さねかずら (実蔓) 

学名  Kadsura japonica (Uvaria japonica)
日本名  サネカズラ
科名(日本名)  マツブサ科
  日本語別名  ビナンカズラ(美男蔓)、ビジンソウ、ビンツケカズラ
漢名  日本南五味子(ニホン ナンゴミシ,rìbĕn nánwŭwèizĭ)
科名(漢名)  五味子(ゴミシ,wŭwèizĭ)科
  漢語別名  紅骨蛇(コウコツタ,honggutuo)、五味花、
英名  Scarlet kadsura
2024/03/27 神代植物公園 

2023/04/04 多摩森林科学園 (自生) 

2007/04/15 神代植物公園 2006/08/13 同左

2006/09/07 長瀞町

2007/07/26 野川公園自然観察園
 雌花   雄花 

2006/10/19 神代植物公園

2021/10/23 野川公園自然観察園

2009/11/06 京都府立植物園   (棚作り)

2007/12/26 小平市花小金井   (植栽)

2009/01/06 神代植物公園

 サネカズラ属 Kadsura(冷飯藤 lěngfànténg 屬)には、東・東南アジアに16種がある。

  K. angustifolia(狹葉南五味子・窄葉南五味子)
  K. coccinea(K.chinensis,K.hainanense;黑老虎・冷飯團・臭飯團・過山龍藤)
         『中国本草図録』Ⅹ/4600 『全国中草葯匯編』上/855
  K. heteroclita(異形南五味子・大葉風沙藤・地血香)
         
『雲南の植物Ⅲ』42・『中国本草図録』Ⅹ/4601 『全国中草葯匯編』下/35-36
  K. induta(毛南五味子・屏邊南五味子)
  K. interior(内南五味子・中間南五味子・鷄血藤)
 『中国本草図録』Ⅵ/2608
  サネカズラ K. japonica(日本南五味子・紅骨蛇)
    ニシキカズラ 'Variegata'
  K. longipedunculata(K. petigera;南五味子・紅木香・紫金藤)
         
『全国中草葯匯編』上/581 『(修訂)中葯志』V/507-514
  K. oblongifolia(冷飯藤・飯團藤・吹風散)
  K. polysperma(多子南五味子) 
   
 マツブサ科 Schisandraceae(五味子 wŭwèizĭ 科)については、マツブサ科を見よ。
 和名のビナンカズラは、茎から採る粘液を整髪に用いたことから。
 学名の属名は、日本語の蔓
(かずら)から。
 『本草和名』五味に、「和名佐祢加都良」と。
 『延喜式』五味子に、「サネカツラ」と。
 『倭名類聚抄』五味に、「和名作祢加豆良」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』14五味子の条に、「サネカヅラ、一名ビンツケカヅラ
筑前 トロロカヅラ石州雲州 ビナンセキ伊州勢州 ビジンソウ大坂 ビナンカヅラ阿州讃州 クツバ勢州 フノリ土州 フノリカヅラ日州土州 オホスケカヅラ筑前 ビランジキ江州」と。
 本州(関東以西)・四国・九州・琉球・済州島・臺灣・福建に分布する。
 枝の皮から採る粘液は、整髪のほか 製紙用の糊に用いた。
 
また、赤い果実を観賞するために 庭・垣根などに植栽する。
 『中薬志Ⅱ』pp.36-37によれば、略々次のように言う。中国で南五味子(ナンゴミシ,nánwŭwèizĭ)と呼ぶ生薬は、一般にはサネカズラ属の Kadzura longepedunculata, K.petigera であると記されている。しかし現に南五味子として流通しているものはマツブサ属の Schisandra sphenanthes(華中五味子)の果実である。まして、一部の書にサネカズラを南五味子としているのは、そもそもサネカズラは中国には産しないのだから、当らない、と。
 なお、五味子(ゴミシ,wŭwèizĭ)については、チョウセンゴミシの誌を見よ。
 中国では、Kadsura interior(内南五味子・中間南五味子・鷄血藤)或はK. heteroclita(異形南五味子・大葉風沙藤・地血香)の茎の煎じ汁に、續斷川牛膝紅花黑豆糯米・飴糖を併せて、鷄血藤膏を作り、薬用にする。 『(修訂) 中葯志』V/837-839 
 『万葉集』に「さなかづら」とあるのは サネカズラの古名、ただし一説にアケビ

   玉くしげ みむろの山の さな葛 さ寝ずは遂に 有り勝つましじ
     
(2/94,藤原鎌足。別訓に第2句「見む円山(まとやま)の」)
   木綿畳
(ゆふたたみ) 田上山の さな葛 在り去りてしも 今ならずとも
     
(12/3070,読人知らず)
   足引の 山さな葛 もみつまで 妹にあはずや 吾が恋ひ居らむ (10/2296,読人知らず)
     
(この歌に詠われる山さなかづらは紅葉するので、一説にツタとする)

 また、「さねかづら」は、「あう」「遠い・長い」にかかる枕詞。

   ・・・狭根葛 後もあはむと・・・
(2/207,柿本人麻呂。ほかに、13/3280;3281など)
   さね葛 後もあはむと 夢のみに うけひわたりて 年は経につつ
(11/2479,読人知らず)
   木綿裹(ゆふつつみ) 白月山の さな葛(かづら) 後も必ず あはむとそ念(おも)
       (12/3073,読人知らず)
   ・・・さなかづら いや遠長く・・・
(13/3288,読人知らず)
 
 
   つれなきを 思ひしのぶの さねかづら はてはく(繰・来)るをも いとふなりけり      (よみ人しらず「女のもとにまかりたるに、はやかへりねとのみいひければ」)
   名にしおはば 相坂山の さねかづら 人にしられで く(繰・来)るよしも哉
     
(藤原定方(873-932),『後撰集』『小倉百人一首』)
 
 また、「さねかづら」は、「あう」「遠い・長い」にかかる枕詞。

   ・・・狭根葛 後もあはむと・・・
(2/207,柿本人麻呂。ほかに、13/3280;3281など)
   さね葛 後もあはむと 夢のみに うけひわたりて 年は経につつ
(11/2479,読人知らず)
   木綿裹(ゆふつつみ) 白月山の さな葛(かづら) 後も必ず あはむとそ念(おも)
       (12/3073,読人知らず)
   ・・・さなかづら いや遠長く・・・
(13/3288,読人知らず)
 
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「藤桂のるひ」に、「五味子(ごみし・さねかつら) 葉ハもつこく(モッコク)のごとくにてやハらかなり。此葉ヲ鬢水ニ入テつかふに髪品(かみしな)うるハしく、赤キ毛黒く長クなるとて用る人多し。」ひなんせき共いふ。実赤クなる事、秋の比なり。葉は冬あり。此実は薬種の五味子なり」と。
 『大和本草』五味子に、「今倭俗倭五味子ノ莖ヲ水ニヒタシ子ハリ出ルヲ用テ鬢髪ニヌル、毛チラスト云」と。

ニシキカズラ 'Variegata'
   2023/06/20 小石川植物園 

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