やまはぎ (山萩) 

学名  Lespedeza bicolor var. japonica
日本名  ヤマハギ
科名(日本名)  マメ科
  日本語別名  ハギ
漢名  胡枝子(コシシ,húzhīzĭ)
科名(漢名)  豆(トウ,dòu)科
  漢語別名  胡枝條(コシジョウ,huzhitiao)、掃皮(ソウヒ,saopi)、隨軍茶(ズイグンチャ,suijuncha)、萩(シュウ,qiu)、
英名  Bush clover
2023/06/21 植物多様性センター 

2008/07/24 長野県 蓼科山

2012/08/28 長野県 茅野市北山

2008/08/29 群馬県 浅間高原

2021/09/10 小平市玉川上水緑地 

2005/09/18 神代植物公園

葉裏   2021/07/28 小平市 玉川上水緑地

2021/10/23 野川公園自然観察園 2021/09/29 小平市玉川上水緑地 

2006/11/18 神代植物公園
2008/11/19 跡見学園女子大学新座キャンパス
 ハギ属 Lespedeza(胡枝子 húzhīzĭ 屬)には、インド・東南&東アジア・オーストラリア・北アメリカに44種がある。

  L. bicolor(胡枝子・胡枝條・掃皮・隨軍茶・萩・掃皮)
    ヤマハギ var. japonica(日本胡枝子・鹿鳴草)
    チャボヤマハギ var. nana
  キハギ (ノハギ) L. buergeri(綠葉胡枝子)
  ナガバメドハギ L. caraganae(長葉胡枝子)
 遼寧・河北・陝西・甘粛・河南・山東産、四国に帰化 
  L. chinensis(中華胡枝子・小葉馬料梢)
  L. cuneata
    メドハギ var. cuneata(L.juncea var.subsessilis, L.juncea var.sericea,
        L.sericea;截葉鐵掃帚・老牛筋・絹毛胡枝子)『中国雑草原色図鑑』106
    ハイメドハギ var. serpens(L.juncea var.serpens, L.serpens)
  マルバハギ (ミヤマハギ・コハギ) L. cyrtobotrya(短梗胡枝子・短序胡枝子・圓葉胡枝子)
        
 『中国本草図録』Ⅱ/0629
  オオバメドハギ L. daurica(興安胡枝子・達呼里胡枝子・枝兒條・牛枝子・豆豆苗)
        
本州・四国に帰化 『中国本草図録』Ⅴ/2163・『中国雑草原色図鑑』107
  オクシモハギ L. davidii(大葉胡枝子・活血丹)
  L. dunnii(春花胡枝子)
  L. fasciculiflora(束花鐡馬鞭・地筋)
  トウクサハギ L. floribunda(多花胡枝子・鐵鞭草・米湯草)
         
遼寧・河北・山西・甘粛・河南・山東・華東・湖北・廣東・四川産 『中国本草図録』Ⅸ/4198
  L. formosa(美麗胡枝子・馬掃帚)
 『中国本草図録』Ⅶ/3181
    subsp. velutina(L.thunbergii subsp.formosa)
      チョウセンヤマハギ
(ビッチュウヤマハギ) var. velutina
      サツマハギ var. satsumensis(L.satsumensis)
  サガミメドハギ L. hisauchii
東京・神奈川の海浜に産、絶滅 
  ツクシハギ (ニッコウシラハギ・ヤブキハギ) L. homoloba
  カラメドハギ L. inschanica(陰山胡枝子・白指甲花・野苜蓿)
        
遼寧・内蒙古・河北・山西・陝甘・河南・山東・華東・兩湖・西南産、四国に帰化 
  シベリアメドハギ(カラメドハギ) L. juncea(L.hedysaroides,
          L.cuneata var.juncea;細葉胡枝子・尖葉鐡掃帚)『中国本草図録』Ⅹ/4664
          
北海道・本州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・極東ロシア・東シベリア産
  アカバナメドハギ L. lichiyuiae(紅花截葉鐵掃帚)
漢土原産、四国に帰化 
  チョウセンキハギ L. maximowiczii
  クロバナキハギ L. melanantha(L.bicolor var.melanantha, L.bicolor var.higoensis)
  L. penduliflora
    subsp. cathayana(垂花胡枝子)
  L. pilosa
    ネコハギ var. pilosa(鐵馬鞭・九頭蛇草)
         
