辨 |
基本種名 Iris ensata は、その園芸品種の一つ(ハナショウブ)に対して先につけられたもので、野生品ノハナショウブをその変種 var. spontanea(「野生の」)として扱う。 |
カキツバタと近縁で、花の色・形がよく似ている。ただし、花期が異なり(ノハナショウブは6-7月、カキツバタは4-5月)、外花被片の基部の紋様が黄色(カキツバタのそれは白色)。 |
中国では、かつて多くの研究者が Iris ensata を馬藺(バリン,mălìn)とし、I. kaempferi を玉蟬花としてきたが、今日では
I.ensata は玉蟬花、I.lactea は馬藺、I. kaempferi は I.ensata のシノニムと改められている。
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アヤメ属 Iris(鳶尾 yuānwěi 屬)の植物については、アヤメ属を見よ。 |
訓 |
ショウブとアヤメの呼称の問題については、アヤメの訓を見よ。 |
『大和本草』に、「花菖蒲(ハナシヤウブ)」と。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・浙江・山東・遼寧・吉林・黑龍江・極東ロシア・シベリア東部に分布。山野の明るい湿原などに自生する。
埼玉では絶滅危惧Ⅱ類(VU)。 |
誌 |
はなしょうぶ(花菖蒲)という言葉は、平安末にはあったらしい。西行(1118-1190)『山家集』に、
櫻ちる やどをかざれる あやめをば はなさうぶとや いふべかるらん
(「高野の中院と申所に、あやめ葺きたる房の侍けるに
櫻のちりけるがめづらしくおぼえて、よみける」)
ただし、ここに「あやめ」とはショウブを指す。菖蒲は、「さうぶ」と読んだ。 |