うつぎ (空木) 

学名  Deutzia crenata
日本名  ウツギ
科名(日本名)  ユキノシタ科、又はアジサイ科
  日本語別名  ウノハナ、シロウツギ、ウツロギ、コメゴメ、ユキミソウ・ユキミグサ、ナツユキソウ・ナツユキグサ、ユミノキ、セツクワサイ、ハツミグサ、カキミグサ、シホグサ、ハメキ、ヒキダラ、ミチモトメグサ
漢名  溲疏(ソウソ,soushu)
科名(漢名)  虎耳草(コジソウ,huercao)科
  漢語別名  空木(クウボク,kongmu)
英名  Deutzia, Japanese snowflower
2007/05/22 小石川植物園
2005/07/28 学内 2005/11/04 同左 2005/12/20 同左


 日本では、ウツギ D. crenata とマルバウツギ D. scabra(=D. sieboldiana) を区別するが、中国では両者を同一種とし、溲疏と呼ぶ。
 ウツギ属 Deutzia(溲疏屬)の植物には、主として東アジア乃至ヒマラヤに約50種がある(うち4種はメキシコに隔離分布)
  D. albida(甘肅溲疏)
  D. amurensis(東北溲疏)
  マルバコウツギ D. bungoensis
  D. calycosa(大萼溲疏)
『雲南の植物T』124・『雲南の植物』116
  ウツギ D. crenata
    サラサウツギ f. bicolor(f.plena)
    シロバナヤエウツギ f. candidissima
    オオミウツギ f. macrocarpa
    シクゲウツギ f. pubescens
    ムラサキウツギ f. purprina
    ビロードウツギ var. heterotricha(var. thunbergiana)
    コウツギ var. floribunda(D.floribunda)
  D. delavayi(雲南山梅花)
 『雲南の植物T』124
  D. esquirolii(陜葉溲疏)
  チョウセンウツギ D. glabrata(無毛溲疏・光萼溲疏)
  D. glauca(黄山溲疏)
  ヒメウツギ D. gracilis
    アオコウツギ var. ogatae(D.ogatae)
    ナチウツギ var. pauciflora
    ブンゴウツギ  var. zentaroana
  D. glomeruliflora(球花溲疏) 
『雲南の植物』116
  D. grandiflora(大花溲疏)
  イワウツギ D. hamata(D.prunifolia)
  コミノヒメウツギ D. hatusimae
  D. hookeriana(西藏溲疏)
  D. hypoglauca(粉背葉溲疏)
  D. longifolia(長葉溲疏)
  ウラジロウツギ D. maximowicziana(D.discolor,D.hypoleuca;異色溲疏)
  D. micrantha(多花溲疏)
  D. monbeigii
『雲南の植物』116
  オオシマウツギ D. naseana(var.macrantha)
    オキナワヒメウツギ var. makinoi
  D. ningpoensis(寧波溲疏)
  トウウツギ D. parviflora(小花溲疏)
 『中国本草図録』W/1657
  D. pilosa(褐毛溲疏)
  オオバウツギ D. pulchra
  D. purpurascens(紫花溲疏)
 『雲南の植物T』126
  D. rehderiana
『雲南の植物』117
  D. rubens(粉紅溲疏・紅色溲疏)
  マルバウツギ D. scabra
    ツクシウツギ var. sieboldiana(D.sieboldiana, D.kiusiana)
  D. schneideriana(長江溲疏)
  D. setchuenensis(川溲疏)
 『中国本草図録』Y/2641
  マルバウツギ
(ツクシウツギ) D. sieboldiana(D.scabra;溲疏)
  シマヒメウツギ D. taiwanensis(臺灣溲疏)
 臺灣産
  ウメウツギ D. uniflora
(D.coreana,D.tazawae)
  ヤエヤマウツギ D. yaeyamensis
  ブンゴウツギ D. zentaroana(D.gracilis var.zentaroana) 
 ウツギ属は、旧来ユキノシタ科 Saxifragaceae(虎耳草科) アジサイ亜科 Subfam. Hydrangeoidae(八仙花亞科)に属させてきたが、近年ではユキノシタ科からアジサイ科 Hydrangeaceae を独立させ、そこに置くことが一般化しつつある。
 和名は、枝・幹が中空であることから。すなわち、枝が成長すると、その髄が消失して中空になる。
 むかし灯心として木の枝の髄を用いていた時代には、枝・幹が中空で髄が無い木は、髄のある木と区別して「空木
(うつぎ)」として認識されたもの。
 何々ウツギと呼ぶ植物には、ウツギ属のもののほか、同じユキノシタ科(又はアジサイ科)の別属では
  バイカウツギ属のバイカウツギ
  アジサイ属のガクウツギ・コガクウツギ・ノリウツギ
などがある。
 また、他科では 
  スイカズラ科のハコネウツギタニウツギベニウツギツクバネウツギ・ニシキウツギ・ウコンウツギ・ハナツクバネウツギ
(アベリア)
  ドクウツギ科のドクウツギ
  フジウツギ科のフジウツギ、(フサフジウツギトウフジウツギ)、
  ミツバウツギ科のミツバウツギ、
  バラ科のコゴメウツギ・カナウツギ・ウメザキウツギ
(リキュウバイ)
なども、空木と呼ばれる。
 ウノハナの名は、一説に空木の花の省略といい、一説に卯月(旧暦の4月)にさくので卯の花というのだという(ただし、卯月にさくから卯の花というのか、卯の花がさくから卯月というのか、これも二説がある)
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)楊盧木(一名空疏)に、「和名宇都岐」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)溲疏に「和名宇豆木」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)32に、溲疏に「シホミグサ古歌 ハツミグサ カキミグサ ユキミグサ ミチモトメグサ ナツユキグサ ウノハナ共同上 ウツギ和名鈔 ウツゲ土州 ハメキ薩州 クネウツギ松前 ヒキダラ江州 シロウノハナ」と。
 日本・中国などに分布、日本では普通に庭木や生垣として植栽される。
 
