からしな (芥子菜) 

学名  Brassica juncea var. juncea
日本名  カラシナ
科名(日本名)  アブラナ科
  日本語別名  ナガラシ、セイヨウカラシナ
漢名  芥菜(カイサイ,jiècài)
科名(漢名)  十字花(ジュウジカ,shízìhuā)科
  漢語別名  芥・大芥・芥子菜、黃菜
英名  Leaf mustard, Indian mustard, Brown mustard, Chinese mustard
2007/04/12 清瀬市 空堀川

 ネカラシナ・セリホン・銀糸芥・アザミナ・タカナ(オオバガラシ・オオナ)などの品種がある。
 アブラナ属 Brassica(蕓薹 yúntái 屬)の植物については、アブラナ属を見よ。
 「和名ハ種子ニ辛味アルヨリ辛し菜ト稱シ、又菜辛しトモ呼バル」(『牧野日本植物圖鑑』)。 
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)に、芥は「和名加良之」と。
 源順『倭名類聚抄』
(ca.934)に、芥は「和名加良之」、辛芥は「和名多加菜」、辛菜は「和名賀良之、俗用芥子」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』22(1806)に、「芥 カラシ」と。
 日本では、芥子(カイシ,jièzĭ)の字を「けし」と読んで、ケシ Papaver sp. の意に用いるが、誤り。
 アブラナ B .campestris(染色体数10)とクロガラシ B. nigra(染色体数8)の間の自然交雑種、複二倍体(染色体数18)。野生種は西アジア・中央アジアに分布。
 アブラナと似るが、茎の上部の葉が茎を抱かない。高さは2mに及ぶことがある。
 種子は黄褐色、果皮は黒色のものと黄色のものとがある。
 ユーラシアの温帯に広がる畑地の雑草だが、エジプト・ロシア南部・インドなどで野菜として広く栽培する。
 中国では、華中・華南ではタイサイ(パクチョイ) var.chinensis・カラシナ類を、華北ではハクサイ Brassica campestris var. amplexicaulis を食用にする。
 カラシナは、品種分化が進んでいる。
   葉を用いるもの: 葉用芥菜(yeyongjiecai)。蓋菜(カイサイ,gàicài。芥菜とも書き、この場合はgàicàiと読む)など。雪裏紅・雪裏蕻(セツリコウ,xuĕlĭhóng。セリホン)もその一。
   根を用いるもの: 根用芥菜(genyongjiecai)・大頭菜(datoucai)・芥菜疙瘩 (カイサイギットウ,jiècàigēda)と呼ぶ。
   茎を用いるもの: 茎用芥菜(jingyongjiecai)・大心菜(daxincai)・搾菜(サクサイ,zhàcài。ザーサイ)と呼ぶ。
 日本でも、明治以前から栽培。
 近年の日本に帰化して野生化しているものは、第二次世界大戦後に欧米から入ったものであろうという。
 中国では、種子を芥子(カイシ,jièzĭ)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.180-184、『中国本草図録』Ⅴ/2118 
 黄果皮の種子部分を粉末にしたものが、からし・からしこ(芥末・芥黄・芥面兒)。これをそのまま或いは練って、香辛料とし或いは薬用にする。
 
(日本では、近世初期にトウガラシが渡来してからは、「和がらし」と呼び区別した。近年では、日本はカナダから輸入している。)
 黒果皮の種子は、クロガラシの代用として洋がらし
(マスタード)にする。最大の輸出国はカナダ、輸出先はヨーロッパ。 
 大変古くから栽培・利用されている。
 『礼記』
「内則(だいそく)に、膾(なます)は「秋は芥を用ふ」、「魚の膾には芥醤」を合す、と。
 『春秋左氏伝』昭公25年(517B.C.)に、「季・郈(こう)の鶏、闘う。季氏、其の鶏に介し、郈氏、之が金距(きんきょ。爪にかぶせる鉄の爪)を為(つく)る」と。
 この「介其鶏」には いくつかの解釈があるが、杜預の説に、芥子粉を羽に含ませることという。
 賈思勰『斉民要術』(530-550)に「種蜀芥・蕓薹・芥子」が載る。
 日本語で、微細な粒をけしつぶ(芥子粒)に譬えるのは、仏典による。すなわち『法華経』提婆達多品に、「観三千大千世界乃至無有如芥子許、非是菩薩捨身命処」とあるなど。ただし、原典の芥子は カラシナ(芥)の種子であり、ケシ Papaver の種ではない。
 なお、中国語では、微細な粒は米粒に譬えることが多い。

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