辨 |
アカメガシワ属 Mallotus(野桐 yětóng 屬)には、旧世界の熱帯・亜熱帯に約110-150種がある。
ハクシュウ M. apelta(白背葉) 福建・江西・湖南・兩廣・雲南産 『中国本草図録』Ⅰ/0172
『全國中草藥匯編 上』pp.297-298
M. barbatus(毛桐・黃花葉・紅紅婦娘木・紫糠木・圓鞋) 湖南・兩廣・西南産
『雲南の植物Ⅲ』114・『中国本草図録』Ⅱ/0669
アカメガシワ M. japonicus(野梧桐)
M. nepalensis(尼泊爾野桐・山桐子・毛桐・臭樟木・大馬桑葉) ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅲ』115
ウラジロアカメガシワ M. paniculatus(白楸) 琉球・熱帯&亜熱帯アジア産
クスノハガシワ M. philippensis(粗糠柴・紅果果・香桂樹)
琉球・臺灣・華東・兩湖・兩廣・西南・熱帯&亜熱帯アジア産
『雲南の植物Ⅲ』115・『中国本草図録』Ⅱ0670
M. repandus(石巖楓・黃豆樹・萬子藤) 臺灣・兩廣産 『中国本草図録』Ⅱ0671 『全国中草葯匯編』下/61
M. tenuifolius(野桐・狗尾巴樹・黃栗樹) 河南・陝甘・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産
『中国本草図録』Ⅲ/1251
var. paxii(紅葉野桐) 陝西・華東・兩湖・兩廣・四川産
|
トウダイグサ科 Euphorbiaceae(大戟 dàjĭ 科)については、トウダイグサ科を見よ。 |
訓 |
「和名赤芽槲ハ其芽紅赤色ナルヨリ云フ、古來此葉ニ食物ヲ載ス、故ニ五菜葉或ハ菜盛葉ノ稱アリ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
『倭名類聚抄』楸に、「比佐木」と。
『大和本草』に、「莔{ケイ}麻(ゴサイバ) 又◆{草冠に頃}麻・白麻トモ云、倭名コサイバト云・・・又黒染ニ用ユ、別ニ赤カシハト云木アリ、是モ黒染ニス、是亦赤ゴサイバト云、同名異物ナリ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』梓に、「アヅサ和名鈔 アカメガシハ京 アカゞシハ ゴサイバ播州 アカゴサイバ筑前 シハギ河州 カハラシバ阿州 カハラガシ豫州 テウシノキ江州 アカベ同上 メコロビ若州 カヅ播州 ゴシヤバ城州白川 アカゞヂ同上加茂 カイバ長州 タヅハ泉州 サイモリバ越中 カハラガシハ土州」と。
ただし、漢名を梓(zĭ,シ)というもの、或は和名をアズサというものは、いずれもアカメガシワではない。アズサを見よ。 |
説 |
本州(宮城以南)・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・浙江・江蘇に分布。
雌雄異株。 |
誌 |
生薬アカメガシワは、アカメガシワの樹皮である(第十八改正日本薬局方)。
別名は将軍木皮(ショウグンボクヒ)。 |
古来歌に詠われてきた久木(楸,ひさぎ)は、これであろうという(一説にキササゲ)。
『万葉集』に、
烏玉(ぬばたま)の 夜のふけゆけば 久木生ふる
清き河原に ち鳥しば鳴く (6/925,山部赤人)
去年(こぞ)咲きし 久木今開く 徒(いたづら)に
地(つち)にや堕ちむ 見る人なしに (10/1863,読人知らず)
浪の間ゆ 見ゆる小島の 浜久木
久しくなりぬ 君にあはずして (11/2753,読人知らず)
渡会の 大川の辺の 若ひさ木 吾が久ならば 妹恋ひめやも (12/3127,読人知らず)
西行(1118-1190)『山家集』に、
ひさぎおひて すゞめ(涼目)となれる かげなれや
なみ(波)うつきし(岸)に 風わたりつつ
近代では、
赤目柏(あかめがしは)はしのび音に葉ぞ泣きそぼち、・・・
薄田泣菫「わがゆく海」(『白羊宮』)より
|