つづらふじ (葛藤) 

学名  Sinomenium acutum (Menispermum acutum, Cocculus acutum, Sinomenium diversifolium)
日本名  ツヅラフジ
科名(日本名)  ツヅラフジ科
  日本語別名  オオツヅラフジ、ツタノハカズラ、アオカヅラ・アオツヅラ、ツヅラカヅラ、ツルフジバカマ、トヅラ
漢名  風龍(フウリョウ, fēnglóng)、防己(ボウキ,fángjĭ)
科名(漢名)  防己(ボウキ,fángjĭ)科
  漢語別名  靑藤(セイトウ,qīngténg)・靑風藤(セイフウトウ,qīngfēngténg)・淸風藤、大葉靑蠅兒、土藤(ドトウ,tŭténg)、大楓藤
英名  Chinese moonseed

2007/04/06 薬用植物園 2007/04/19 同左 2007/05/03 同左
2007/05/26 同上 2007/06/20 同左
雌株  2007/07/21 同上

雌花  2008/07/21 薬用植物園
2006/08/12 薬用植物園
2007/10/08 同上
2006/12/14 同上
2007/12/25 同上
 ツヅラフジ科 Menispermaceae(防己 fángjĭ 科)の植物には、世界の熱帯・亜熱帯を中心に約71属 約450種がある。

  Albertisia(崖藤屬)
 アジア・アフリカの熱帯を中心に約20種 
     A. laurifolia(崖藤)

  Anamirta(醉魚藤屬)
1属1種
     A. cocculus
インド乃至ニューギニア産

  Arcangelisia(古山龍屬)
海南島・インドシナ・インドネシアに3種 
     A. gusanlung(A.loureiri;古山龍・黃藤・黃連藤)
廣東・雲南産
         『全國中草藥匯編 上』p.235 『(修訂) 中葯志』V/571-575

  Cissampelos(錫生藤屬)
 世界の熱帯に約22種、多くは薬用
     C. pareira(雅紅隆・亞乎奴・鼠耳草・老鼠耳朶草)
         
廣西・貴州・雲南産 『(修訂) 中葯志』IV/332-337
       var. hirsuta(錫生藤・亞乎奴)
 『中国本草図録』Ⅷ/3580

  アオツヅラフジ属 Cocculus(木防己屬)

  ミヤコジマツヅラフジ属 Cyclea(輪環藤屬)
南~東アジアに約30種
     C. barbata(毛葉輪環藤)
廣東・ヒマラヤ・インドシナ・インドネシア産
         『全國中草藥匯編 上』p.195
     C. hypoglauca(粉葉輪環藤・金綫風)
 『全国中草葯匯編』上/534
         
 『中国本草図録』Ⅳ/1636 江西・福建・兩廣・湖南・雲南・ベトナム産 
     C. insularis(Paracyclea insularis)
       ミヤコジマツヅラフジ subsp. insularis(海島輪環藤・土防己)
         
本州(近畿以西)・四国・九州・琉球・臺灣に産
       subsp. guangxiensis(黔桂輪環藤)
廣西・貴州産
     フサザキツヅラフジ C. ochiaiana(Paracyclea ochiaiana,
         Cissampelos ochiaiana;臺灣蝙蝠藤)
 臺灣産
     C. peltata(盾形輪環藤) インド・インドシナ産 『全國中草藥匯編 上』p.195
     C. racemosa(輪環藤 lúnhuánténg・良藤)
         
 陝西・浙江・両湖・廣東・貴州・四川産 『中国本草図録』Ⅵ/2606 『全国中草葯匯編』下/284-285
       var. omeiensis(峨眉輪環藤) 四川産 『中国本草図録』Ⅹ/4592

  Diploclisia(秤鈎風屬)
 熱帯アジアに2種 
     D. affinis(D.chinensis;秤鈎風)
         
