辨 |
アマ科 Linaceae(亞麻 yàmá 科)には、10-13属 約260-300種がある。
Anisadenia(異腺草屬) 雲南・ミャンマー・ヒマラヤに2種
A. pubescens(異腺草)
A. saxatilis(石異腺草)
アマ属 Linum(亞麻屬)
キバナアマ属 Reinwardtia(石海椒屬)
Tirpitzia(靑籬柴屬) 漢土・ベトナムに2種
T. ovoidea(米念芭)
T. sinensis(靑籬柴)
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アマ属 Linum(亞麻 yàmá 屬)は、北半球の温帯を中心に約180-200種がある。
L. alpinum ピレネー・アルプス・アペニン産
L. altaicum(阿爾泰亞麻) 中央アジア・新疆産
L. amurensis(黑水亞麻) 遼寧・吉林・黑龍江・西北・モンゴリア・極東ロシア産
『中国本草図録』Ⅴ/2173
L. corymbulosum(長萼亞麻) 中央アジア・新疆・四川・貴州・雲南産
ヤマブキアマ L. flavum アルプス東部原産
ベニバナアマ L. grandiflorum(紅花亞麻)
L. heterosepalum(異萼亞麻) 中央アジア・天山産
キバナノマツバニンジン(キバナマツバナデシコ) L. medium
北米原産、本州・四国・九州に帰化
L. nutans(L.baicalense;垂果亞麻・貝加爾亞麻)
陝甘・寧夏・モンゴリア・シベリア・バイカル産 『中国本草図録』Ⅸ/4210
L. pallescens(短柱亞麻) 内蒙古・西北・シベリア・中央アジア産
シュッコンアマ L. perenne(宿根亞麻・亞麻花・藍亞麻) 『雲南の植物Ⅰ』104
L. pubescens 地中海地方東部・シリアに分布 『週刊朝日百科 植物の世界』3-314
マツバニンジン L. stelleroides(野亞麻 yěyàmá)
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・陝甘・青海・
山東・江蘇・湖北・廣東・四川・貴州・雲南産 『中国本草図録』Ⅸ/4211
アレチアマ L. striatum 北米東部産
アマ L. usitatissimum(亞麻・胡麻)
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訓 |
「和名ハ漢名亞麻ノ音ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』18(1806)亜麻に、「ヌメゴマ アカゴマ」と。 |
漢名に麻(マ,má)と言うものは、もともとはタイマ(大麻)。後にタイマのように繊維を取る植物、例えばアマ(亜麻)・チョマ(苧麻)・コウマ(黃麻)・ケイマ(莔麻)・ケナフ(洋麻)なども麻と呼んだ。
胡麻の語は、漢代から現れ、もとゴマ(胡麻・芝麻)および油用のアマを指した。今日でも甘粛地方では、油用のアマを胡麻と呼ぶ。 |
亜麻色(あまいろ; E. flax; F. lin; C.亞麻色)とは、アマの繊維から作った亜麻糸や亜麻布(リンネル linnel)の色。 |
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説 |
カフカス・中近東地方原産、繊維及び油料作物として栽培される。
北方型の茎から採った繊維から作った糸・布はリネン linen・リンネル、夏用の高級衣服の素材。南方型の種子から採った油は亜麻仁(あまにん)油、良質な乾性油で、油絵具・印刷用インク・ペイントなどの材料とし、また薬用に供する。 |
誌 |
西方では、古代のエジプト・バビロニア・フェニキアなどですでに栽培して用いられ、ミイラとともに布が出土している。 |
『聖書』時代、人々はアマ或いは羊毛(ウール)の衣服を着用していた、という。 |
北方型と南方型とがある。
北方型は、ヨーロッパ中世以降、ドイツ・オランダ・ベルギーなどで広く栽培された。 |
中国では、根・種子(胡麻子・亞麻子・亞麻仁・胡麻仁)を薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.291-295 『(修訂) 中葯志』III/332-335 『全国中草葯匯編』下/242-243 |
日本には、17世紀末に中国から亜麻仁油を薬用とするために入った。
明治初期、繊維を採るためにあらためて北方型が北海道に導入された。北見地方が主産地であったが、1967年製麻会社の閉鎖とともに栽培もやめられた。 |