かんぞう(萱草)、きすげ (黄菅)、わすれぐさ(忘草) 

 きすげ(黄菅)・かんぞう(萱草)の仲間である、ユリ科 Liliaceae(百合科)のワスレグサ属 Hemerocallis(萱草屬)は、東アジアの固有属、温帯を中心に約15種がある、という。
 しかし分類は難しいらしく、学名など諸書により一定しない。ここに一覧する。
和名  漢名  学名 
ウコンカンゾウ 黄花
 (檸檬萱草・金針菜・黄花菜・黄金萱)
 (中国図鑑・中草藥・中藥辭)H.citrina 中国江蘇に分布。『中国本草図録』Ⅸ/4418
ユウスゲ
 (キスゲ)
麝香萱 (牧野・佐竹・小石川植物園)H.citrina var.vespertina
(林) H.vespertina
(堀田) H.citrina var.thunbergii
(ブリタニカ国際大百科事典・中藥辭) H.thunbergii
チョウセンキスゲ   (YList) H.coreana, H.flava var.coreana
ヒメカンゾウ 小萱草 (中国図鑑・YList)H.dumortieri(var.dumortieri)
ゼンテイカ
 (ニッコウキスゲ)
  (牧野・鈴木・佐竹・堀田・小石川植物園)H.dumortieri var. esculenta
(林) H.middendorffii var. esculenta
また H. esculenta, H. sendaica
トビシマカンゾウ   (佐竹) H.dumortieri var. exaltata
(林・堀田) 
H.middendorffii var. exaltata
(東京都立薬用植物園)H.exaltata
ムサシノキスゲ
 (ムサシノワスレグサ)
  (小石川植物園) H.exilis
(YList)は、H. exilis(H.fulva var. longituba)はベニカンゾウという。 
ベニカンゾウ   (YList) H. exilis, H.fulva var. longituba 
    (『雲南の植物』15) H. forrestii
 
中国(雲南西北・四川西南)に分布
ホンカンゾウ
(
カンゾウ・(ホン)ワスレグサ) 
萱草
 (諼草・蘐草)
(堀田・中国図鑑・中草藥・中藥辭)H. fulva
 
中国産。日本には古く入り、栽培。
ニシノハマカンゾウ   (堀田)H. fulva var. aurantiaca
ノカンゾウ 長筒萱草
 
(小萱)
(牧野・堀田)H.fulva var. disticha
(林) H.longituba auct. non Miq.
(鈴木・佐竹)H.fulva var. longituba auct.non(Miq.)Maxim.
(YList)H. disticha
その他
(小石川植物園)H.flava var. longituba
(東京都立薬用植物園) H.littorea
ヤブカンゾウ
 (カンゾウ・ワスレグサ)
重瓣萱草
 
(千葉萱)
(牧野・鈴木・林・佐竹・堀田・小石川植物園) H.fulva var. kwanzo
また H.disticha var.kwanzo
ハマカンゾウ   (牧野・佐竹・堀田・小石川植物園)H.fulva var. littorea
(林) H.littorea
また H. aurantiaca var. littorea
ベニカンゾウ   (YList) H. fulva var. longituba, H. exilis
ヒメノカンゾウ   (YList) H. fulva var. pauciflora
アキノワスレグサ   (YList) H. fulva var. sempervirens
(堀田)
H.sempervirens
 
中国原産、日本(近畿以西の暖地)に帰化
ハクウンキスゲ   (YList) H. hakuunensis
 
日本(対馬)・朝鮮に分布。
マンシュウキスゲ 黃花萱草
 
(黄花菜・野金針菜)
(YList) H. lilioasphodelus, H.flava, H.flava var.minor
(佐竹・小石川植物園・中草藥・中藥辭)
H.flava *1
 
