しょうぶ (菖蒲) 

学名  Acorus calamus (A. calamus var. angustatus)
日本名  ショウブ
科名(日本名)  サトイモ科
  日本語別名  オニゼキショウ、アヤメ(アヤメグサ・ノキアヤメ) 
漢名  菖蒲(ショウホ,changpu)
科名(漢名)  天南星(テンナンセイ,tiannanxing)科
  漢語別名  臭蒲子(シュウホシ,choupuzi)・臭菖(choupu)、水菖蒲(shuichangpu)・泥菖蒲(nichangpu)、白菖・白菖蒲(baichangpu)、蓀・溪蓀(ケイソン,xisun)、荃(セン,quan)
英名  (Drug) Sweet flag, Sweet root, Sweet rush, (Sweet) Calamus
2007/04/13 せせらぎ公園

2007/05/22 小石川植物園


 ショウブ属 Acorus(菖蒲屬)には、少なく見て2種、多く見て6種がある。
   ショウブ(広義) A. calamus(A.asiaticus;菖蒲・臭蒲子・水菖蒲・白菖蒲)
『中国雑草原色図鑑』342
     ショウブ var. angustatus
     var. verus(細根菖蒲)
   セキショウ A. gramineus(石菖蒲・凌水檔・十香和・水劔草)
     アリスガワセキショウ var. pusillus(錢菖蒲・金錢蒲・細葉菖蒲)
 『中国本草図録』Ⅲ/1415
   A. juncoides(寛葉菖蒲) 『中国本草図録』Ⅹ/4917
   A. macrospadiceus(茴香菖蒲) 『中国本草図録』Ⅹ/4918
   A. rumphianus(長苞菖蒲)
   A. tatarinowii(石菖蒲・九節菖蒲)
     bar. brevispathus(短苞菖蒲・溪蓀) 
 ショウブ属は、永らくサトイモ科 Araceae(天南星科)に分類されてきたが、ごく最近ではショウブ科 Acoraceae として独立させる。
 サトイモ科 Araceae(天南星科)については、サトイモ科を見よ。
 日本では昔、ショウブを「あやめ」と呼んだ。やがて、ショウブに菖蒲の字を当て、「あやめ」と読んでいたが、のちに音読みして「しょうぶ」と呼ぶようになった。
 菖蒲とあやめの関係については、あやめの訓を見よ。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』15(1806)に、「菖蒲 セキセウ ネガラミ大和本草」と、「白菖 アヤメグサ古歌 ウタカタグサ ノキアヤメ 白実草倶ニ同上 セウブ」と。
 広く東アジア・マレーシアからヨーロッパ・北アメリカなどに分布。東アジアのものは四倍体・インドからヨーロッパのものは三倍体・アメリカのものは二倍体が多いという。
 全株に芳香がある。
 中国では、古来菖蒲を辟邪の呪物として用いた。詳しくはセキショウの項を見よ。
 根茎を乾燥して水菖蒲(日本では菖蒲根)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅰ』pp.439-444 
 『群芳譜』は、「菖蒲は、数種類がある。(1)池澤に生え、葉は幅が広く、根は高さ23尺のものは、泥蒲である。名は白菖という。(2)谷間に生え、葉は痩せ、根は高さ23尺のものは、水蒲である。名は溪蓀という。(3)水石の間に生え、葉は剣のような筋があって細く、根は節がびっしりあって高さ1尺ちょっとのものは、石菖蒲である。(4)沙や石に栽培するもので、もっと鋭くもっと細く、高さ45寸で、若い葉はニラのようなものは、これも石菖蒲である。(5)また根は長さ23分、葉は長さ1寸ばかり、机の上に置いて観賞に供するものは、錢蒲である。食用・薬用にするには石蒲が上等で、ほかのものは無理だ」という。
 日本では、古典にあやめぐさとあるのは、アヤメではなく、ショウブ。
 『万葉集』に、

