辨 |
ソケイ属 Jasminum(素馨 sùxīn 屬)には、主として旧世界の熱帯・亜熱帯に約200種がある。〔下記のうち、Chrysojasminum(探春花屬)を独立させることがある〕。
ナガバジャスミン J. adenophyllum インドシナ・マラヤ・アッサム産
ツルジャスミン J. azoricum マデイラ産
ベニバナソケイ J. beesianum(紅茉莉・紅素馨・小酒瓶花)四川・貴州・雲南産
『雲南の植物Ⅱ』206・『中国本草図録』Ⅶ/3299 『全国中草葯匯編』下/81
ノハラジャスミン J. bifarium
J. bignoniaceum(Chrysojasminum bignoniaceum) インド・スリランカ産
J. coarctatum(密花素馨) 雲貴・インドシナ・アッサム・インド・ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅲ』225
J. duclouxii(叢林素馨・夾竹桃葉素馨) 廣西・雲南産
『雲南の植物Ⅱ』207・『中国本草図録』Ⅷ/3735
J. elongatum(J.amplexicaule;扭肚藤・猪肚勒)兩廣・雲南・インドシナ・ヒマラヤ産
『中国本草図録』Ⅸ/4292 『全国中草葯匯編』下/304
リュウキュウオウバイ J. floridum(Chrysojasminum floridum;
探春花・迎夏・長春・牛虱子)
河北・河南・陝西・山東・湖北・四川・貴州産 『中国本草図録』Ⅲ/1323
J. fruticans(Chrysojasminum fruticans) 地中海地方・カフカス・イラン産
J. goetzeanum(Chrysojasminum goetzeanum) アフリカ(中部)産
オオバナソケイ(ソケイ・スペインソケイ・ツルマツリ) J. grandiflorum(J.officinale
f.grandiflorum;素馨花) 四川・貴州・雲南・チベット・ヒマラヤ産
J. humile(Chrysojasminum humile)
ヒマラヤソケイ var. humile(矮探春・小黃素馨)
四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・アフガニスタン・イラン産 『雲南の植物Ⅰ』201
ウンナンソケイ f. wallichianum(var.glabrum;羽葉矮探春・羽葉素馨)
雲南・チベット・ヒマラヤ産
キソケイ var. revolutum(矮探春) ヒマラヤ原産
var. siderophyllum(鐵銹葉矮探春)
var. microphyllum(小葉矮探春・小葉素馨) 甘肅・四川・雲南・チベット産
f. kansuense(甘肅矮探春) 甘肅産
シマダソケイ J. lanceolaria(淸香藤・破骨風・破藤風) 『雲南の植物Ⅲ』225
臺灣・長江以南・陝甘・四川・貴州・雲南・インドシナ・マラヤ・アッサム産
『全国中草葯匯編』上/670
J. laurifolium(嶺南茉莉・桂葉素馨)
廣西・雲南・チベット・ヒマラヤ・ベンガル・タイ産 『中国本草図録』Ⅱ/0760
J. leptophyllum(Chrysojasminum leptophyllum)
オウバイモドキ J. mesnyi(J.primulinum;雲南黃馨・野迎春;E.Primrose jasmine)
ケソケイ(ボルネオソケイ) J. multiflorum(J.gracillimum;毛茉莉;E.Borneo jasmine)
インドシナ・インド産
イヌシロソケイ J. nervosum(J.hemsleyi;靑藤仔・鷄骨香・蟹魚膽藤・千里行房)
臺灣・兩廣・四川・貴州・雲南・チベット・インドシナ・マラヤ・ヒマラヤ産
『雲南の植物Ⅲ』225・『中国本草図録』Ⅹ/4791
オウバイ J. nudiflorum(迎春花・金腰帶・小黃花;E.Winter jasmine)
J. odoratissimum(Chrysojasminum odoratissimum;濃香茉莉)
ソケイ(ペルシャソケイ・シロモッコウ) J. officinale(素方花;E.Poet's jasmine,
White jasmine) 四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・西アジアに産
var. grandiflorum(大花素馨花) 『全国中草葯匯編』下/42-43
J. pakeri(Chrysojasminum pakeri) ヒマラヤ西部産
J. pentaneurum(厚葉素馨・靑竹藤) 兩廣・インドシナ北部・ヒマラヤ産 『中国本草図録』Ⅹ/4792
J. polyanthum(素興花・多花素馨・鷄爪花) 四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』208
シャムソケイ J. nobile(J.rex) インドシナ産
マツリカ J. sambac(茉莉;E.Jasmine,Arabian jasmine)
J. seguinii(亮葉茉莉・大理素馨) 廣西・四川・貴州・雲南産 『雲南の植物Ⅱ』208
J. sinense(華淸香藤・華素馨) 臺灣・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産
J. stans(Chrysojasminum stans) エチオピア産
J. subhumile(Chrysojasminum subhumile;滇素馨)
四川・雲南・ミャンマー・ヒマラヤ産 『雲南の植物Ⅱ』208
シロマツリ J. subtriplinerve
オキナワソケイ J. superfluum 琉球産
シロソケイ J. trinerve
ミヤマソケイ J. urophyllum(J.cathayense, J.taiwanianum, J.brevidentatum;
華南茉莉・華南素馨・川素馨) 臺灣・廣西・兩湖・四川・貴州・雲南産
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英語のジャスミン Jasmin は、ソケイ属の植物の総称だが、就中マツリカを指す。 |
モクセイ科 Oleaceae(木樨 mùxī 科)については、モクセイ科を見よ。 |
訓 |
漢名の茉莉花(マツリカ,mòlìhuā)は、サンスクリット語のマーリカー malika・パーリ語のマッリカー mallika の音写、抹厲・末麗・末利・抹利・没利・摩利迦などとも写し、仏典では奇妙・鬘花と意訳する。
サンスクリット語で一名をヴァールシカー varsika、パーリ語でヴァッシカー vassika といい、雨時生・夏生と意訳する。 |
和名は、漢名の音。
『大和本草』茉莉に、「近年異邦ヨリ來レル茶蘭ナルヘシ、ヨクアヘリ」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』10(1806)に、「モウリンクハ薩州 モレン花 モリ花三名ミナ唐音ノ転ナリ」「今ハマリト呼」と。 |
学名・英名のジャスミンは、アラビア語 yasamin・ペルシア語 yasemin から。
漢語にも、野悉蜜(ヤシツミツ,yĕxīmì)・耶悉茗(ヤシツメイ,yēxīmíng)と音写したが、これはオオバナソケイ J.grandiflorum(素馨,ソケイ,sùxīn)を指した。 |
説 |
インド原産。今日では、南インドのマイソール州で盛んに栽培する。 |
誌 |
中国では、唐末頃から兩廣・雲南で栽培され始め、宋代に一般化した。
観賞用のほか、女性は身に着けて首飾りとし、或いは化粧水として用い、またその花瓣を乾燥させて茶に混ぜ、茉莉茶(マツリチャ,molicha。別名は香片茶 xiangpiancha、英名は jasmine tea)として飮用する。 |
中国では、根・花を薬用にする。『全国中草葯匯編』下/361-362 |
日本には「慶長(1596-1615)年中ニ始テ来ルト云、京師ニハ宝暦(1750-1764)ノ頃ヨリ流布ス」(『本草綱目啓蒙』)。 |
茉莉(まつり)花の夜の一室(ま)の香のかげに
まじれる君が微笑(ほゝゑみ)はわが身の痍(きず)を
もとめ来て沁みて薫りぬ、貴(あて)にしみらに。
(蒲原有明「茉莉花」より)
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