あまちゃ (甘茶) 

学名  Hydrangea serrata var. thunbergii (H.macrophylla var.thunbergii, Hortensia serrata var.thunbergii)
日本名  アマチャ
科名(日本名)  アジサイ科
  日本語別名  コアマチャ
漢名  
科名(漢名)  
  漢語別名  
英名  
2023/05/28 小石川植物園 

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2008/06/01 薬用植物園
2007/06/07 同上
 ヤマアジサイのうち、葉に甘味成分を含む変種。ヤマアジサイと比べ、装飾花の萼片が円形又は広卵形で、先が円く、初めから紅色を帯びている。
 全体がこれより大型のものをオオアマチャ var. oamacha と呼ぶ。
 なお、バイカアマチャは別属別種。
 アジサイ属 Hydrangea(繡毬 xiùqiú 屬)については、アジサイ属を見よ。
 中国で甜茶・甜茶葉と呼ぶものは、同属の H. aspera (土常山・甜茶)・ H. strigosa(臘蓮繍毬・羊耳朶樹・甜茶)である。後者は、その根を土常山と呼び、薬用にする。
 日本で、かつてアマチャを土常山としたのは、間違い。
 葉を乾燥すると、フィロズルシン及びイソフィロズルシンが生成される。いわゆる甘茶の甘味の成分。生の葉を揉んで噛むと、ほろ苦い中に甘みを含む。
 本州(中部・関東)に 稀に自生する。
 各地の寺院で、仏事用に栽培する。
 ただし、甘味料を採るために栽培する甘茶は、この変種アマチャのみとは限らず、甘味成分の含有量が高いヤマアジサイの総称、という。
 日本では、近世に砂糖が普及するより以前、甘葛(あまづら)を甘味料として用いた。甘葛と呼ばれた植物が何であったのか、諸説がある。おそらくはツタだというが、アマチャ・アマチャヅルなどとする説もある。ツタを見よ。
 『花壇地錦抄』(1695)巻三「山椒(さんせう)るひ」に、「甘茶 花形あぢさいのちさき物なり。葉をあまちやニするに、むして細末して用ル。世間ニてつるに出る草をあまちやといふ、あやまり也。子共すかしのあまちやにや。此木ヲ金銀草共いふ。花色、春青く、夏ハ赤色、秋の比むらさきのやうに見ゆる。冬ハ霜かれてしろし。但シ、春咲シ花、四季共ニ有。四度咲ニハあらず」と。
 『大和本草』に、「額草(カクサウ) 大小二種アリ、大小共ニ莖葉ハ紫陽花ニ似タリ、花色モ似タリ、只花ノ形額ニ似テ方(ケタ)ナリ・・・葉甘シ、葉ヲ蒸テホシ爲細末甘茶トス、又蔓草ニモ甘茶アリ・・・額草トハ近俗之所稱也」と。 
 甘茶は、夏にアマチャやオオアマチャの葉を摘み、蒸して揉んで青汁を去り、乾燥して貯蔵する(別の説には、8-9月に葉を採り、水洗いし、陰干しにして水気を切り、積み重ねて一晩醗酵させ、よく揉んで日干する)。これを煎ずると甘いので、飲料とし、甘味料として醤油の醸造に用い、また近年では糖尿病患者の飲料にする。
 生薬アマチャは、アマチャの葉及び枝先を、通例、揉捻したものである(第十八改正日本薬局方)。
 「日本のアマチャはこんにちほとんど忘れられかけているが、同じようなものは中国四川省で、ガマズミ類(Vibrunum theiferum)が栽培され、峨眉山では産業の一つになっている。ブータンの野生採集にもアマチャに入ると考えられるものがある。」(中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』)
 伝説によれば、ゴータマ・シッダールタ(のちの釈尊)は、母マヤ夫人がルンビニー園 Lumbinivana(藍毘尼苑{ランビニオン})においてアショーカ樹(無憂樹)に手をかけたときに、その右腋の下から生まれ出た。このとき、難陀(なんだ)龍王・優波難陀(うばなんだ)龍王らは歓喜して、虚空から(産湯として)甘露の雨を降らしたという。
 これにちなみ、仏誕の4月8日に 誕生仏に頭から香水・甘茶などを注ぎかける法会を、潅仏会という。中国では唐代
(あるいはそれ以前)から、日本では奈良時代(あるいは推古朝)から行われた行事であり、今日では花祭として広く行われている。
 潅仏に甘茶を用いるのは、17世紀に黄檗宗が伝えた。それ以来明治に至るまで、アマチャは各寺院によって栽培され、甘茶は潅仏会の参詣者にふるまわれてきた。

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