   ・・・ 霍公鳥
(ほととぎす) 鳴く五月に
   菖蒲
(あやめぐさ) 花橘を 玉に貫き (かづら)にせむと・・・
         
(3/423,山前王)
   ・・・ 菖蒲 花橘を をとめらが 珠貫くまでに ・・・
         
(19/4166,大伴家持。霍公鳥と時の花を詠む歌)
   ・・・ 菖蒲 花橘を 貫き交へ かづらくまでに ・・・
         
(19/4180,大伴家持)
   ・・・ ほととぎす きな
(来鳴)く五月の あやめぐさ よもぎかづら(蘰)き ・・・
         
(18/4116,大伴家持)
   ・・・うの花の さく月たてば めづらしく 鳴くほととぎす
   あやめぐさ 珠ぬくまでに ひる
(昼)(暮)らし
   よ
(夜)わた(渡)しき(聞)けど ・・・ (18/4089,大伴家持)
   ・・・ 菖蒲 玉貫くまでに ・・・  (19/4177,大伴家持)

   ・・・ほととぎす きなく五月の あやめぐさ はなたちばな
(花橘)
   ぬ
(貫)きまじ(交)へ かづらにせむと つつ(包)みてや(遣)らむ
     反歌
   白玉を つつみてやらば あやめぐさ はなたちばなに あ
(合)へもぬ(貫)くがね
         
(18/4101;4102, 大伴家持)

   霍公鳥 待てど来喧
(な)かず 菖蒲草 玉に貫(ぬ)く日を 未だ遠みか (8/1490,大伴家持)
   霍公鳥 厭ふ時無し 菖蒲
(あやめぐさ) 蘰にせむ日 此(こ)ゆ鳴き渡れ
      
(10/1955,読人知らず; 18/4035,田辺史福麿)
   霍公鳥 今来喧きそむ 菖蒲 かづらくまでに かるる日あらめや
(19/4175,大伴家持)
 
 『古今集』に、

   ほととぎす
 なくやさ月の あやめぐさ あやめもしらぬ こひもする哉
     
(読人しらず)
 
 清少納言『枕草子』にも、端午の節句にショウブやヨモギを葺きわたし、もって薬玉を作り、また身に佩いたりしたことが記されている。
 このように、中国において菖蒲を辟邪の呪物とする習慣は、日本にも伝えられたが、日本では菖蒲をショウブと理解したことから、セキショウではなくショウブを用いて今日に至る。また菖蒲湯も、中国では蘭湯
(蘭はフジバカマ)を用いたものを、日本でショウブに替えたもの。近世の武家社会では、菖蒲(しょうぶ)の音が尚武(しょうぶ)・勝負などに通ずるとして、端午の節句は男の子の祭りとなり、菖蒲冑や五月人形を飾るに至った。
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   空はれて ぬまのみかさ
(水嵩)を おとさずば あやめもふ(葺)かぬ さ月なるべし
   櫻ちる やどをかざれる あやめをば はなさうぶとや いふべかるらん
     
(高野の中院と申所に、あやめ葺きたる房の侍けるに
      
櫻のちりけるがめづらしくおぼえて、よみける)
   ちるはなを けふのあやめの ね
(根)にかけて
     くすだま
(薬玉)ともや いふべかるらん (坊なる稚児これをききて)
   をり
(折)にあひて 人にわが身や ひかれまし
     つくま
(築摩)の沼の あやめなりせば
   にし
(西)にのみ こころぞかゝる あやめぐさ このよばかりの やどと思へば
     
(五月五日山寺へ人のけふいる物なればとて、しやうぶをつかはしたりける返事に)
   みな人の こころのうきは あやめ草 にしに思ひの ひかぬなりけり
(同)
   よのうきに ひかるる人は あやめぐさ 心のね
(根)なき 心ちこそすれ
     
(五日菖蒲を人のつかはしたりける返事に)

 『新古今集』に、

   あやめ草誰しのべとかうゑ置きて蓬がもとの露と消えけん
(高陽院木綿四手)
       (「をさなきこのうせたりけるが、うゑおきたりける菖蒲をみてよみ侍りける」)

   沼ごとに袖ぞぬれぬるあやめ草心ににたる根をもとめむとして
(三条院女蔵人左近)
     
(「くすだまを女につかはすとて、をとこにかはりて」)
 

   ほととぎす啼
(なく)や五尺の菖草(あやめぐさ) (芭蕉,1644-1694)
   屋ね葺と並んでふける菖蒲かな 
(其角,『猿蓑』1691)
 
 今日端午の節句の折の菖蒲湯用に巷で売られている「菖蒲」なるものは、ショウブでもセキショウでもなく、真赤な偽物であるらしい(そういえば、ちっとも香りがしない)


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