辨 |
ヘクソカズラ属 Paederia(鷄屎藤 jīshĭténg 屬)には、世界の熱帯・亜熱帯に約30種がある。
ヘクソカズラ(ヤイトバナ) P. foetida(P.scandens, P.scandens var.maritima;
鷄屎藤・鷄矢藤)
var. tomentosa(P.tomentosa;毛鷄屎藤) 江西・兩廣・雲南産 『中国本草図録』Ⅳ/1863
P. pertomentosa(白毛鷄屎藤・廣西鷄屎藤) 江西・福建・湖南・兩廣産
『中国本草図録』Ⅹ/4865 『(修訂) 中葯志』IV/427-432
P. yunnanensis(雲南鷄藤・毛葉黃藥・狗屁藤・臭屁藤) 廣西・雲貴産 『(修訂) 中葯志』IV/427-432
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アカネ科 Rubiaceae(茜草 qiàncăo 科)については、アカネ科を見よ。 |
訓 |
和名は、植物体に悪臭を持つことから。
灸花の名は、花を人の体につけると、お灸のもぐさに似ていることから(または花の中央がお灸の跡に似ていることから)。 |
『本草和名』女青に、「和名加波祢久佐」と。
『倭名類聚抄』に、女青は「和名加波禰久佐」、細子草は「和名久曽加豆良」と。
『大和本草』に、「百部(キジカクシ) ・・・世俗百部ヲヘクソカツラト訓ス、大ニアヤマレリ、ヘクソカツラハ女靑ト云」と、また「女靑 ・・・今按蔓草の女靑ハ俗名ヘクソカツラト云」と。なお、百部はビャクブであり、キジカクシではない。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』女青の条に、「クソカヅラ万葉集 細子草和名鈔 カバネグサ同上 ヘウソカヅラ ヲドリコサウ雲州 ヤイトバナ江州 ヲドリヅル阿州 ヲドリバナ土州 ヘクサンボウカヅラ同上 クサバナ加州 ニガイモ同上 タウヘバナ播州 アマクサヅル同上 ソウトメカヅラ東国 ソウトメバナ同上」、花は「白色ニシテ中心紫色、灸痂(ヤイトノフタ)ノ脱タルアトノ色ノ如シ、故ニヤイトバナノ俗名アリ」、「此実ヲ俗ニスゞメノタゴト呼」と。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・臺灣・華東・山東湖南・両広・西南・東南アジア・ヒマラヤに分布、変異が多い。 |
誌 |
中国では、根・全草を薬用にする。『全國中草藥匯編 上』pp.425-426 『(修訂) 中葯志』IV/427-432
福建の一部地域では、茎を靑風藤(セイフウトウ,qīngfēngténg)と呼び、薬用にする。『全國中草藥匯編 上』p.479 |
『万葉集』に、
■{草冠に皂}莢に 延(は)ひおぼとれる 屎葛(くそかづら)
絶ゆる事無くみやづかへせむ (16/3855,高宮王)
くそかづらは、ヘクソカズラ。■{草冠に皂}・皂莢(ソウキョウ,zàojiá)については、サイカチを見よ。 |
『花壇地錦抄』(1695)巻三「藤並桂のるひ」に、「百部桂(へくそかづら) 葉ニあしき香也。白紫成小りんの花さく。そうとめかつら共云」と。ここの桂は蔓の当字。百部はビャクブ、ヘクソカズラとは関係ない。 |