華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南産 『全國中草藥匯編 上』p.479 『(修訂) 中葯志』V/647
     D. glaucescens(蒼白秤鈎風・秤鈎風)
 兩廣・雲南・熱帯アジア産 『中国本草図録』Ⅳ/1637

  Fibraurea(天仙藤屬)
漢土南部・東南アジアに3-5種
     F. recisa(天仙藤・黃藤)
兩廣・雲南・インドシナ産 『(修訂) 中葯志』V/728-732
     F. tinctoria(假黃藤・黃藤連)
兩廣産 『全国中草葯匯編』上/931-932

  Hypserpa(夜花藤屬)
漢土・東南アジア・濠洲に約10種 
     H. nitida(夜花藤)
福建・兩廣・雲南・インドシナ・マレシア・スリランカ産

  Jateorhiza(藥根藤屬)
熱帯アフリカに2種
     J. palmata(J.miersii, J.columba)
         
生薬コロンボは本種の根を横切りしたもの(第十八改正日本薬局方)

  コウモリカズラ属 Menispermum(蝙蝠葛屬)

  Pachygone(粉綠藤屬)
熱帯アジア・大洋州に約11-12種 
     P. sinica(粉綠藤)
兩廣産
     P. valida(腎子藤)
廣西・雲貴産

  Parabaena(連蕊藤屬)
漢土・東南アジアに約6種 
     P. sagitata(連蕊藤・滑板菜) 『中国本草図録』Ⅷ/3581

  ホウライツヅラフジ属 Pericampylus(細圓藤屬)
熱帯・亜熱帯アジアに4-6種 
     ホウライツヅラフジ P. glaucus(P.formosanus,Menispermum glaucus;
         細圓藤・臺灣靑藤・小廣藤・土藤・黑風散・蓬萊藤・猪菜藤)
         
臺灣・兩廣・雲南・東南アジア産 『中国本草図録』Ⅴ/2100
         
日本では絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
     ミスジツヅラフジ P. trinervatus(三脈靑藤)
 臺灣産

  Pycnarrhena(密花藤屬)
インド・東南アジア・オーストラリア北東部に約10種 
     P. lucida(密花藤)
     P. poilanei(硬骨藤)

  ツヅラフジ属 Sinomenium(風龍屬)
 1属1種

  ハスノハカズラ属 Stephania(千金藤屬)

  Tinomiscium(大葉藤屬)
漢土・東南アジアに1-7種 
     T. petiolare(T.tonkinense;大葉藤・奶汁藤・假黃藤)
廣西・雲南・ベトナム産
         
『全国中草葯匯編』上/932

  ヤマイモツヅラフジ属 Tinospora(靑牛膽屬)
         
アフリカ・アジア・オーストラリアの熱帯・亜熱帯に約34種 
     ヤマイモツヅラフジ T. dentata(臺灣靑牛膽)
     キンクオラン T. sagittata(T.capillipes;
         金果欖・靑牛膽・靑魚膽・金古欖・地膽・金牛膽)
         
『全國中草藥匯編』上/118,535-536, 『中国本草図録』Ⅱ/0567,『中薬志Ⅰ』pp.287-290
     T. sinensis(中華靑牛膽・伸筋藤・寛筋藤) 『中国本草図録』Ⅷ/3582 
         
『全国中草葯匯編』上/652 
    
 ツヅラフジ属 Sinomenium(風龍 fēnglóng 屬)は、1属1種。

  ツヅラフジ
(オオツヅラフジ) S. acutum(風龍・防己・靑藤・靑風藤・大葉靑蠅兒・土藤)
    ケオオツヅラフジ var. cinereum(毛靑藤) 
   
