かや (萱・茅) 


 屋根を葺くのに用いる草の総称。
 イネ科のススキヨシチガヤカルカヤ、カヤツリグサ科のスゲなどをいう。
 かやに対応する漢語は菅(カン,jiān)。中国でむかし屋根・垣根などを作る素材としたイネ科の草の総称で、ススキ Miscanthus sinensis やその近縁種、メガルカヤ Themeda triandra var. japonica やその近縁種を指す。
 言葉の意味からすれば、漢語の菅は 日本語におけるかや(茅・萱)に当る(小野蘭山『本草綱目啓蒙』9 白茅条)が、そこに含まれる植物の範囲は、日中でやや異なるようである。スゲを見よ、またススキを見よ。
 『倭名類聚抄』萱に、「和名加夜」と。
 ただし、漢語の萱(ケン,xuān)は、カンゾウ(萱草)を指す語であり、カヤの意味で萱の字を用いるのは日本のみ。

 『日本国語大辞典 第二版』「かや【茅・萱】」の語誌にこうある、〔「萱」は本来、ユリ科の植物カンゾウ、一名ワスレグサで、「かや」の意に用いるのは誤り。「倭名抄」「名義抄」などに「かや」とよむ文字は「萓」。字形が似ているところから、後世誤ったもの。〕と。
 この後半の部分、「かや」は正しくは萱(ケン,xuān)ではなく萓(ギ,yí)なのだと読まれる恐れを感ずるので一言。
 『玉篇』に「萓、萓莮草」とあり、萓は宜男草(ギダンソウ,yínáncăo)、則ち萱草(ホンカンゾウ)である(『漢字大辭典』『諸橋大漢和辭典』)。萱(ケン,xuān)と萓(ギ,yí)の二字は、成り立ちと音は異なるが、義はどちらもカンゾウである。

 漢語の茅(ボウ,máo)は、穂を抜くイネ科の草の総称、屋根を葺くのに用いる含意がある。カヤと訓読するのにふさわしい。
   
 『日本書紀』巻1神代上 第7段「天石窟(あまのいわや)」に、「茅纏(ちまき)の矟(ほこ)」とあるものは、茅を巻いた矛。
 『日本書紀』巻15顕宗天皇即位前紀に、5世紀末ごろの、新築の茅葺の家の室寿(むろほぎ)の歌が載る。
 『万葉集』に歌われるかやについては、ススキの項及び文藝譜を見よ。
 西行(1118-1190)『山家集』に、

   あづまやの をがや
(小萱)がのき(軒)の いとみづ(糸水)
      たま
(玉)ぬきかくる さみだれのころ
 

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