辨 |
アヤメ I. sanguinea(溪蓀 xīsūn)には、次のような種内分類群がある。
アヤメ var. sanguinea
シロアヤメ f. albiflora(白花溪蓀)
シロバナクルマアヤメ f. albostellata
ウスイロアヤメ f. pallidiflora
クルマアヤメ f. stellata
トバタアヤメ var. tobataensis
カマヤマショウブ var. violacea(I.thunbergii)
var. yixingensis(宜興溪蓀)
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アヤメ属 Iris(鳶尾 yuānwěi 屬)の植物については、アヤメ属を見よ。 |
訓 |
和名アヤメは文目の意、葉が並んだようすから、という。しかし、あやめの語源には他にも多説があり、定まらない。
(ただし、むかし「あやめ」と呼んだものはショウブであるから、「あやめ」の語源はショウブに関わる。) |
日本語のあやめという言葉の歴史は、ややこしい。
1.〔(漢字)菖蒲=(音)あやめ=(意味)ショウブ〕
むかし「あやめ」という言葉は ショウブ Acorus calamus を意味していた。
『万葉集』『本草和名』『倭名類聚抄』などでは、これを菖蒲・昌蒲と書き、
「あやめ」「あやめくさ」と読んでいた。
2. 室町時代には、はなしょうぶ・花あやめという言葉が用いられ始めたが、
これはノハナショウブ或はハナショウブであったろうという。
3.〔(漢字)菖蒲=(音)しょうぶ=(意味)ショウブ〕
〔(漢字)花菖蒲=(音)はなしょうぶ=(意味)アヤメ〕
江戸時代になると「あやめ」という言葉は使われなくなり、
ショウブは「菖蒲(しょうぶ)」と、
アヤメは「花菖蒲(はなしょうぶ)」と呼び分けられた。
一方、江戸時代には、ハナショウブが、盛んに栽培されるようになった。
4.〔(漢字)菖蒲=(音)しょうぶ=(意味)ショウブ〕
〔(読み)あやめ=(意味)アヤメ〕
18世紀に入ると、一般にアヤメ属の植物を「あやめ」と通称するようになった。
今日では、植物学上のアヤメを「あやめ」と言うのが原則だが、ゆれがあり、たとえば有名な潮来(いたこ)の「あやめ」はハナショウブである。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・モンゴリア・極東ロシア・シベリアに分布。 |
一般的な通念とは異なって、水はけのよい向陽地を好み、乾燥にも強い。 |
埼玉では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。 |
誌 |
中国では、根茎・根を薬用にする。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、「紫あやめ・白あやめ・柿あやめ」が載る。
『大和本草』に、「紫羅襴花(ハナアヤメ) 今ハ只アヤメト云・・・古歌ニアヤメトヨメルハ菖蒲ナリ、是ニハ非ス、一説溪蓀ヲハナアヤメトス、今ハナアヤメト云物別ニ數品アリ、此類ナリ、花しやうぶ、バリンモ此類也」と。 |