あづさ (梓・楸) 

 
 あづさは、現代仮名遣いではあずさ
 の字は、
  Ⅰ. 漢語では zi
3 と読み、ノウゼンカズラ科のキササゲを指し、
  Ⅱ. 日本語では音は、訓はあづさ
     カバノキ科のヨグソミネバリ
(ミズメ) Betula grossa を指す。

 の字は、
  Ⅰ. 漢語では qiu1 と読み、
     ① ノウゼンカズラ科のトウキササゲ、または
     ② トウダイグサ科のアカメガシワを指し、
  Ⅱ. 日本語では音はシュウ、訓はひさぎ
(ひさき;久木)
     ① ノウゼンカズラ科のキササゲ、または
     ② トウダイグサ科のアカメガシワを指す。
 源順『倭名類聚抄』(ca.934)梓に「和名阿豆佐」と。
 あづさ(梓)の木は、「古来キササゲ・アカメガシワ・オノオレ・リンボク(ヒイラギガシ)などの諸説があり一定しなかった。ところが白井光太郎がカバノキ科のヨグソミネバリ(ミズメ)説を唱え、正倉院の梓弓についての顕微鏡的調査の結果からも実証され、現在これが定説になっている。このほか、アサダ・ナナカマド・ニシキギなどにもアズサの方言がある」(平凡社『世界大百科事典』)
 むかし日本ではあづさ(梓)の木で作った弓をあづさ弓(梓弓)と呼んだ。
 『万葉集』に詠われた歌は、文藝譜を見よ。代表的なものは、

   やすみしし わご大君
(舒明天皇,在位629-641)
   朝
(あした)には とり撫でたまひ 夕(ゆふべ)には い倚り立たしし
   御執
(みと)らしの 梓の弓の 金弭(かなはず)の 音すなり
   朝猟
(あさかり)に 今立たすらし 夕猟(ゆふかり)に 今立たすらし
   御執らしの 梓の弓の 金弭の 音すなり
(巻1/3)

    ・・・ 梓弓 手にとりもちて 剣大刀 こし(腰)にと(取)りは(佩)き 
   あさ
(朝)まも(守)り ゆふ(夕)のまもりに 大王の み門のまもり
   われ
(吾)をおきて ひと(人)はあらじと ・・・ (18/4094,大伴家持)

   ・・・ 梓弓 八つたばさみ ひめかぶら(鏑) 八つたばさみ
   しし
(鹿)待つと 吾が居る時に ・・・ (16/3885,読人知らず)
 
 「梓弓」の語は、そのものの名としてのほかに、い・いる・ひく・はる・もと・すえ・つる・よる・かえる・や・音などにかかる枕詞。また「玉梓(たまずさ)の」は「使い」にかかる枕詞。ともに『万葉集』に多くの用例がある。文藝譜を見よ。
 平安時代以降、あづさという植物そのものが歌に詠われることはほとんど無く、多くは「梓弓」の形で枕詞として用いられた。

   梓弓 をして春雨 けふふりぬ あすさへふらば 若菜つみてむ
     
(読人しらず。『古今集』)
   梓弓 春の山辺を こえくれば 道もさりあへず 花ぞちりける
     
(紀貫之「しがの山ごえに女のおほくあへりけるによみてつかはしける」、『古今集』)
   梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも おもほゆるかな
     
(凡河内躬恒「はるのとくすぐるをよめる」、『古今集』)
   梓弓 ひけばもとすゑ 我方に よるこそまされ こひの心は
 (春道列樹、『古今集』)
   梓弓 ひきののつゞら すゑつゐに わがおもふ人に ことのしげけん
     
 (よみ人しらず、『古今集』)
 

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