説 |
『万葉集』巻8/1537;1538 に、山上憶良(660-733)の歌として次のものが載る。
山上臣憶良、秋の野の花を詠める 二首 |
秋の野(ぬ)に 咲きたる花を
指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
芽(はぎ)が花 を花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花
をみなへし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがほ)の花 |
これより、ハギ・ススキ・クズ・ナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・あさがおを、秋の七草と称する。
ただし、ここに言うあさがおは 今日のアサガオではない。では何かということになるが、キキョウであったとする説が強い。 |
このほか、秋の草花を列挙した例として、吉田兼好『徒然草』139段に、「秋の草は荻【オギ】・薄【ススキ】・きちかう【キキョウ】・萩【ハギ】・女郎花【オミナエシ】・藤袴【フジバカマ】・しをに【シオン】・われもかう【ワレモコウ】・かるかや【オガルカヤまたはメガルカヤ】・りんだう【リンドウ】・菊【キク】。黄菊も。つた【ツタ】・くず【クズ】・朝顔【アサガオ】、いづれもいと高からず、さゝやかなる、墻に繁からぬ、よし」と。 |
なお、後になって春の七くさが成立した。 |
誌 |
「秋の七草」は、一時期にさきそろうことはむずかしく、盆や十五夜などにそれぞれの花が供えられて鑑賞され、あるいは神の依り代とされた。 |
みどりなる ひとつ草とぞ 春はみし 秋は色々の 花にぞありける
もゝくさの 花のひもとく 秋ののに 思ひたはれむ 人なとがめそ
(よみ人しらず、『古今和歌集』)
あきののに みだれてさける 花の色の ちぐさに物を 思ふころかな
(紀貫之、『古今和歌集』)
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