あじさい 

学名  Hydrangea macrophylla (f. macrophylla)
日本名  アジサイ 
科名(日本名)  ユキノシタ科、あるいはアジサイ科
  日本語別名  ホンアジサイ、テマリバナ、オタクサ、シチヘンゲ(七変化)、ヨヒラ(四葩)、紫陽花、ガクノハナ(額花)
漢名  八仙花(ハチセンカ,baxianhua)
科名(漢名)  虎耳草(コジソウ,hu'ercao)科
  漢語別名  繡毬(シュウキュウ,xiuqiu)・繡球、雪球、粉團花(フンダンカ,fentuanhua)、大葉八仙花・聚八仙、瑪哩花・天麻裏 
英名  Hortensia, Common hydrangea, Japanese hydrangea, Otaksa hydrangea
2008/06/19 薬用植物園
  「アジサイ Hydrangea macrophylla」と表示


2008/06/22 豊島園
   「H. macrophylla f. macrophylla ホンアジサイ」と表記

 アジサイ(ホンアジサイ)H.macrophylla f.macrophylla(繡毬・八仙花)は、ガクアジサイ f.normalis から自然に成立した品種と考えられている。
 散房花序の中央に多数の両性花を、周囲に少数の装飾花をつけるのがガクアジサイ、すべての花が装飾花に変化したものがアジサイ。
 アジサイ属 Hydrangea(繡毬屬)は、旧来ユキノシタ科 Saxifragaceae(虎耳草科) アジサイ亜科 Subfam. Hydrangeoidae(八仙花亞科)に属させてきたが、近年ではアジサイ科 Hydrangeaceae を独立させ、そこに置くことが一般化しつつある。
 アジサイ科 Hydrangeaceae には、アジサイ亜科 Hydrangeaceae とバイカウツギ亜科 Philadelphaceae にわたり、16属約200種がある。

   Broussaisia
ハワイにハワイアジサイ1種
   クサアジサイ属 Cardiandra(草繡毬屬)
   Carpenteria
北アメリカ産、1属1種
     C. californica
シェラネバダ山脈産
   Decumaria(石壁草屬)
 シマユキカズラ属と近縁、中国と北アメリカ南東部に各1種
     D. barbara
北アメリカ産
     D. sinensis(赤壁草)
 中国(陝西南部・河南西部・湖北・四川・貴州北部)に分布
   ギンバイソウ属 Deinanthe(銀梅草屬)
     ギンバイソウ D. bifida
     D. caerulea(銀梅草)
中国(湖北)産
   ウツギ属 Deutzia(溲疏屬)
   ジョウザン属 Dichroa(黄常山屬)
 中国・ヒマラヤ・マレーシアに10数種
   Fendlera 
北アメリカ南西部産
   Fendlerella 北アメリカ南西部に3種
   アジサイ属 Hydrangea(繡毬屬)
   Jamesia
北アメリカ西部に1種
   キレンゲショウマ属 Kirengeshoma(黄山梅屬)
 1属1種
   バイカウツギ属 Philadelphus(山梅花屬)
   シマユキカズラ属 Pileostegia(冠蓋藤屬) 
3種
     P. tomemtella(星毛冠蓋藤)
     シマユキカズラ P. viburnoides(冠蓋藤・靑棉花)
       
 日本(紀伊半島・南西諸島)・臺灣・中国(長江以南)・ヒマラヤに分布。
   バイカアマチャ属 Platycrater(蛛網萼屬)
 1属1種
     バイカアマチャ P. arguta(蛛網萼・盾兒花)
       
日本(東海・紀伊半島・四国・九州)・中国(浙江・福建北部)に分布
   イワガラミ属 Schizophragma(鑽地風屬)
 東アジアに数種
   Whipplea
北アメリカ西部に1種

 アジサイ科の植物について、川島榮生『アジサイ百科』
(アポック社、2010)を参照。 
 アジサイ属 Hydrangea(繡毬屬)は、世界に約30種あり、日本には9種(大井,1978)乃至12種(大場,1989)があるとされる。
  タイワンツルアジサイ H. anomala(冠蓋繡毬・蔓性八仙花・藤本繡毬)
        