中国の東北・河北・甘肅・新疆・河南・江蘇・浙江・安徽・湖北・雲南・四川・貴州に分布
  北黄花菜
 (鹿葱)
(中国図鑑・中草藥)H.lilioasphodelus *1
  『中国本草図録』Ⅳ/1927
ホソバキスゲ 小黄花菜
 (紅萱・黄花・金針・小萱草)
(堀田) H.lilioaspheloides *1
(小石川植物園・中国図鑑・中草藥・中藥辭)
H.minor
 中国の東北・河北・山西・陝西・山東・江蘇・江西に分布。『中国本草図録』Ⅵ/2935
エゾキスゲ   (堀田) H.lilioaspheloides var.yezoensis
(佐竹・小石川植物園) H.flava var. yezoensis
また H.thunbergii auct.non Baker,
H.yezoensis
トウカンゾウ
 (ワスレグサ、
 ナンバンカンゾウ)
  (堀田)H.major
(東京都立薬用植物園)H.aurantiaca
エゾゼンテイカ
 (オオゼンテイカ)
大花萱草 (林・中藥辭) H.middendorffii
(小石川植物園) H.middendorffii var. esculenta
  矮萱草 (中国図鑑)H.nana
  褶葉萱草
 (連珠炮・下奶藥・黃花菜・提心吊膽)
(中国図鑑・中草藥・中藥辭)H.plicata
 
中国(雲南)に分布、『雲南の植物Ⅱ』252・『中国本草図録』Ⅱ/0915
    牧野は『改訂増補牧野新日本植物図鑑』(1989)
鈴木は『園芸植物』(1998)
林は 『日本の野草』(1983)
佐竹は『日本の野生植物 草本』(1981)
堀田は『週刊朝日百科 植物の世界』10/82-86
中国図鑑は『中国高等植物図鑑』(1976)
中草藥は『全国中草薬匯編』下(1978)
中藥辭は『中薬大辞典』(1977)
YListは、米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html
 *1 『中国高等植物図鑑』は、H. flava を H.lilioasphodelus と同一とするが、『全国中草薬匯編』は両者を区別する。
 ユリ科 Liliaceae(百合科)については、ユリ科を見よ。
 漢名の萱草(カンソウ,xuancao)は、古くは諼草・蘐草(カンソウ,xuancao)と書いた。
 諼・蘐とは、わすれる意。萱は、諼・蘐と同音の 置き換え字。人の憂いを忘れさせる草(忘憂草)の意。
 和名のカンゾウ・ワスレグサは、漢名から。
 ただし、中国とは異なり、人を忘れる・恋を忘れる意にかけてイメージされることが多い。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)萱草に、「漢語抄云、和須礼久佐、俗云環藻二音」と。
 属名は、ギリシア語の「一日 hemera」+「美しい kallos」、花が一日で萎れることから。
 英名の day lily も同意。
 日本でも栽培しているホンカンゾウ、その変種であるヤブカンゾウは、ともに中国原産。
 本来 日本の関東・関西あたりに自生していたものは、ノカンゾウユウスゲなど。
 根にアルカロイドを含み、有毒。
 春の若葉は、野菜として食う。
 根は、薬用にする。ただし、いくつかの種では毒性が強く、適量を過ごすと失明・死亡に至ることがあるので、医師の指導のもとで慎重に用いよ、とある
(『中薬志Ⅰ』pp.490-494・『全国中草薬匯編』)ホンカンゾウを見よ
 中国におけるカンゾウについては、ホンカンゾウを見よ
 日本では、忘れ草は『万葉集』に、

   萱草(わすれぐさ)吾が紐に付く香具山の故
(ふ)りにし里を忘れむが為 (3/334,大伴旅人)
   萱草吾が紐に着く時と無く念ひわたれば生けりともなし
(12/3060,読人知らず)
   萱草吾が下紐に著けたれど醜
(しこ)のしこ草ことにしありけり (4/727,大伴家持)
   萱草垣もしみみに殖ゑたれど鬼
(しこ)のしこ草猶恋ひにけり (12/3062,読人知らず)
 
