草)
         
アフリカ・マダガスカル産
  ルリイロツルナス
(フサナリツルナスビ) S. seaforthianum 南米産 
  フルカワナスビ S. septemlobum(靑杞・蜀羊泉・紅葵)
         
遼寧・吉林・黑龍江・華北・安徽・江蘇・陝甘・四川・モンゴル・ザバイカル産
  ハリナスビ S. sisymbriifolium(蒜芥茄)
 南米産
  キダチイヌホオズキ S. spirale(旋花茄・旋柄茄)
         
湖南・廣西・雲南・インドシナ・スマトラ・ジャワ・ヒマラヤ産
  S. surattense(癲茄・丁茄・野蕃茄)
臺灣・福建・兩廣・雲南産 
         『中国本草図録』Ⅰ/0321、『全國中草藥匯編 上』p9.
  スズメナスビ
(セイバンナスビ) S. torvum(水茄) 中南米原産、琉球・臺灣・兩廣・雲南など世界の
        
熱帯に帰化 『雲南の植物Ⅲ』247・『中国本草図録』Ⅳ/1841・『中国雑草原色図鑑』200
        
『全国中草葯匯編』下/130
  ハゴロモイヌホオズキ S. triflorum  北米産
  ジャガイモ
(バレイショ) S. tuberosum(馬鈴薯・洋芋) 
  モンパナスビ S. undatum
アジア・アフリカ産
  キンギンナスビモドキ S. viarum 南米産
  ビロードイヌホオズキ(アカミノイヌホオズキ) S. villosum(S.nigrum var.villosum,
         S.luteum
)
歐亞・アフリカ産
  テンジクナスビ S. violaceum(S.indicum;刺天茄・紫花茄・金鈕扣)
         
植物智は S.indicum を S.violaceum のシノニムとする
         
IPNIは S.indicum を S.lasiocarpum のシノニムとする
         
YListは S.indicum は S.violaceum ではないとする
         
臺灣・フィリピンからアラビアまで熱帯アジアに産
         『雲南の植物Ⅱ』230・『中国本草図録』Ⅰ/0317・『全国中草葯匯編』上/326
  トゲハリナスビ
(ニシキハリナスビ) S. virginianum(S.xanthocarpum, S.surattense;
         黃果茄・大苦茄・野茄果)
臺灣・湖北・四川・雲南・インドシナ・印度・西アジア・エジプト産
         
『中国本草図録』Ⅰ/0323・『中国雑草原色図鑑』200
  ウエンドランドツルナス S. wendlandii(天堂花)
  オオバナナスビ S. wrightii(大花茄)
南米産
   
 漢語の茄という字は、茄(カ,jiā)と読めばハスの茎、茄(キャ,qié)と読めばナスを意味する。
 李時珍『本草綱目』28「茄」に、「頌曰く、段成式を按ずるに〔茄、音は加(カ,jiā)、乃ち蓮茎の名なり。今 茄菜を呼ぶに、其の音 伽(キャ,qié)の如し。未だ自る所を知らず〕と云う」と。 
 しかしながら、日本ではどちらの意味でもカと読みならわしているので、便宜上それに従う。
 和名ナスは、一説に「為す」であり、よく実がなることからという。
 牧野説は「和名ハ蓋シ茄子ニ由來セシナラン乎」(『牧野日本植物図鑑』)。
 『本草和名』及び『倭名類聚抄』茄子に、「和名奈須比」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』茄に、「ナスビ ナス」と。
    インド原産だが、野生は発見されておらず、S. insanum が原種だろうという。
 一説に、インドで野生のナスが発見され、とげが多く、果実は苦い、という。
 果実が苦くない栽培型は、インドから東方に広がり、B.C.5世紀以前に中国に入る。
 のち貿易商人により、5世紀にはペルシア・北アフリカに入り、13世紀にはヨーロッパに入った。
 今日では、世界の熱帯・温帯地方で広く栽培されている蔬菜。
 中国では賈思勰『斉民要術』に既に詳しい記述がある。
 日本では正倉院文書
(750)に見える。
 根を茄子根・茄根と呼び、薬用にする。『全国中草葯匯編』下/362-363
 「なすびに紫白青の三色あり。又丸きあり、長きあり、此内丸くして紫なるを作るべし。余はおとれり。丸きは味甘く和らかにして肉(み)実(じつ)し、料理に用ひ能く、煮てもみだりにとけくだくる事なし。かうの物其外にも専ら是を用ゆべし。」(宮崎安貞『農業全書』1697)
 「秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな」とは、秋のナスは味がよいので、もったいないから嫁には食わすな、の意。秋のナスは体を冷やすので(一説に秋ナスは種が少ないので、子種が少なくなるといけないから)嫁には食わすなの意、とするのは、俗解らしい。
 「親の意見となすびの花は、千に一つの無駄もない」とは云うが、ナスの花は1/3~1/10ほどが結実するのみ。

   春雨やふた葉にもゆる茄子種
(なすびだね) (芭蕉,1644-1694)
   めづらしや山を出羽
(いでは)の初茄子(はつなすび) (同。元禄2年6月10日)
   ちさはまだ青ばながらになすび汁 (同)
   秋凉し手毎にむけや瓜茄子 
(同)
 
 初夢に見ると縁起がよいとされる「一富士・二鷹・三茄子」は、一説に富士山は高い、鷹は掴み取る、茄子は成すに通じるから、といい、一説に 駿河の国の名物を並べたもの、などという。



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