 「和名つづらふぢノつづらハつる卽チ蔓ノ意ニテかづらト相同ジ、あをかづらハ其蔓生時綠色(乾ケバ黑色ト成ル)ナルヲ以テ云フ、此蔓ニテ編ミシ籠ヲつづら卽チ葛籠ト云フ是レつづらこヲ略シテ呼ビシモノナリ、元來本種ハつづら一名つづらふぢナレバ殊更ニ之レヲおほつづらふぢト云フ必要ナシ、又つたの葉葛ハ其葉つたニ似タレバ云フ」(『牧野日本植物圖鑑』)。
 歴史的漢名は防己(ボウキ,fángjĭ)だが、日本の漢方では これを防已(ボウイ,fángyĭ)とするので、紛らわしい。
   
〔己(キ・コ,jĭ)・已(イ,yĭ)・巳(シ,sì)の三字は、形は似ているが 別字。このページの最下欄をご覧下さい。〕

 日本薬局方の解説書には、「中国及び日本の古典には防己、防已、防巳の文字を用いているものがあり、いずれが正しいか問題がある。しかし、日本の江戸時代の本草家は字義により防已
(ぼうい)とする」とある。
 しかしながら、古版本・写本は別として、中国の今日の文献や 漢和・中日などの辞典類は、みな防己(ボウキ,fángjĭ)とするので、ここではそれに従う。
 『本草和名』防已に「和名阿乎迦都良」と。『倭名類聚抄』防已に「和名阿乎加都良」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』防己の条に、「一種オホツゞラフヂト呼アリ、一名ツカノハカヅラ フソナ
加州 メクラブドウ津軽」と。
 本州(福島新潟以西)・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・華東・兩湖・兩廣(北部)・貴州・四川・雲南(東南部)・陝西(南部)・河南に分布。 埼玉県では絶滅危惧ⅠA類(CR)。
 雌雄異株。
 茎・根を薬用にする。また蔓を細工ものに用いる。
 中国では、茎を靑風藤(セイフウトウ,qīngfēngténg)と呼び、薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.508-511 『全國中草藥匯編 上』pp.478-479 『(修訂) 中葯志』V/641-648 また地方により、根を防己として薬用にする。
 日本では、生薬ボウイ(防已)は オオツヅラフジのつる性の茎及び根茎を、通例、横切したものである(第十八改正日本薬局方)。 
 中国では、防己(ボウキ,fángjĭ)は、古来 漢防己木防己に大別する。その別は、

 『中薬志Ⅰ』pp.246-255によれば、防己として市場に流通しているものは 次の三の乾燥した根である
(上二が主)
   粉防己
(漢防己・土防己) シマハスノハカズラ Stephania tetrandra(山烏龜・石蟾蜍)
   廣防己
(木防己・水防己) Aristolochia westlandii(百解馬兜鈴・藤防己・防己)
   漢中防己(土防己) Aristolochia heterophylla(異葉馬兜鈴・異形馬兜鈴・靑木香)

 『全國中草藥匯編 上』pp.23,173,657-658 によれば、
   粉防己
(漢防己・土防己)は、シマハスノハカズラ Stephania tetrandra(粉防己)の根
   木防己は、アオツヅラフジ Cocculus orbiculatus(C.trilobus;木防己)の根
   廣防己は、Aristolochia fangchi(廣防己・藤防己)の根
     
 『万葉集』に、

   駿河のうみ
(海)おしへ(磯辺)にお(生)ふるはま(浜)つづら
     いまし
(汝)をたのみはは(母)にたが(違)ひぬ (14/3359,読人知らず)
   かみつけの
(上毛野)安蘇やま(山)つづら野をひろ(広)
     は
(延)ひにしものをあぜ(何)かた(絶)えせむ (14/3434,読人知らず)

とあるつづらは、一説にツヅラフジとする。はまつづらとあるのは、海辺に生えるハスノハカズラかとも云う。

  山がつの かきほにはへる あをつゞら 人はくれども 事づてもなし
 (源寵、『古今和歌集』)
 
己・已・巳の三字の、字形を拡大しました。
 (キ・コ, jĭ, おのれ・つちのと)
 (イ, yĭ, やむ・すでに)
 (シ, sì, み)

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