ふじばかま (藤袴) 

学名  Eupatorium fortunei(E. japonicum var. fortunei; E. japonicum)
日本名  フジバカマ
科名(日本名)  キク科
  日本語別名  アララギ
漢名 E. fortunei  佩蘭(ハイラン,peilan)
  漢語別名  蘭草(lancao)、蕑(カン,jian)、澤蘭(タクラン,zelan)、澤蘭香草(タクランコウソウ,zelan xiangcao)
漢名 E. japonicum  澤蘭(タクラン,zelan)
  漢語別名  圓梗澤蘭(エンコウタクラン,yuangengzelan)、山蘭(サンラン,shanlan)、不老草(フロウソウ,bulaocao)、秤杆草(ショウカンソウ,chenggancao)、孩兒菊(ガイジキク,hai'erju)、蕑(カン,jian)
科名(漢名)  菊(キク,ju)科
英名  
2007/04/10 小石川植物園 2007/05/03 薬用植物園

2008/07/21 薬用植物園

2006/10/19 神代植物公園
「フジバカマ Eupatorium fortunei」として栽培展示されているもの。
2009/10/29 神代植物公園    同上 


 中国では、フジバカマの近縁種を、次のように区別する。
   E. japonicum(澤蘭・圓梗澤蘭・單葉澤蘭・山蘭)
       =E. chinense var. simplicifolium
   E. fortunei(佩蘭・澤蘭)
       =E. japonicum var. fortunei; E. chinense var. tripartitum
   E. chinense(華澤蘭・蘭草・千金草)

 日本では、これらの和名について、おおむね、
   japonicum 乃至 fortunei をフジバカマ、
   chinense
(乃至その変種 var. oppositifolium)をヒヨドリバナ、とする。
     
(ただしほかに、fortunei をフジバカマ、japonicum をヒヨドリバナとする説、
        また、chinense をフジバカマとする説、などがある。)
 ヒヨドリバナ属 Eupatorium(澤蘭屬)の植物については、ヒヨドリバナを見よ。
 漢土における蘭(ラン,lan)という語の変遷について、また日本におけるその訓読の歴史について、ランの訓を参照。
 澤蘭とは、陶弘景は「澤の旁に生ず。故に澤蘭と名づく」というが、李時珍は「此の草、亦た香澤(かみあぶら)を爲る可し。獨り其の澤旁に生ずるを指すのみにあらず」と(李時珍『本草綱目』)
 日本における「藤袴」の語は、山上憶良(660-733)「秋の七種」の歌(『万葉集』8/1537;1538)に見える。
 のちに、『源氏物語』30帖の名を「藤袴」という。
 別名アララギについては、ラン(蘭)の訓を見よ。
 中国では、japonicum(澤蘭)は 新疆・西藏以外の全国に分布し、栽培もする。
 fortunei(佩蘭)は 河北・山西・山東・河南・陝西・江蘇・浙江・福建・兩廣・四川・貴州・雲南に分布し、栽培は江蘇(南京・蘇州・上海)が最大。
 李時珍『本草綱目』(ca.1596)蘭草の集解に、「蘭草と澤蘭と、一類二種なり。倶に水旁下湿の処に生ず。二月、宿根より苗を生じ、叢を成す。紫の茎、素き枝、赤き節、緑の葉。葉は節に対して生じ、細歯有り。但し、茎円く、節は長くして、葉は光り、岐有る者を以て、蘭草と為す。茎微かに方、節は短くして、葉は毛の有る者は、澤蘭と為す。嫩き時、並びに捼(も)んで之を佩す。八九月より後、漸く老ゆ。高者、三四尺。花を開き穂を成すこと、鷄蘇の如し。花は紅白色、中に細子有り」と。
 日本では、フジバカマは本州関東以西・四国・九州に分布。
 奈良時代に中国から直接に、あるいは朝鮮を経由して渡来したものが、帰化したと考えられている。
(一説には、渡来品のほかに自生品があったのではないかともいう。)
 そののち、広く関東以西に野生し、東京周辺では 戸田の荒川堤などに戦前まで自生していた。しかし、その後開発などにより姿を消し、今日見られるものは観賞用に栽培されているもののみという。
 今では、全国レベルで絶滅危惧Ⅱ類(VU)。
 植物体にクマリンの芳香があり、半乾燥するとよく匂う。
 ただし、japonicum(澤蘭)と fortunei(佩蘭)では、香りはfortunei(佩蘭)のほうが佳い。
 中国では、古くから蘭・蘭草を香草として利用した。すなわち、身に帯び(佩 pei)たり、湯で煮て沐浴したり(蘭湯)して、邪気をはらった。それは、今日の fortunei(佩蘭)であった。
 今日でも、fortunei(佩蘭)の茎葉を佩蘭と呼び、薬用にする。なお、地方により japonicum(澤蘭)・サワヒヨドリ E.lindleyanum(白鼓釘・尖佩蘭)などを、同様に薬用にする。
『中薬志Ⅲ』pp.129-133 
 『春秋左氏伝』宣公3年(606B.C.)に、「蘭に国香(国中で第一の香り)有り」と。
 『詩経』国風・鄭風の溱洧(シンイ)に、「士と女と、方(まさ)に蕑を秉(と)る」と。毛伝に、蕑は蘭なり、と。李時珍『本草綱目』蘭草の釈名に、「陸機の詩の疏に言う、<鄭の俗、三月、男女 蕑を水際に秉り、以て自ら祓除す>と。蓋し蘭は以て之を闌(さえぎ)り、蕑は以て之を閑(ふさ)ぐ。其の義、一なり」と。
 『大戴礼』「夏小正」五月に、「蘭を蓄ふ。〔沐浴の為にするなり。〕」と。
 『楚辞』「離騒」に、「江離(センキュウ)と辟芷(へきし、白芷。シシウドの仲間)とを扈(こうむ)り、秋蘭を紉(つな)いで以て佩(はい)と為す」と。
 日本では、『万葉集』以来 秋の七草の一。
 とはいえ、『万葉集』には、ほかには特段に詠われていない。
 平安時代以降には、

   なに人か きてぬぎかけし ふぢばかま くる秋ごとに のべをにほはす
      (藤原敏行「これさだのみこの家の歌合によめる」、『古今和歌集』)
   やどりせし 人のかたみか 藤ばかま わすられがたき かににほひつつ
      (紀貫之「ふぢばかまをよみて人につかはしける」、『古今和歌集』)
   ぬししらぬ かこそにほへれ 秋ののに たがぬぎかけし ふぢばかまぞも
     
(素性法師「ふぢばかまをよめる」、『古今和歌集』)
   秋風に ほころびぬらし ふぢばかま つゞりさせてふ 蛬(きりぎりす)なく
     
(在原棟梁、卷19)

 西行
(1118-1190)『山家集』に、

   いとすすき ぬ(縫)はれてしか(鹿)の ふすのべ(野辺)に ほころびやすき ふじばかま哉

 『新古今集』に、

   蘭
(ふじばかま)ぬしは誰ともしら露のこぼれてにほふ野べの秋風 (公猷法師)
 

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