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・陝甘・華東・兩湖・廣東・西南産
    タチネコハギ var. erecta
  ビロードハギ L. stuevei
 USA産 
  L. thunbergii(L.penduliflora)
    タイワンハギ subsp. formosa(美麗胡枝子)
    サツマハギ subsp. satsumensis(L.formosa var.satsumensis) 
    ケハギ subsp. patens(L.patens)
    ミヤギノハギ
(ナツハギ) subsp. thunbergii
      ビッチュウヤマハギ
(チョウセンヤマハギ・ニシキハギ) f. angustifolia
      シロバナハギ(シラハギ) f. alba
      ソメワケハギ f. versicolor
  イヌハギ L. tomentosa(絨毛胡枝子・山豆花・毛胡枝子・白萩・小雪人參)『中国本草図録』Ⅶ/3182
        
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・漢土・極東ロシア・ヒマラヤ産
  マキエハギ L. virgata(細梗胡枝子)
   
 マメ科 Leguminosae(Fabaceae;豆 dòu 科・荳科)については、マメ科を見よ。
 日本語のはぎは、歴史的にはハギ属の植物の総称であるが、多くの場合ヤマハギであろうという。
 「和名はぎハ生え芽(ぎ)ノ意ニテ舊株ヨリ芽ヲ萌出スルヨリ云フト謂ヘリ、昔はぎヲ芽子ト書キ又芳宜草トモ鹿鳴草トモ書ケリ、萩ハ和字ニテ此種秋ニ盛ンニ花サクヨリ草冠リニ秋ヲ書キはぎト訓マセリ、而シテ中國ノ萩トハ何ノ關係モ無シ」(『牧野日本植物図鑑』)。  
 『万葉集』に、ハギを芽・芽子と書く。
 ただし、源順『倭名類聚抄』(ca.934)によれば、この字は
(正しくは芽ではなく){芽のノに丶を代入}(コ,hù)であり、ハギ(波木)の意味であると言う。今日でも、これに従い■をハギとする説がある(『日本古典文学大系』など)
 ■は、『諸橋大漢和辞典』によれば、●{艸冠に互}(コ,hù)の異体字であり、「こくさぎ」と訓じ、草の名であるという。なお、今日「こくさぎ」と呼ぶ植物は、ミカン科コクサギ属の落葉低木 コクサギ Orixa japonica(臭常山)である。
 中国の『漢語大字典』によれば、■(コ,hù)・●(コ,hù)は同字で、「草の名、繩をつくることができる」とあるのみ。
 の字をハギに当てるのは 日本独自の用い方であり、「秋に花のさく草」という意味で当てた国字という。
 漢語の(シュウ,qiū)は、キク科のよもぎ・ちしゃなどの仲間(蕭・萵・蒿)を指すことば。カワラヨモギ Artemisia capillaris(菌陳蒿)・カワラニンジン A. apiacea(青蒿)などと訓じる。
 漢語でハギは胡枝子(コシシ,húzhīzĭ)。
 しかし『植物学大辞典』
(1918 商務印書館)が、胡枝子について"日本亦名「萩」"と記して以来、『中国高等植物図鑑』『漢語大詞典』などは、Lespedeza sp.の別名を萩とする。日本において萩をハギとする言語習慣が、中国にも及んだもの。
 属名 Lespedeza は、1784-1790のフロリダのスペイン人総督セスペデス V.M.de Cespedez に因む。Cespedes が Lespedeza になったのは、誤植に端を発するという。
 北海道・本州・四国・九州・朝鮮・臺灣・華東・兩湖・兩廣・西南・陝甘・華北・遼寧・吉林・黑龍江・モンゴリア・極東ロシア・シベリア東南部に分布。
 中国では、根を薬用にする。
 しかし、文学にも美術にも まず登場することのない植物。
 日本では、萩は『万葉集』以来秋の七草の一。
 『万葉集』に、芽・芽子をはぎと訓む。集中、141首に詠いこまれており、その数は植物中第一。詳しくは文藝譜を見よ。