 臺灣・中国(南部)・ヒマラヤ東部に分布
  アメリカノリノキ H. arborescens
  ヒマラヤタマアジサイ H. aspera (土常山・甜茶)
  H. bretschneideri (東陵繡毬)
  カラコンテリギ
(タイワントキワアジサイ) H. chinensis(var.lobbii,
        H.scandens ssp.chienensis;中國繡毬・華八仙花・野八仙・常山)
     ヤエヤマコンテリギ var. koidzumiana(var.yaeyamensis, H.yaeyamensis)
  H. davidii (西南繡毬)
  コバアマチャ H. glabrifolia(小葉八仙花)
 臺灣産
  ヤマシマアジサイ
(ヤクシマコンテリギ) H. grosseserrata
       (H.kawagoeana var.grosseserrata)
  コアジサイ H. hirta
  タマアジサイ H. involucrata
     ラセイタタマアジサイ var. idzuensis
  H. kawagoeana
    ヤクシマアジサイ var. grosseserrata, (H.angustisepala var.grosseserrata,
        H.grosseserrata, H.chinensis var.grosseserrata)
    トカラアジサイ var. kawagoeana
  H. kwangsiensis(廣西繡毬・螞蟻樹)
 『中国本草図録』Ⅹ/4621
  リュウキュウコンテリギ H. liukiuensis(H.scandens ssp.liukiuensis)
  ナガバアジサイ H. longifolia
  H. longipes (長柄繡毬・蓴蘭繡毬)
  コガクウツギ H. luteovenosa
     ヤクシマガクウツギ var. yakushimensis
  H. macrophylla
        ガクアジサイ f. normalis(var.hattoriana) 
この種の野生品
        ガクソウ f. rosea
        アジサイ
(ホンアジサイ) f. macrophylla(H.maritima;
            繡毬・八仙花・大葉八仙花) 
SieboldのH.otaksaはこれだろうという
        セイヨウアジサイ f. hortensis(H.opuloides)
            
近代に欧米で改良された品種群
  ナガバコンテリギ H. macrosepala(大萼八仙花)
 臺灣産
  ムラサキアジサイ H. ovalifolia(倒卵葉紫陽花) 臺灣産
  ノリウツギ H. paniculata(圓錐繡毬・圓錐八仙花・水亞木・白花丹)
           
