辨 |
ネカラシナ・セリホン・銀糸芥・アザミナ・タカナ(オオバガラシ・オオナ)などの品種がある。アブラナ属を見よ。 |
アブラナ属 Brassica(蕓薹 yúntái 屬)の植物については、アブラナ属を見よ。 |
訓 |
「和名ハ種子ニ辛味アルヨリ辛し菜ト稱シ、又菜辛しトモ呼バル」(『牧野日本植物圖鑑』)。 |
『本草和名』に、芥は「和名加良之」と。
『倭名類聚抄』に、芥は「和名加良之」、辛芥は「和名多加菜」、辛菜は「和名賀良之、俗用芥子」と。
『大和本草』芥{カラシ}に、「芥子ヲケシトヨムハ誤ナリ、ケシハ罌粟ナリ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「芥 カラシ」と。 |
日本では、芥子(カイシ,jièzĭ)の字を「けし」と読んで、ケシ Papaver ssp. の意に用いるが、誤り。 |
説 |
アブラナ B .campestris(染色体数10)とクロガラシ B. nigra(染色体数8)の間の自然交雑種、複二倍体(染色体数18)。野生種は西アジア・中央アジアに分布。
アブラナと似るが、茎の上部の葉が茎を抱かない。高さは2mに及ぶことがある。
種子は黄褐色、果皮は黒色のものと黄色のものとがある。
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ユーラシアの温帯に広がる畑地の雑草だが、エジプト・ロシア南部・インドなどで野菜として広く栽培する。 |
中国では、華中・華南ではタイサイ(パクチョイ) var.chinensis・カラシナ類を、華北ではハクサイ Brassica campestris var. amplexicaulis を食用にする。
カラシナは、品種分化が進んでいる。
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葉を用いるもの: 葉用芥菜(yèyòng jiècài)。蓋菜(カイサイ,gàicài。芥菜とも書き、この場合はgàicàiと読む)など。雪裏紅・雪裏蕻(セツリコウ,xuĕlĭhóng。セリホン)もその一。 |
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根を用いるもの: 根用芥菜(gēnyòng jiècài)・大頭菜(dàtóucài)・芥菜疙瘩 (カイサイギットウ,jiècàigēda)と呼ぶ。 |
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茎を用いるもの: 茎用芥菜(jīngyòng jiècài)・大心菜(dàxīncài)・搾菜(サクサイ,zhàcài。ザーサイ)と呼ぶ。 |
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日本でも、明治以前から栽培。
近年の日本に帰化して野生化しているものは、第二次世界大戦後に欧米から入ったものであろうという。 |
誌 |
中国では、シロガラシ Sinapis alba(Brassica alba;白芥)とカラシナの種子を芥子(カイシ,jièzĭ)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.180-184 『全國中草藥匯編 上』pp.444-445 『(修訂) 中葯志』III/374-379 『中国本草図録』Ⅴ/2118 |
黄果皮の種子部分を粉末にしたものが、からし・からしこ(芥末・芥黄・芥面兒)。これをそのまま或いは練って、香辛料とし或いは薬用にする。
(日本では、近世初期にトウガラシが渡来してからは、「和がらし」と呼び区別した。近年では、日本はカナダから輸入している。)
黒果皮の種子は、クロガラシの代用として洋がらし(マスタード)にする。最大の輸出国はカナダ、輸出先はヨーロッパ。 |
大変古くから栽培・利用されている。
『礼記』「内則(だいそく)」に、膾(なます)は「秋は芥を用ふ」、「魚の膾には芥醤」を合す、と。 |
『春秋左氏伝』昭公25年(517B.C.)に、「季・郈(こう)の鶏、闘う。季氏、其の鶏に介し、郈氏、之が金距(きんきょ。爪にかぶせる鉄の爪)を為(つく)る」と。
この「介其鶏」には いくつかの解釈があるが、杜預の説に、芥子粉を羽に含ませることという。 |
『斉民要術』に「種蜀芥・蕓薹・芥子」が載る。 |
日本語で、微細な粒をけしつぶ(芥子粒)に譬えるのは、仏典による。すなわち『法華経』提婆達多品に、「観三千大千世界乃至無有如芥子許、非是菩薩捨身命処」とあるなど。ただし、原典の芥子は
カラシナ(芥)の種子であり、ケシ Papaver の種ではない。
なお、中国語では、微細な粒は米粒に譬えることが多い。 |