 いくつか例を挙げれば、まださかぬ花を待ちこがれて、

   吾が待ちし 秋は来たりぬ 然れども
     芽子の花ぞも 未だ咲かずける
(10/2123,読人知らず)
   秋風は 急(と)くとく吹き来(こ) 芽子の花 落らまく惜しみ 競ひ立つ見む
      (10/2108,読人知らず)
   我が屋前
(やど,には)の 芽子の末(うれ)長し 秋風の 吹きなむ時に 開かむと思ひて
     
(10/2109,読人知らず)
   この暮(ゆふべ) 秋風吹きぬ 白露に あらそふ芽子の 明日咲かむ見む
     
 (10/2102,読人知らず)

 花開くと、野にさく花、庭にさく花を、めで慈しんだ。

   見まく欲りし 吾が待ち恋ひし 秋芽子は 枝もしみみに 花開きにけり
     
(10/2124,読人知らず)
   秋風は すずしくなりぬ 馬並めて いざ野に行かな 芽子の花見に
     
(10/2103,読人知らず)
   をみなへし あきはぎしの(凌)ぎ さをしか(鹿)の
     つゆ
(露)わけな(鳴)かむ たかまと(高円)のの(野) (20/4297,大伴家持)
   をみなへし 秋芽た折れ 玉鉾の 道行裹(みちゆきつと)と 乞はむ児がため
     
(8/1534,石川老夫)
   吾が衣 摺れるにはあらず 高松の 野邊行きしかば 芽子の摺れるそ
     
(10/2101,読人知らず)

   恋ひしくは 形見にせよと 吾が背子が 殖ゑし秋芽子 花咲きにけり
     
(10/2119,読人知らず)
   雁がねの 初音聞きて 開き出たる 屋前の秋芽子 見に来(こ)吾が背子
      (10/2276,読人知らず)
   吾が屋前
の 芽子の花咲けり 見に来ませ 今二日ばかり あらば散りなむ
      
(8/1621,巫部麻蘇娘子)
   吾が屋戸の 秋の芽子開く 夕影に
     今も見てしか 妹の光儀
(すがた) (8/1622,大伴家持)
   我が背子が 挿頭(かざし)の芽子に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし
      
(10/2225,読人知らず)
   草深み 蟋
(こほろぎ)(さは)に 鳴く屋前の 芽子見にきみは 何時か来まさむ
     
(10/2271,読人知らず)

 ハギには、置く露が つきものであった。

   秋の野に 開ける秋芽子 秋風に 靡ける上に 秋露置けり
   さを鹿の 朝立つ野辺の 秋芽子に 玉と見るまで 置ける白露
   さを鹿の 胸別
(むなわけ)にかも 秋芽子の散り過ぎにける 盛りかも行ぬる
      
(8/1597;1598;1599,大伴家持「秋歌三首」)
   あき芽子に 置ける白露 朝な朝な 珠としそ見る 置ける白露
(10/2168,読人知らず)
   白露を 取らば消ぬべし いざ子ども 露に争
(きそ)ひて 芽子の遊びせむ
      
(10/2173,読人知らず)
   秋芽子の 上に白露 置く毎に 見つつそしのふ 君がすがたを
(10/2259,読人知らず)
   秋芽子の 上に置きたる 白露の 消
(け)かもし(死)なまし 恋ひつつあらずは
     
(8/1608,弓削皇子)
   秋芽子に 置きたる露の 風吹きて 落つる涙は 留めかねつも
(8/1617,山口女王)
   秋芽子の 開き散る野辺の 暮露
(ゆふつゆ)に ぬれつつ来ませ 夜は深けぬとも
      
(10/2252,読人知らず)

 人々は散る花を惜しんだが、ことに山から聞えてくるさお鹿の鳴声に、愛惜の念を託した。

   秋風は 日にけに吹きぬ 高円の
     野辺の秋芽子 散らまく惜しも
(10/2121,読人知らず)
   春日野の 芽子し落りなば 朝東
(こち)
     風に副
(たぐ)ひて 此処に落り来ね
     