 『中国本草図録』Ⅸ/4149
        ミナヅキ  f. gradiflora(大花圓錐八仙花)
        ヒダカノリウツギ f. debilis
        ビロードノリウツギ var. velutina
  ツルアジサイ
(ゴトウヅル) H. petiolaris(H.anomala ssp.petiolaris)
  カシワバアジサイ H. quercifolia 
西方産
  H. robusta(南川繡毬)
 『中国本草図録』Ⅵ/2642
  H. rosthornii (大枝繡毬)
  ガクウツギ(コンテリギ) H. scandens
        ベニガクウツギ f. rosea
  ヤマアジサイ
(サワアジサイ) H. serrata (H.macrophylla ssp.serrata;
           H.macrophylla var.acuminata; 鋸齒八仙花)
     var. acuminata
朝鮮半島南部産
     アマギアマチャ var. angustata(H.macrophylla var.angustata)
     ナンゴクヤマアジサイ var. australis
鹿児島県・宮崎県(鰐淵山)産
     ヒュウガアジサイ var. minamitanii 宮崎県中央山地に産
     ヤマアジサイ var. serrata(H.macrophylla ssp.serrata, H.macrophylla
           var.acuminata)
        マイコアジサイ f. belladonna
        ベニガク f. rosalba
        シチダンカ f. prolifera
     アマチャ var. thunbergii(H.macrophylla var.thunbergii)
     エゾアジサイ var. yezoensis(var.megacarpa, H.macrophylla
            ssp.yezoensis;H.macrophylla var.megacarpa)
       ニワアジサイ
(ヒメアジサイ) f. cuspidata
           (H.macrophylla ssp.serrata f.cuspidata)
  ヤハズアジサイ H. sikokiana
  H. strigosa (臘蓮繡毬・羊耳朶樹・土常山・甜茶)
  H. umbellata (傘形繡毬・繡毬八仙・土常山・傘花八仙)
  H. villosa(柔毛繡毬)
 『雲南の植物Ⅱ』107
  H. xanthoneura (挂苦繡毬・六蛾戲珠) 『中国本草図録』Ⅶ/3142
  ヤエヤマコンテリギ
(シマコンテリギ) H. yayeyamensis 
 日本のアジサイ属の分類上、意見が分れているのはヤマアジサイの扱いであるという。
 すなわち、大場は、
(上のように)ヤマアジサイを独立の種と認め、H. serrata とする。これに対して 大井は、ヤマアジサイをアジサイの一変種 H. macrophylla var. acumitana とする。
 中国に産するジョウザンアジサイ Dichroa febrifuga(黃常山)は、別属。
 和名の語源は、一説に「集(あづ)(さ)(あい)(『大言海』)
 漢字で紫陽花と書くものは、白居易(772-846)「紫陽花」詩の自註に、「招賢寺(浙江省杭州の霊隠山)に山花一樹あり、人の名を知るもの無し。色は紫にして気は香し。芳麗愛すべく、頗る仙物に類す。因りて紫陽花を以て之を名づく」とある(『白氏文集』20)。ただし、この紫陽花がいかなる植物であったのかは不明という。
 日本では、源順『倭名類聚抄』
(ca.931-938)に「白氏文集律詩に云ふ、紫陽花、和名安豆佐為」とあり、平安時代以来 紫陽花はアジサイを指すものと考えた。
 漢名の繡毬は、小さな花が丸く集まって 鞠のように見える花の総称。
 八仙花は、花の色が次々に変化してゆくさまを譬えたもの。
 属名 Hydrangea は、ギリシア語の「水の器、水差し」。果実の形から(一説に、よく水を吸い上げることから)
 ふつうアジサイと呼ぶものは、日本の暖地に自生し、古くから庭木として栽培されたガクアジサイから、自然に作られた品種。ただし成立年代は不明。
 花の色は土壌の酸性度によって変化する。すなわち、土壌中のアルミニウムが吸収されて青の色素が作られるが、アルカリ土壌だとアルミニウムの吸収が少なく、赤色色素になる。
 古くから中国にわたり、かの地でも植栽されたものが、揚子江沿岸東部に野生化している。
 中国では、葉を薬用にする。
 ヨーロッパへは、1789年、イギリスのバンクス卿(1743-1820)が 中国からキュー植物園にもたらした(cv.'Sir Josef Banks')。1800年ころにはイギリス国内に普及し、以後はフランスで、第二次世界大戦後はアメリカで、モモイロアジサイ f. mariesii・ベニガク H. serrata f. rosalba などと交雑されて多彩な品種改良が進んでおり、これらをセイヨウアジサイ(ハナアジサイ・ハイドランジア)と呼ぶ。
 今日日本で行われている観賞用の品種は、多くはこのセイヨウアジサイが、第二次世界大戦後に逆輸入されたもの。
 「平成20年6月、飲食店で料理の飾りに出されたアジサイの葉を食べたことによる中毒事例が発生した。厚生労働省は、飲食店及び消費者に対し、アジサイを食品とともに提供及び喫食しないように注意を喚起し、また販売者に対し、食品又は料理の飾り用に販売しないように通知を出した。」(薬用植物園)
 『万葉集』に、

   あぢさゐの やへ
(八重)(咲)くごとく や(弥)つよ(代)にを
     いませわがせこ
(背子) み(見)つつしの(偲)はむ
      
(20/4448,橘諸兄。755年,味狭藍花に寄せて詠む)
   こと問わぬ 木すらあぢさゐ 諸茅らが 練の村戸に あざむかえけり
      
(4/773,大伴家持)
 
 一説に鎌倉時代から園芸化されたというが、上記のように『万葉集』に歌われている。
 江戸時代には一般的に行われた。
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「紫陽(あぢさい) 花形手鞠のごとく、色あさぎ、あか、ふぢ色あり」と。

   紫陽草
(あぢさゐ)や藪を木庭の別座敷 (芭蕉,1644-1694)
   紫陽草や帷子
(かたびら)時の薄浅黄(うすあさぎ) (同)
 
 シーボルト P.F.B.von Siebold(1796-1866;滞日1823-1829)は、アジサイを『日本植物誌』に Hydrangea otaksa と名づけて紹介し、オタクサはこの植物の日本名であるという。しかし、牧野富太郎はそのような和名はないと否定し、オタクサは、シーボルトが長崎で愛した丸山廓の遊女楠本お滝(源氏名は其扇)の名前(シーボルトは「おたくさん」と呼んだ)に因んだものと解釈した。
 長崎鳴滝の史跡シーボルト邸跡には 今日でも多くのアジサイが植えられており、昭和43年から長崎市の市花。


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