 『古今集』には、

   忘草 たねとらましを あふことの いとかくかたき 物としりせば
(よみ人しらず)
   こふれども あふよのなきは 忘草 ゆめぢにさへや おひしげるらん (同)
   忘草 かれもやすると つれもなき 人の心に 霜はをかなむ
(源宗于)
   忘草 なにをかたねと おもひしは つれなき人の 心なりけり
(素性法師)
   住吉と あまはつぐさも ながゐすな 人忘草 おふといふなり
     
(壬生忠岑「あひしりける人の すみよしにまうでけるに よみてつかはしける」)

 『後撰集』には、

   思とは いふ物からに ともすれば わするゝ草の 花にやはあらぬ
     
(よみ人しらず「女のもとより忘草にふみをつけておこせて侍ければ」)
   わがためは 見るかひもなし 忘草 わする許の こひにしあらねば
     
(紀長谷雄「いひかはしける女の、いまは思わすれねといひ侍ければ」) 
 これらのわすれぐさは、渡来種のホンカンゾウ又はヤブカンゾウであろうか、日本原産のユウスゲを萱草に見立てたものであろうか。
 『大和物語』162に「同じ草を忍ぶ草、忘れ草といへば、云々」とあり、この頃からカンゾウの別名として「しのぶ草」が加わった。
 シノブの誌を見よ。
 『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、「萱草(わすれくさ・くわんさう) 初中。花形百合のごとく、朝咲たる花、夕ニしぼみ、其次の花段々に咲。葉ハほそ長ク菖蒲のかたち。萱(わすれ)草を水ニ入て聖霊(しやうりやう)ニ手向(たむくる)、靈(れい)うれいをわするゝゆへニ、忘憂(もういう)といふ、此草の事にや、不詳。・・・萱草(わすれぐさ)は何種もありて紛ハし。○「おひて身の うきをも今ハ わすれ草」とよめるハ、さくらのよし。又うのはなのおちたるを見て、わすれ草ならバ、なごりを思ひてやちりつらんと。○「もみちては 花咲色を わすれ草」是ハしをんとこそ聞といひし人も有。又「きしにおふてう恋わすれ草」○「住吉の 忘か草の たねもかな」是等ハ住吉の岸ニ生るよし。又忍草といふ草ニ似て、石上枯(かれき)ニ生る草をわすれ草共いふ。○「忘草 生るのべとハ 見るらめど こいしのぶなる 後もたのまん」忍草といふハ、わすれ草よりまた異有、つりしのぶといふ」と。

     三首
   萱草花
(くわんざう)の夕日の川に出でしとき別れは其所に待ちてありけり
   夕日の朱
(しゅ)を吸ひ盛るくわんざうの花に男はあはれなりけり
   今別れんとする心の静けさ、くわんざうの夕日の朱
(あけ)は死にて動かず
      
(島木赤彦『馬鈴薯の花』)
 
 土屋文明(1890-1990)が、第二次世界大戦後の疎開先(群馬県吾妻郡原町川戸)で、三月二十日に「甘草(かんぞう)のつむべき畦を見に出でて」「吾が手の指の見ゆるかぎり甘草を切」り、「甘草を煮てうましともうまし」と詠った(『山下水』1946)甘草は、カンゾウ(萱草。ことにはヤブカンゾウ)の誤りであろう。

 カンゾウの仲間 Hemerocallis には、野生種のほかにもさまざまな園芸品種があるようで、アトミ近隣の農家ではそれらを庭に畑に植えている。
2005/07/11  三芳町竹間沢
 また、アトミのキャンパス内にも次の二種類のカンゾウの仲間がさいている。
2004/06/28 
2005/07/07 

跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
クマタケラン ハス カキツバタ ヒメカンゾウ ヒレアザミ ハス 跡見群芳譜トップ 花卉譜index