(10/2125,読人知らず)
   吾が岳(をか)の 秋芽の花 風を痛み
     落るべくなりぬ 見む人もがも (8/1542,大伴旅人)
   秋芽子を 落り過ぎぬべみ 手折り持ち 見れどもさぶし 君にし有らねば
     
(10/2290,読人知らず)

   さを鹿の 心相念ふ 秋芽子の しぐれの零るに 落らくし惜しも
      (10/2094,柿本人麻呂)
   奥山に 住むとふ男鹿の 初夜(よひ)去らず 妻問ふ芽子の 散らまく惜しも
      (10/2098,読人知らず)
   秋芽の 落りの乱ひに呼び立てて鳴くなる鹿の音の遥けさ (8/1550,湯原王)
   さを鹿の 来立ち鳴く野の 秋芽子は 露霜負ひて 落りにし物を (8/1580,文忌寸馬養)
   雁来れば 芽子は散りぬと さを鹿の 鳴くなる音も 裏ぶれにけり
      (10/2144,読人知らず)

   真葛原 なびく秋風 吹く毎に 阿太(あだ)の大野の 芽子の花散る
      (10/2096,読人知らず)
   秋芽子は 雁にあはじと 言へればか 音を聞きては 花に散りぬる
      (10/2126,読人知らず)
   吾が屋戸の 一村芽子を 念ふ児に 見せず殆(ほとほと) 散らしつるかも
      (8/1565,大伴家持)
   秋去らば 妹に視せむと 殖ゑし芽子 露霜負ひて 散りにけるかも
      (10/2127,読人知らず)
   秋芽子を 落らす長雨の ふるころは 一り起き居て 恋ふる夜そおおき
     
(10/2262,読人知らず)
   暮
(よひ)にあひて 朝(あした)(おも)無み 隠野(なばりの)
     芽子は散りにき 黄葉
(もみち)早続(つ) (8/1536,縁達師)

 花のあと、葉の色づくのを楽しんだ。

   雲の上に 鳴きつる雁の 寒きなべ 芽子の下葉は 黄変
(もみち)ぬるかも
     
(8/1575,読人知らず)
   吾が屋前の 芽子の下葉は 秋風も 未だ吹かねば 此くそもみてる
     
(8/1628,大伴家持)
   このころの 五更
(あかとき)露に 吾が屋戸の秋の芽子原 色づきにけり
     
(10/2182,読人知らず)
   さ夜深けて しぐれなふりそ 秋芽子の 本葉の黄葉(もみち) 落らまく惜しも
     
(10/2215,読人知らず)
 
 『古今集』に、

   あきはぎも 色づきぬれば きりぎりす わがねぬごとや よるはかなしき
   夜を寒み 衣かりがね なくなべに 萩のしたばも うつろひにけり
   あき萩を しがらみふせて なくしかの めにはみえずて をとのさやけさ
   夜をさむみ 衣かりがね なくなべに はぎのしたばも うつろひにけり
   秋はぎに うらびれをれば あしひきの 山したとよみ 鹿のなくらん
   あきはぎを しがらみふせて なくしかの めには見えずて をとのさやけさ
   あきはぎの したばいろづく 今よりや ひとりある人の いねがてにする
   なきわたる かりの涙や おちつらん 物思ふやどの はぎのうへの露
   はぎの露 たまにぬかんと とればけぬ よしみん人は 枝ながらみよ
   おりてみば おちぞしぬべき 秋はぎの 枝もたわゝに をけるしら露
   萩が花 ちるらむをのの つゆじもに ぬれてをゆかん さよはふくとも
     
(よみ人しらず、『古今和歌集』)
   秋はぎの ふるえにさける 花みれば 本の心は わすけざりけり
     
(凡河内躬恒「むかしあひしりて侍りける人の、秋ののにあひて、
         ものがたりしけるついでによめる」、『古今集』)

   秋はぎの 花さきにけり 高砂の おのへのしかは 今やなくらん
     
(藤原敏行「これさだのみこの家の歌合によめる」、『古今集』)
   すがるなく 秋のはぎはら あさたちて たび行く人を いつとかまたん
     
 (よみ人しらず)
   秋はぎの 花をば雨に ぬらせども 君をばまして をしとこそおもへ
     
(紀貫之「かむなりのつぼにめしたりける日、おほみきなどたうべて、あめのいたう
         ふりければ、ゆふさりまで侍りて、まかりいでけるをりに、さか月をとりて」)