 材は、細いが 硬く割れにくいので、古来木釘(空木釘という)・楊子・酒樽の呑口・寄木などに用いる。
 日本の初夏を代表する花で、『万葉集』には24首に「卯の花」として詠われる。文藝譜を見よ。ここにはいくつかの例を挙げる。

   うの花の さくつき
(月)(立)ちぬ ほととぎす
     き
(来)(鳴)きとよ(響)めよ ふふ(含)みたりとも (18/4066,大伴家持)
   うの花の 咲き落(ち)る岳(おか)ゆ ほととぎす
     鳴きてさ渡る きみ
(君)は聞きつや (10/1976,読人知らず)
   佐伯山 うの花もてる かな
(愛)しきが 手をし取りてば 花は散るとも
        (7/1259,読人知らず。別訓に「うの花もちし あはれ我 子をし取りては」)
   うの花の 過ぎば惜しみか 霍公鳥 雨間も置かず 此間(こ)ゆ喧(な)き渡る
       
(8/1491,大伴家持)
   鶯の 往来
(かよ)ふ垣根の うの花に 厭き事有れや 君が来まさぬ (10/1988,読人知らず)
   春去れば うの花ぐたし 吾が越えし 妹が垣間は 荒れにけるかも
(10/1899,読人知らず)
   うの花を 腐
(くた)す霖雨(ながめ)の 始水(みづはな)
     縁る木積
(こづみ)なす よ(縁)らむ児もがも
       
(19/4217,大伴家持。別訓に「始水(はつみず)逝き」)
 
 『八代集』などに、

   ほとゝぎす
 我とはなしに 卯花の うき世中に なきわたるらん
     
(凡河内躬恒「ほとゝぎすのなきけるをききてよめる」、『古今和歌集』)
   よのなかを いとふ山辺のくさ木とや あなうの花の いろにいでにけん
     
(よみ人しらず、『古今和歌集』)
   いづれをか それともわかむ 卯の花の 咲ける垣根をてらす月影
   卯の花をの 咲ける垣根は 白雲の おりゐるとこそ あやまたれけれ
     
(ともに、913『亭子院歌合』)
   うらめしき 君がかきねの うのはなは うしと見つゝも なほたのむかな
     
(よみ人しらず「物いひかはし侍ける人の つれなく侍ければ、其家の垣ねの
      
うの花ををりていひいれて侍ける」、『後撰和歌集』)
   うきものと おもひしりなば 卯花の さけるかきねも たづねざらまし
     
(よみ人しらず「かへし」、『後撰和歌集』)
   ときわかず ふれる雪かと 見るまでに かきねもたわに さけるうのはな
     
(よみ人しらず「卯花のかきねある家にて」、『後撰和歌集』)
   卯の花のむらむらさける垣根をば雲まの月の影かとぞみる
     
(白河天皇、『新古今和歌集』)
   卯の花のかきねならねど郭公月のかつらのかげに鳴くなり
     
(大江匡房、『新古今和歌集』)

 西行
(1118-1190)『山家集』に、

   たつた河 きし
(岸)のまがきを 見わたせば ゐぜきの浪に まがふうの花
   まがふべき 月なきころのうのはなは よるさへさら
(晒)す ぬの(布)かとぞ見る
   神がき
(垣)の あたりにさくも たよりあれや
     ゆふ
(木綿)かけたりと みゆるうの花
   うの花の ここちこそすれ 山ざとの かきねのしばを うづむしらゆき
   をりならぬ めぐり
(廻)のかき(垣)の うの花を うれしく雪の さかせつるかな
 

   卯の花やくらき柳の及ごし 
(芭蕉,1644-1694)
   卯花も母なき宿ぞ冷
(すさま)じき (同。「五七の日追善会」)

   兎角して卯の花つほむ弥生哉
 (山川,『猿蓑』1691)

   卯の花のこぼるゝ蕗の広葉哉 
(蕪村,1716-1783)
   卯の花やけふは音なきわらは病 
(同。童病はマラリヤ)
 


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