   空蝉の からは木ごとに とゞむれど たまのゆくゑを みぬぞかなしき
     
(よみ人しらず、巻10物名「からはぎ」)
   宮木野の もとあらのこはぎ つゆをおもみ 風邪をまつごと 君をこそまて
     
(よみ人しらず)
   吹きまよふ 野風をさむみ 秋はぎの うつりもゆくか 人の心の
 (常康親王)

 後には、

   あきまでの いのちもしらず はるのゝに はぎのふるねを やくとやくかな
     
(和泉式部、『後拾遺和歌集』)

   明けぬとて野べより山にいるしかのあと吹きおくるはぎの下風
     
(源通光、『新古今和歌集』)
   はぎのつゆ 玉にぬかむと とればけぬ よしみむ人は 枝ながら見よ
     
(よみ人しらず、『古今和歌集』)
 
 清少納言『枕草子』第67段「草の花は」に、「萩、いと色ふかう、枝たをやかにさきたるが、朝露にぬれてなよなよとひろごりふしたる、さをしか(牡鹿)のわきてた(立)ちな(馴)らすらんも、心ことなり」と。
 西行(1118-1190)『山家集』に、

  秋
   ゆふ
(夕)露を はらへばそで(袖)に たま(玉)きえて
     みちわけかぬる をの
(小野)のはぎはら
   すゑ葉ふく 風はのもせに わたるとも あらくはわけじ はぎのしたつゆ
   を(折)らで行 そでにも露ぞ こぼれける はぎのはしげき のべのほそみち
   みだれさく のべのはぎはら わけくれて 露にも袖を そ
(染)めてける哉
   さきそ
(添)はん 所の野べに あらばやは 萩よりほかの はなも見るべき
   けふ
(今日)ぞしる そのえ(江)にあらふ からにしき
     はぎさくのべに 有けるものを
   おもふにも すぎてあはれに きこゆるは
     萩のは
(葉)みだる 秋のゆふ風
   をじか
(雄鹿)ふす はぎさくのべ(野辺)の 夕露を
     しばしもためぬ をぎのうはかぜ
(上風)
   露ながら こぼさでをらん 月かげに こはぎがえだの まつむしのこゑ
   しだりさく はぎのふるえ
(古枝)に 風かけて
     すがひすがひに をじか
(雄鹿)なくなり
   はぎがえの つゆ
(露)ためずふく 秋風に をじかなくなり みやぎの(宮城野)のはら
   こはぎさく 山だのくろ(畔)の むしのねに いほ(庵)(守)る人や 袖ぬらすらん
   ながむれば 袖にも露ぞ こぼれける そとものをだ
(小田)の 秋の夕ぐれ
   ふきすぐる 風さへことに 身にぞしむ 山田の庵の あきの夕ぐれ
  冬
   わけかねし そでに露をば とどめおきて
     しも
(霜)にくちぬる まの(真野)のはぎはら
  恋
   くちてたゞ しをればよしや 我袖も はぎのしたえ
(下枝)の 露によそへて
   あはれとて とふ人のなどや なかるらん ものおもふやどの 萩のうは風
  雑
   衣で
(手)に うつりしはなの 色かれて そで(袖)ほころぶる はぎが花ずり(摺)
 

   萩原や一夜
(ひとよ)はやどせ山の犬 (芭蕉,1644-1694。山の犬は狼)
   一家
(ひとつや)に遊女もねたり萩と月 (同)
   浪の間や小貝にまじる萩の塵 
(同)
   ぬれて行や人もおかしき雨の萩 
(同)
   白露もこぼさぬ萩のうねり哉 
(同)

   小狐の何にむせけむ小萩はら 
(蕪村,1716-1783)
   岡の家
(や)に画(ゑ)むしろ織るや萩の花 (同)
   茨老(おい)すゝき痩(やせ)萩おぼつかな (同)
 

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